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アーロン  作者: ラー
五章 下

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十六話

アーロンはまず、体全体に魔力を回してどんどん加速していく。エルムに言われた事を守るのであれば遠距離はあまり好ましくない。それは魔術の類も当然同じだ。であれば距離を取る意味はほぼなく、兎に角アーロンは相手の懐に入らなければならない。とはいえ、近距離で戦うのはもとよりアーロンの最も慣れ親しんだ戦闘スタイル、中遠距離の攻撃が無くなった程度でアーロンの力に陰りなど見られるはずもない。むしろ暦で言えばグレートソードとファルシオンだけで戦っていた時間の方が長い。それゆえ、気にしなければならないのはアーロンの踏み込みに攻撃時や外した時の余波などで部屋を壊してしまわぬようにすることだけとも言えた。

部屋の真っただ中を駆けていくアーロンに対して敵が取った初動は当然迎撃、それも此処に来るまでに幾度も見た光線と同種の攻撃が飛んで来る。が、違うのはその威力と規模、そして頻度だ。

「フン!」

アーロンは正面から来た光線に魔力を纏わせたグレートソードで弾くようにして下からかち上げる。光線は先までは細い線のような見た目をしていたはずだが番人が撃つのはそれこそ酒樽ほどの大きさを誇る。おまけにそれが全部の指から際限なく打ち出されるうえ、大きな1つ目は明らかに大きな光を湛えている。多少時間が掛かるのか今も尚、周りから光を集めているような挙動と比例する様に輝きが増している。

(あれを放たれるのは不味いか)

避けようと思えば避けられるだろうが後ろにはエンリータがいる。おまけに相手によって何かが壊れることがあっても困るのはアーロン達だ。今大量に打ち出されている光線は辛うじて地面を抉り、焦がす程度で済んでいるがその比にならない程に大きい物は幾度も受けて良い物ではないだろう。勿論、今撃たれている通常の光線も撃たれ続ければ部屋が壊れかねない。

アーロンは更に速度を上げる。雨のように放たれているせいで隙間など無いに等しいがそこは自身の相棒でこじ開けていく。そして後数歩、という距離まで近づいた瞬間、一気に光線を放ったかと思えば敵はその巨腕で机を叩くように上から振り下ろす。するとどういう原理なのかはさっぱりではあるが地面が揺れると共に地面を爆ぜさせながら衝撃波が津波のようにしてアーロンに迫る。

(魔力?いや、また別のか?)

一瞬、通常では起こりえない現象に魔力による魔法を疑ったがそれとは別の力を感じる。やはり此処にいる敵は魔力では無いナニカを力として扱っている節がある。

(なら一度引くか)

突破を試みても問題ないかも知れないが初見の物に無策で突っ込む気にはならない。アーロンは一度グレートソードを左肩に乗せるように後ろへと流すと刃では無く腹の部分で扇のようにグレートソードを横薙ぎにする。

アーロンが武器を振った後にはその軌跡に沿うようにして薄い風の壁のような形状をした魔力が発生し、向かってくる衝撃波とぶつかる。その隙にアーロン自身は武器を振った勢いを使いながら踏ん張った足で後方へ海老のようにして飛び去っていく。

ぶつかった衝撃波はアーロンが発生させた魔力の壁とぶつかったことでその勢いを減衰させたものの侵攻が止まることはなく、結局部屋の中央程までを畑を耕すようにして、ようやく止まった。

(ただ真っ直ぐ押し寄せる、と言う訳ではないのか)

アーロンは衝撃波で付けられた傷を見ながらどういったものか思考を回す。傍目には迫る敵を押し流すように放たれたようにも見えたが床を見ると明らかに上下からも何かしらの衝撃が発生している。むしろ床が割れたのは下から衝撃が発生していたからではないかと思うほどだ。

(だとすれば見た目よりも嵐みたいに無秩序な力の流が在りそうだな)

そうアーロンが仮定を付けた瞬間だった。遂に敵の瞳が限界を迎えたかのように光り輝きはじめ、溜められた光が線となって放たれる。放たれた光線は広い部屋の3分の1を占める程に太く、密度がハッキリと分かるほどに濃い。変わらないのは速度位で明らかに必殺と誇れるほどの威力を持っていた。おまけにこれが野外ならともかく、室内な事もあってその凶悪さは増している。当然、指から放たれる光線も止むことはない。

(これほどか!これを制限の中、何度も捌くのは難しいな)

全力さえ出せれば、と歯噛みするが出せない物に縋っても意味はない。アーロンは自身を守る様な殻を生成するとともにグレートソードを頭の上に持ってくる。後ろには流せない、であれば後は多少の被弾は無視して断ち切り、その上で電撃戦を仕掛けるという作戦をアーロンは組み立てた。

「ハアアアアアア!!!」

裂帛と共に振り下ろされる魔力を伴った刃はまず鍔迫り合いのように光線と拮抗する。当然その外側からは曲線を描きながら別の光線が向かってくるがそちらには目もくれず、事前に発生させた殻を頼る。

(チッ、思ったよりも重いか。だがこの程度なら)

手に響く熱と威力に悪態を付きながらアーロンはグレートソードへ魔力を更に回して光線を押し切る。するとアーロンを軸に光線は2つに分かたれて後方へと流れていく。そして狙ったわけでは無いがこのお蔭で左右から迫っていた細かい光線はアーロンに辿りつく前にかき消されていく。

それから暫くの間ぶつかり合った両者だがアーロンは最後までしっかりと耐え抜き、光線が先にエネルギー切れでぶつりと切れてしまう。幸いにも分かたれた光線は入り口の両端を大きく融解させただけに留まる。敵は表情のような物は無いので分からないがそれでもどこか意外な結果を見たかのような雰囲気をアーロンは感じる。

「行くぞ」

そして敵が隙を晒した絶好の機会、当然アーロンは一気に前に走り出す。床は荒れ果てている為に走りにくいが今のアーロンであればこの程度は誤差、遅れを取ることはない。

しかし、敵も重要拠点を守っているだけあって立ち直りは非常に早く、すぐさま焼き直しのように無数の光線を指から乱射しつつ目に光を溜め始める。

(すこし弱まったか?)

