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アーロン  作者: ラー
五章 下

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十二話

「もうちょっとかなぁ・・・うん、一番傷は深いし、風も強い」

2人は大回廊を目と鼻の先に捉えた。この辺になってくるとエンリータもかなりこの場所に慣れたのか道の間違いが一気に減り、分かれ道で止まる時間が減った。トータルで考えたならばそれなりの速度で来たと言えるだろう。そこにはダンジョンの様な殺意の高い罠が無かったことも含むがこのレベルで安定するならば中堅の斥候としては上出来だとアーロンは思う。

「あ、アーロン!道が開けたよ!」

そして遂に大回廊が見える通路にまでたどり着いた。通路の先は今まで一番大きく広がっており、荘厳な雰囲気が見て取れる。それこそ帝国の城でもこんな大きな回廊は無いだろう。

そのまま慎重に慎重を重ねて2人は通路から出る。階段の前は大きな広場になっており、100人規模で集まっても問題が無さそうなほどに広い。何故これだけ広い場所を此処に作ったのかさっぱりわからない。

(まるで劇場だな)

石造りのような見た目で色の派手さはないが真っ赤なカーペットでもしいて客席でも置けばさぞ綺麗な劇場として名を馳せるだろう。大回廊もそう言う意味では良く似合っている。上に登っていくたびにゆったりと曲線を描きながら細くなる形状が何ともいえない奥行きとワクワクを掻き立てる。それこそ中なのに外の様だ。

「ん?」

ボンヤリと景色を見ていると肌にピリっとした空気を感じて思わず疑問が口から洩れる。目には何も映らない。しかし、明確に何か嫌な気配と言うよりかは魔力の波のようなものを感じ取る。

「どうかした?」

アーロンが突然声を出したからかエンリータが首だけ振り返る。

「すこし嫌な気配がする。構えろ、来るぞ」

そう言うとすぐさま背中のグレートソードをアーロンは引きぬく。此処ならば普段通りの戦いが出来る。

それから左程時間を置かず、突然空間が揺れる。地面では無い、空間が揺れた。足元はしっかりとしているのに目に映る景色が揺れているのはアーロンも経験したことが無い。それと比例する様にして頬に感じる気配は強まる。

(どこだ・・・どこからくる?)

アーロンは腰を落としてどこからでも問題ないように構え、僅かに身体へ魔力を通し始める。微量なのは弱くはないが強くも無いと直感が訴えるからだ。それでも油断だけはしない。前に立っていたエンリータも揺れが始まると同時にアーロンの斜め後ろに回り込んで矢を番えている。

謎の気配を出す存在は揺れが収まると同時に天から降って来る。そして着地と共に先程とは違う重量を感じさせる揺れが足元から伝わる。落ちて来たのは5つ、横並びにアーロン達の進路を塞ぐようにして立ちはだかる。中央に浮くのは顔が付いた円盤とそれを囲むようにして幾重にも重なる様にリングが円盤を軸に規則的な動きをしている。どういった理屈かは分からないが宙に浮き、その無機質な瞳をこちらに向けている。その両サイドには既に見慣れた石兵が2体いる。こちらは今までの個体と比べて変化はない。そして一番両端に居る2体は今までの敵と違いかなり背が高く、スラリとしたフォルムだ。人型ではあるが足が異常に長く、腕に当たる部分が無い。胴の部分は極端に小さく、顔も身体の大きさと比べれば小さいだろう。また、胴体と繋ぐ部分が球体である為かその可動範囲は大きさと合わせて広そうだ。

(ここに来て新手か)「エンリータ、真ん中から球、石、足だ。間違えるなよ」

ここまで一種類しか出てこなかった故にこれと言った名称を決めなかったがこれからは指示をする可能性がある。その為、見た目で適当に名前を決めて伝える。

「ワタシはどこから?」

「・・・お前は中央だ。恐らく遠くからの打ち合いになるだろう。そとの4体を俺が一旦受け持つ」

そう言うとアーロンは両者の間に単独で跳びだして様子を窺う。したい事は当然囮と敵の分断だ。

アーロンが飛び出した瞬間敵の動きは意外にも機敏で組織的な動きをする。両端の足はその巨体を生かすように大きな歩幅でプレッシャーを掛けて来るように詰めて来る。石は反対にその場から動かず、見慣れた光線を打ち出そうと前のめりになり、光を湛え始めた。中央の球はアーロンから離れるように後退しつつ高度を上げる。

(意外に組織的に動くか・・・魔道具の一種と思えば不思議はないか)

全員の動きを眺めながらアーロンは動きを考える。とはいえそこまでの脅威は未だ感じない。

ビュン、ビュン、ビュン。球が明らかに離れて行ったことでエンリータが今までため込んだ鬱憤を晴らすようにして連続で矢を放つ。とはいえ、その結果を見届ける時間的猶予まではない。

(右は回し、左は踵か)

アーロンから見て右からはアーロンの足を払うように、その大きさゆえに胴体ごとではあるが足を大きく回すようにして豪脚が迫る。それに遅れるように、恐らくこの攻撃にどう反応するかによって変えようと言うのか足を振り上げたままこちらを揃いの無機質な瞳で見つめて来る。当然、奥からは今にも光線がこちらに向かって放たれそうだ。

(受けきるか)

折角囮で出たにもかかわらず下手に避けたり下がるのであれば出た意味が無い。故にアーロンは受けきるのを選ぶ。実際迫りくる足は物理である以上アーロンに害を与えるのは難しい。そして迫る光線もグレートソードで捌けると判断する。

