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アーロン  作者: ラー
五章 下

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十一話

2人はエンリータを先頭に迷路のような道を進む。道は埃の様な物は溜まっておらず、両端に設置された小さな光がうっすらと発光しているお蔭で暗さは感じない。どこからか風もちょうどいい具合に流れ込んできている為に息苦しさや気持ち悪さを感じなくて済むのは幸いだった。

「うーん、やっぱり壁があるかぁ・・・ズルは出来ないってことだよねぇ」

先を行くエンリータはキョロキョロと周囲に目をやりながら道の外側へと手をやろうとするが固い感触が返って来るだけで道から外れることは出来ない。

「壊そうと思えばできるかもしれんが壊しながら進むのはリスクが勝つからな・・・こればかりはしかたない」

相槌を打つようにしてアーロンがエンリータの愚痴に反応する。尤も、この見えない壁が彼女の言う通りズル防止なのかここに住む住人が万が一落ちない為の物かは判断が付かない。勿論両方、ないしは別の可能性も無くはない。

通路に出てからはエンリータが罠の有無と進路を探っているが今のところアーロンの目にも可笑しな所は見あたらない。通路もさほど分かれ道がある訳ではないのか今の所少しずつ前に進めている感触がある。それでも最奥の高い場所へと続く大回廊までは距離がある様に見える。

「ん、正面から来たみたい」

足を止めたエンリータが屈んで耳の裏に手を当て音を捉える。どうやらまた敵のようだ。

「同じか?」

「多分、音が似てるから」

それを聞くとアーロンはエンリータの前に出てファルシオンの方を抜く。通路は決して狭いとまでは思わないがグレートソードを振りまわすには不向きな地形で尚且つ両端に見えない壁があるとなれば使うのは少し躊躇われる。万が一引っかかってしまえば大きな隙になることは想像するまでもない。それに今のアーロンであれば多少は攻撃のリーチを魔力で伸ばして剣を強化できるのだから大型に対するファルシオンの火力と範囲不足は実質解消されている。


少し進んでいけば敵の姿は直ぐに見えた。そもそも視界自体は遮られていない為、多少は遠くまで見ることが出来る。しかし、不思議な事に最奥の大回廊を除けばある程度の所で視界に靄が掛かったかのように悪くなって迷路の全貌を何となくでしか掴むことは出来ない。それは敵も一緒で本来であれば全て見えても可笑しくないのに音で先に掴まなければならない程に視界の効きが悪いのである。アーロンの予測ではこれも見えない壁が何かしらの要因なのではないかと踏んでいた。

「行ってくる」

後ろにいるエンリータに声を掛け、返事を待つことなく駆けだす。実際、この通路ではいつもの連携は取りづらい。そのために基本はアーロンが単独で敵を片づけて戦闘以外の事を彼女が担当する手筈になっていた。特に彼女の5感は加護の事もあって平時であればアーロンよりも既に優れている。


正面でアーロンの姿を捉えた敵がすぐさま光線を放ってくる。反応は初回で出合った個体よりも早く、その密度も高い。とはいえ強さの上限が上がった感じはなく、あくまで反応が良くなったにとどまる。

アーロンは飛んでくる光線を後ろに極力いかない様に気を付けながら魔力で覆ったファルシオンで捌きながらどんどん近づいて行く。そして目と鼻の先まで近づけば大き目の光線が放たれ、それと同時に引き絞られた拳がアーロンに狙いを付ける。そこにはこれで下がるなら良し、避けても直撃しても追撃をかける、そんな意図を感じさせる。やはり初回の個体よりも明確に闘い方が上手いとアーロンは感じる。また、近寄っていく中で敵は遠距離からの攻撃に備えるように左腕を盾にしているようにも見えた。

(戦ったことも無い、それも戦士からの遠距離を気にする?)

飛んできた光線を真っ二つに切り捨て、更に踏み込みながらアーロンは考察を続ける。そこまで目くじらを立てる事ではないかもしれない。しかし、偶然というにはあまりにも対策らしき行動が目立ち、さっき戦った個体の記憶を持っていると言われた方が納得できそうなほどだ。

ゴォ、岩石かと見紛う程大きな拳がうねりをあげながらアーロンを目掛けて振られる。それに対してアーロンは思考を続けたまま落ち着いてファルシオンを受け流すように頭部まで持ち上げる。その直後、掲げたファルシオンと敵の拳がぶつかり合い、一瞬拮抗が生まれる。尤も長く続くような物では無い。アーロンは敵の攻撃の流を正確につかみ、真っすぐ飛んで来る拳を自身から見て右側の方へと流れるようにして受け流す。敵は想定と違う方向へと力を流されたせいで体勢が巨体故に大きく崩れてしまい、胴体部分を守りにくい形で晒してしまう。当然、それを狙っていたアーロンは流した勢いのままに深い所へと踏み込み、掬い上げるようにしてファルシオンを振り抜く。刃は前のめりになる敵と噛み合う形で吸い込まれるように腹部へと導かれ、硬い外殻を無視するかのようにして切り裂き、胴体の3分の2ほどまで切れ込みが入る。

「ハァ!!」

振り抜いたファルシオンを翻し、上から切り落とす為に頭部に沿うように引く。敵は兎に角アーロンを引き剥がしたいのか無理やりに腕を振りまわそうとしているのが視界の端に見える。しかし右腹からざっくりと切られてしまっているせいかバランスが崩れ、力も速度も足りない。アーロンは全身を旋回させながら作った切れ込みに目掛けて袈裟切りにファルシオンを振り下ろす。刃は正確に作られた切れ込みへと吸い込まれ、残った部分を一息に切り落とす。アーロンはそのまま体を回しながら右足を振り上げ、踵落としのようにすると崩れ落ちていく敵の上半身に目掛けて振り下ろした。