向かってくる光線の大きさが2回りほど縮んでいる。結果、威力が下がり、アーロンが動くためのスペースが広くなったことで初回よりも軽やかにアーロンは走る。とはいえ魔力の殻は燃費が悪い為に解除してしまったので被弾は出来ない。

そして再び中距離と近距離の境目に差し掛かった瞬間、番人は牽制の光線を纏めてアーロンに向けて放つと両手を振り上げる。恐らく先程アーロンが下がったことで有効な攻撃だとでも思ったのだろう。動きに淀みはない。

「2度も見ることはない」

アーロンは聞かせる訳でもなく呟くと向かってくる光線越しに振り上げられた両手へ斬撃を放つ。本来ならば番人の後方が気になって打てないがアーロンの現在地からするとちょうど後方に何も無い部分に両手がある。であれば、しっかりと命中させれば後方への損傷は避けられると踏んだのだ。

放たれた斬撃は容易く光線を引き裂くと狙い通りに振り上げられた右手の方へと直撃する。そのまま斬撃による衝撃で腕が更に後方へと流れ、肩から下もそれに続くように後ろへ仰け反っていくのが見える。とはいえ、下半身がある訳ではないので直ぐに立て直せはするだろう。しかし、アーロンにとってはこの僅かな時間が貰えれば十分でもあった。

「ハァ!」

アーロンは作り上げた機会を不足なく使い、一息に敵の足元、正確には胴体の前に立つ。そして振り上げたグレートソードを全身のバネを弾けさせながら力のままに振り下ろす。全力ではないがここで出せる最大の力を込めたアーロンの一撃は吸い込まれるように敵の胴体へ向かい、ガチン、という酷く硬質な音を立てて止まってしまった。

「は?」

手から伝わる感触、目に映る結果、その全てが理解できずにアーロンは思考が止まると共に硬直してしまう。

カツンカツン、上部からエンリータが番人の目に向けて放った矢が弾かれる音も興味のない学問のように頭に入ってこない。そして当然ながらその隙を番人は見逃してはくれない。

番人はアーロンが弾いた右手が仰け反った分を加速として利用し、手の平を開いたまま叩く様にして振り抜く。

「ガッ!?」

止まってしまっていた頭と身体を寸前で辛うじて動かすことは出来たものの、そんな状態ではまともなことは出来ずにほぼ直撃に近い形でアーロンは攻撃を受けてしまう。

「アーロン!?」

アーロンの攻撃が一切効かなかったこともそうだがそれ以上に攻撃が直撃してしまい、吹き飛んで行ってしまった相方に悲鳴のような声をエンリータは出す。

アーロンは蹴られた毬のように床とほぼ平行のまま吹き飛び、壁に力強くぶつかってしまう。

(チッ、油断した!)

久方ぶりに貰った良い一撃とその原因になった自身の失態に歯噛みする。しかし、アーロンにその事を悔む時間は与えられない。視界の先ではアーロンへの追撃の光線が幾重も向かってきている。おまけに先程よりは時間が掛かっているようだが着実に瞳の光線も溜まってきているようだ。

アーロンは倒れた体をバネのようにして跳ね起きると直ぐに横跳びして追撃を避ける。体のダメージは加護によって頑丈になっている為に軽傷、それも現在進行で治りつつある。しかし、何故攻撃が通用しなかったのかを考えないことにはリスクに対してリターンが見合わない。もう一度硬直するようなことはないがそれなりに威力を込めたにも関らず敵の胴体には傷1つなく、おまけに右手の時と違って地面に近い事もあるのか仰け反りもしなかった。

(一体どうなってる?)

アーロンは光線を捌きながら少しずつ後退していく。その間に効かなかった理由を考えてみる物の今一はっきりとしない。

(感触はほぼ鉄、だがただの鉄が俺の一撃を止められるとは思えない。おまけにこれでは龍の鱗よりも硬い事に成りかねない)

近くで見た雰囲気とぶつかった感触では特段目立つような物は外部には無かった。それは叩かれた右手も同じだ。

(だとすれば内部か・・・)

ここの敵は全員内部に無数のパーツが在り、アーロンがまったく知らない原理で動いていた。となればここの番人も同じで内部に何か秘密が、それも他の敵よりも飛び切り奇妙な仕掛けがあるのだろうと想像できる。

(だが、だとすればどうする・・・?外装が全部同じなら最悪物理で壊せない可能性がある。だが魔術でどうにかなるものか?)

もしアーロンが造り手であるならば魔力に対する対応策も同じだけする。特に守りたいと思う部屋なのであれば猶更だろう。

「試すしかないか」

再び溜まりきった目から光線が放たれる姿を睨みつけながらアーロンは自身の相棒を握りしめるのだった。


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