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アーロン  作者: ラー
六章

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四話

奥に向かってアーロン達は全速力、エンリータに合わせてはいるが可能な限り急いで廃炭坑を駆け抜けていく。道中、魔物が徘徊してはいたが駆け抜けざまにアーロンが切り捨てていく。しかし、魔物の量は明らかに少なく、出会った魔物たちもどちらかと言えば一番奥に向かう道に居るのではなく、よその道から出て来た、という印象を抱く。やはり、先行していた組が道中の魔物を狩っていったようだった。今いるのは恐らく音に釣られたかたまたま出て来たと言った所だろうか。

(音が無くなって来た、戦闘の終わりが近いか)

それなりに降りてきたが未だに音の発生場所に辿りつかない。この様子では最奥にある採掘場で事が起きているのだろう。間に合わないという事はないだろうが最後の局面にしか関われそうにはない。

「エンリータ!まだ行けるか?」

後ろで着いて来ているエンリータに声をかける。聞こえてくる音的には息の乱れは感じられない。

「まだ行けるよ!」

アーロンが予想した通りに威勢のいい返事が返って来た。今でもそれなりの速度の為、これ以上速度を上げると現場で戦闘が有った際に少しばかり息が上がった状態で始まるかもしれないがそこはアーロンがカバーすれば大丈夫だろう。

そのままアーロン達は更に速度を上げながら最下層を目指す。近づくたびに戦闘音らしきものはどんどん間隔が空き、振動や音も小さくなっていく。目と鼻の先に来る頃にはこれといった音もしなくなり、喋っているような声が聞こえる。そしてアーロン達はようやく最奥の採掘場へと足を踏み入れた。


「諦めはついたか?」

ガン、地面に槍の石突が突き立てられる。それと同時に槍の持ち主が目の前で膝をついて息を荒げる薄茶色のローブを着た男に問いかける。ローブの男は傍目にもボロボロで外れたフードからは長い耳と浅黒い肌が見える。ダークエルフ、闇に墜ちたエルフの総称で基本的には強い負の感情によってエルフから変異する。種族が変わるほどの負の感情を抱えている為に公的には魔物と同じような扱われ方をされ、普通ならば話が通じるような状態では無い。

「ハハハ、流石は英雄様、逃走はおろか時間稼ぎも難しいとは・・・」

しかし今、此処にいるダークエルフの男は違うようで目の前に立つ男、エーベルトの言葉にしっかりと返事をした。

アーロンは一瞬、目を見開くが頭は冴えわたっており、直ぐに周囲に目をやりながら状況の把握に努める。

まず、通路から入って来たアーロン達の正面、ドーム状の空間の中央付近に無傷のエーベルトが槍を右手に仁王立ちしている。その前、アーロン達からすれば空間の最奥に今にも倒れてしまいそうなダークエルフの男がいる。そして左手、そこには懐かしい顔と初めて見る顔の集団がいる。

(あれはマリアベルとアリウスか?後の2人は初めて見るがパーティか)

真っ赤な夕日を溶かし込んだ様な髪を靡かせた少女、マリアベルとどこか少年らしさを残した顔つきのアリウス、嘗ては生気の無い目をしていたが今はマリアベルの横に立ちながら油断のない視線をダークエルフの男に目を向けている。

「アーロンか、久しいな。だが今はそこで待っているがいい」

此方に視線を向けることなく背中を向けたままエーベルトが話しかけてくる。そう言われてしまえば流石にアーロンも好きに動く訳にはいかない。おまけに状況も未だに良く分からないだけに下手をうつような真似は出来なかった。そしてエーベルトが話しかけたことでマリアベルたちもこちらに視線を向け、顔見知りの2人は驚きに目を見開いた。そうして生まれた一瞬の隙をダークエルフの男は見逃さなかった。