ゴォン!大きな音を立てて敵の巨体が沈む。アーロンはそのまま足蹴にした敵の首に目掛けて止めとばかりにファルシオンで切り付けて首を落とす。初回の時は胴体を切っても即死には至らなかった、恐らく何かしらの動力が残っている限り動くのだろうと判断したアーロンは出来るだけ分割して早々にエネルギー切れを狙う。

切り落とされた首は切られた勢いで地面を転がっていく。その際にはまだ目が光っていたが光線を放ちはせず、ほどなくして光を無くした。


「これなら問題はないな」

倒した敵の残骸を見ながらアーロンは呟く。当初、アーロンは敵を人工の魔物だと考えていたが2回戦ったことでこれは魔物とは大きく違い、どちらかと言えば道具、つまるところ魔道具の類だと判断した。どういう仕組みだとかはさっぱりわからないが動力炉があって無数のパーツがこの巨体を動かしている事ははっきりした。そしてそれぞれの繋がりを切ってしまえば容易に動かなくなる。これさえ分かってしまえば後はどうとでもなる、精々問題は外殻の硬さ程度でそちらはアーロンにとって何の問題も無い。むしろこの硬さに対応できるならば中堅の冒険者で十分対応できてしまう。ただ、エンリータの相性が致命的に悪いだけだ。尤もこれは種族的な困難でもある為に仕方がないだろう。これが力自慢のドワーフなら話は大きく変わる。つまり適材適所ということだ。

アーロンは残骸から目を離すと後ろで待機しているエンリータの方に視線を向けて手を振る。そうすれば一度後方を確認した彼女はタッタカこちらに駆けより、再び斥候作業に戻る。


前を歩くエンリータは熱心に床を見ながら全方向に耳を澄ませる。本来であれば周囲の壁も気を配る対象ではあるがここには存在しない為に気にすることはない。それにどうせ遠くは見えないのだ、気にするだけ徒労になる可能性が高い。

「・・・うん」

今は分かれ道の前に立ち、どっちが進路か目を皿にして確かめる。恐らくかなり昔の通路ではあるため痕跡など無いに等しいがそれでもそこに残る情報と言うものが確かに存在する。それこそ、ここを守っている存在がいるのだから床に残る傷や凹み、風の通り方一つとっても何かのヒントになりうる。

「多分こっち」

すこし自信無さげな表情ではあるがエンリータは左側を指さす。

「なら早く行くぞ。安心しろ、間違っていてもどうにでもなる。焦りは要らないが臆病もいらん。お前の力を信じろ」

そう言うとアーロンはさっさと左に曲がる。彼女の力は知っているし、信じている。今更ハッキリと分かるミスでもなければいちいち口出しをする気はアーロンに無い。そして早々に先に進むアーロンの横をさっきよりも軽い足音でエンリータが過ぎ去り、再び床と音に集中しだした。


「ハァ!!」

アーロンがファルシオンを振る。敵は既に見慣れ過ぎた石兵たちだ。現在、アーロン達は巨大迷路の中盤を過ぎ、もうそろそろ巨大回廊にまで届くか、という所まで来ていた。勿論道中すんなりと進むことは叶わず、幾度か突き当りの様な場所へと辿りついてしまう。これで厄介なのは時間の消費だけでなく戻る道を塞ぐようにして敵が絶対に現れてきてしまう事だった。それだけならば突き当たってしまう前に戻れば良いように思うが不思議な事に突き当りが突きあたるまで分からないのである。遠くから見ると道が続いている様に見えるのにいざ寄ると霞が晴れたかのように壁がないしは広場の様な場所に躍り出てしまうのだ。そしてそこで初めてハズレの道だという事に気が付き、敵と強制的に闘わされてしまう。体力的な消費は大したことはない。厄介なだけで強い敵はおらず、全員が同型なのだから戦闘はむしろこなれていき、今となっては作業に等しい。それでも確実に時間が削られるのは事実、そして正確な時間が分からない中で時間に追われると言うのは精神に思わぬ負担がかかるものだ。現に迷路に入ってから戦闘をしていないエンリータの額には汗が浮いて、軽口も明確に減った。幸いなのは集中力が一切損なわれていない事だろう。


ズシン、音を立てながら敵が倒れ込み、静寂が戻ってくる。大回廊に近づくたびに敵の数が増えて来たがまだ手古摺らずに済んでいる。これにはこの迷路が狭いお蔭もあるだろう。常にほぼ一対一で戦えるのはアーロンにとっては幸運だ。

「まだ行けるか?」

念のため、横を通り過ぎようとしたエンリータに声を掛ける。此処に来るまでにそれなりに時間を使った上、まだ給水を除けば休んでもいない。心理的な負担を考えれば中途半端ではあるが休むのも悪くはないだろう。

「ううん、まだ大丈夫だよ。それに今、いい感じで集中出来てるからこのままいきたいかな」

振り向いたエンリータは疲れを感じさせない笑みを浮かべる。

「分かった、なら回廊までは一気に行く。問題が無ければそこで一旦休む、いいな?」

「うん、よし、頑張るぞ~」

頷いた彼女は右腕を振り上げてから再び前に行き、アーロンもその背に続いた。

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