「ハァァ!!」

アーロンはまずは迫ってくる足に対して正面からグレートソードを振りかぶる様にして掬い上げる。そうすれば凄まじい衝突音、それとほぼ同時に硬い物が無理やり切られるような音が響く。音の正体は当然アーロンによるものだ。アーロンが振ったグレートソードは所有者の命にしっかりと従い、唸り迫る敵の足を一刀のもとに切りとばす。切りとばされた敵は短くなった足のせいでバランスを崩したのか遠心力に導かれるままにたたらを踏む。そして切り払ったことで動きが止まったと判断したのかもう一体の敵が振り上げていた足を真っ直ぐアーロンに振り下ろし、それに追従する様に光線が迫る。

人間ではフレンドリーファイアも良い所だがそこは頑丈な身体を活かしたとでもいうべきか、死の3連撃がアーロンを襲う。が、そんな事に今更慌てるようなことはない。当然、何の危機もアーロンは抱かない。

「フッ!」

振り上げた腕を足を一歩下げる動作と共に正面に引き戻し、魔力を武器に乗せる。そして直ぐ眼前にまで差し迫った足と光線に向けて下から天を切り裂くように振り上げた。

振り上げられた刃はまず足と接触してそれと同時に魔力の斬撃が正面に盾の役割を兼任しながら飛んでいく。

最初にまるでリプレイとでも言いたげに振り落とされる丸太の様な足が竹を割ったように縦に真っ二つに裂けていき関節まで亀裂が進むとそこでバゴンと音を立てて完全に分離してしまう。当然そんな衝撃を受けた敵は尻餅をつくようにして勢いよく倒れ込む。

向かってきていた2つ光線も同様であっという間にアーロンの放った斬撃に呑み込まれ、斬撃はその勢いのままに空間を割りながら大回廊と衝突した。

それを見届けたアーロンはまずは目前で無様を晒している足の敵を狩る為に前進する。戦力差からまずはまだ立っている方へと駆け寄る。敵はまだたたらを踏んでいるようにも見えたがアーロンが迫ってくるのをしっかりと認識しており、強引に切られた足を軸にするようにして立つと残ったもう片方の足を鞭のようにしならせながら振り抜いてくる。

「遅い」

しかし、そんな決死の攻撃も虚しく、アーロンは更に加速すると敵の足が接触するよりも先に懐に入り込み、その細い胴体ごと向かってくる足を横薙ぎに断ち切る。断ち切られた敵は内部の無数のパーツを血代わりにばら撒きながらその眼に光を無くし、ガラクタと化していく。

そのままアーロンは足を切りかえすと倒れていた敵の方へと向かう。もしかしたら見慣れた方に行ってもいいかと思ったが万が一捨て身のようにエンリータの方に行けば彼女がいらぬ負傷を追う可能性がある。せっかく今、宙に浮いた球と想定通りに弓と魔法らしき何かで打ち合いをしているのだから邪魔したいとは思わない。

アーロンへと牽制と言わんばかりに光線が連続で放たれるがさしたる恐怖はない。アーロンは基本的に避けながらどんどん足の敵に近づき、やはり焼き直しのように敵を横薙ぎで真っ二つにした。


「後は3つか」

徐々に頻度が増してきた光線を捌きながらアーロンは残りの敵を睨む。残りは見慣れたのが2体、よくわからないのが1体で良く分からない方は今尚エンリータの方を狙い撃ちにするように魔法のようなものを放っている。しかし、そこまで出力が強い物ではないのか当たれば只では済まないぐらいの規模でしかなく、範囲もそれほどではない。また、左目らしきところには此処で集めた矢が1本綺麗に刺さっている。

(問題なさそうだな・・・なら)「エンリータ、そのまま球を引きつけてろ!残りを片付けたら俺が吹っ飛ばす!」

そう言うとアーロンは再び足に力を込めて急加速していく。当然幾重もの光線が降り注ぐ。そして今度は前衛が消えた影響なのか、それとも余裕が有ったのか球からも攻撃が降って来る。この頭上から攻撃が降って来る、というのは意外にも対応が難しい。特に今は正面からも攻撃が来ている以上、その難易度は高いだろう。また、球が放つのは光線では無く魔法らしき何か、である。当然火や氷、雷等を筆頭に放射状、弾丸と形を問わずに子供の夢のような自由さを持って降り注ぐ光景は一種の美しさすらある。しかし、それで止まるのは凡俗だけ、アーロンには関係が無い。

アーロンはすぐさま空中からの攻撃を自らも斬撃を放つことで霧散させていくと共にどんどんと速度を上げて正面に敵に迫る。迫るごとに苛烈さは増していくがアーロンにとっては隙間だらけ、笊そのもの。そして一気に迫ったアーロンは成れた動きで岩と名付けた敵を一息に切り捨てた。


「残りはあいつか」

切り捨てた残骸に背を向け、エンリータと対面するような形で敵を挟む。不思議な事にあれ程攻撃を振り撒いていたと言うのにも関わらず地上の敵がいなくなった途端、宙に浮いていた球の動きが悪くなった、というよりか急停止したかのように攻撃が止む。

(なにかあるのか?)

不思議に思いながらもエンリータの方へと合図を送り、グレートソードを引きながら魔力を回す。

(これで沈め)

アーロンは引いたグレートソードを一息に振り、宙に居る敵へと大き目の斬撃を放ったのだった。

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