「ハハ、どうやら命運はまだ俺の味方らしい!」

その瞬間、今にも倒れてしまいそうだったダークエルフの男から一気にどす黒い魔力が膨れ上がる。その圧、とでもいうべきだろうか、それとも本能的に湧き上がる忌避感だろうか、兎に角危険だという事が直接脳に書きこまれるような感覚がするほどだ。

嗤いながら放たれた黒い球とそれを覆うような黒い靄が凄まじい速度でマリアベルたちの方へと放たれる。それなりに距離もあり、本来なら避けることは難しくなかっただろう攻撃は一瞬、集中の切れた彼女たちにとっては回避が不可能な一撃に変わってしまった。それはアーロン達にとっても同じで距離がある為にいくら全力で走っても間に合わない。ただ放たれた攻撃と何とかマリアベルを守ろうとするアリウス達の姿を眺める事しか出来ない。が、ここには1人だけ反応し、動ける者がいた。エーベルト、大陸の英雄は当初、身を守っていたが狙いがマリアベルたちだと分かるとすぐさま駆け出し、進行方向に立ちはだかると持っていた破壊神の神器、災禍の槍でダークエルフの放った攻撃を打ち払った。

その光景を見たアーロンは流石エーベルトだと息を吐く。自分たちが悪い訳でないが間違いなく起点になったのは自分たちであっただけに、これで彼女たちに何かあったら少しだけ気まずかっただろう。そうアーロンが思った瞬間だった。

「ムッ」

エーベルトと接触した黒い球は槍と接触したと同時に広がりエーベルト本人を包み込もうと纏わりつく。その速度は速く、一度払おうとしたエーベルトを一切無視して呑み込んでいく。そして遂にはエーベルトを中心に黒い繭のような形を形成した後に紫電を奔らせながら廃炭坑から消えて行ってしまった。


「は!?」

唖然、あのエーベルトが、大陸の英雄が一切の痕跡を残してこの場から消えてしまった。確かに不穏な空気は有ったがエーベルトであればなんの問題も無く出て来るものだと勝手に思っていただけに普段なら出しもしない声が出てしまう。しかしアーロンのその反応を咎める人物は1人も居ない。周囲の人間、全てがアーロンと同じような反応をしていたのだから咎めようも無かった。

「ハハハハハハハ!!まさかこんな簡単にあのエーベルトを排除できるなんて!」

狂気的な笑いが空間に木霊する。そしてその声に唖然としていたアーロン達の意識と視線が吸い寄せられる。そこには全身がボロボロであるのを感じさせない程に活力に満ち溢れた挙動と声をあげていた。

「ハハハハハハハ、あぁ、ありがとう、君たちには礼を言わなくちゃね。お蔭で俺は今日を生きられる」

ひとしきり笑った後、冷静さを取り戻したダークエルフの男は冷酷そうな、生気のない顔を浮かべながらマリアベルたちの方を見て礼を口にする。

「本来なら俺みたいな奴には到底不可能な盤面だった。やはり日頃の行いは大事だね」

(いかん、意識が飛んでいた、奴をこれ以上好きにさせるわけには!)

アーロンは意識の空白と衝撃の事実を一旦頭の隅に強引に置く。そして背のグレートソードを引きぬくとダークエルフの男に近づくために足に力を込め、魔力を回す。

「おおっと、動かないでおくれ。君の事は良く知っているんだアーロン。流石に今の状態で君のような存在を相手にはしたくない」

ダークエルフの男は右手をマリアベルたちの方に向けながらこちらに止まれ、とでも言いたげに掌を立てる。

「お詫び、と言う訳ではないけどホラ、この破壊神の神器、『虚空の弓矢』をあげるよ」

そう言って差し出されたのは禍々しい、既に何度も感じた事のある雰囲気を纏った弓矢が握られている。

「ま、お礼の品ってところかな、それじゃあまた絶望の未来で会おう」

そう言うとダークエルフの男は闇の者特有の黒煙に身を包んでアーロン達の前から消えてしまった。そうして廃炭坑には険しい顔をしたアーロンと未だ呆然としたマリアベルとその仲間だけが残された。



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