満ちた龍と漂う鯨
ある時、天が裂け昏き空から龍が堕ちた。
その龍は天を隠す程の大きさであった。
人は、神の裁きだと崇め言った。
鳥は獣の王に倒されたのだと誇らしげに言った。
様々な種族が龍が堕ちた理由を言った。
そしてそのどれもが間違っていた。
どれもが全て、間違っていた。
その間違えの中で、鯨だけが知っていた。
神代から漂い続けた鯨だけが、知っていた。
鯨はひとり呟くように言った。
「我らが王が満たされた。」と。
◇◇◇◇
かつて、龍は弱く小さかった。
だが、心優しかった。
己の力を全力で使い、魚達を助けていた。
そのうち龍は、海の王と呼ばれた。
心優しき海の王と。
しかし、龍は王と呼ばれようとも崇められようとも満たされはしなかった。
己が弱く小さかったから。
ひたすらに龍は強くなろうと努力した。
太陽の神や宇宙の神に教えを乞うた。
龍は大きくなった。
その身を現せば天すら隠す程に。
それでも龍は強くなれなかった。
龍は満たされなかった。
龍は恨んだ。
強くなれない己を、満たされないこの心を。
龍は神代の鯨に問うた。
「どうしたら自分は満たされるのか。」と。
私は言った。
「宇宙の神すら届かない所に行くのです。そこならば王は満たされるはずです。」
そして王は向かった、宇宙の神すら知らない遠い遠い宇宙の先に。
私は宇宙の先で何を見たかは知りません。
しかし、確かに私は見え、理解しました。
堕ちた龍が私が神代に見た神々と同等の力を持っていたことを。
そして、我らが心優しき海の王は満たされた表情であったことを。
◇◇◇◇
「どうか、どうか、満たされし心優しい我らが王よ、心ゆくまでお休みくださいませ。」
そして、満ちた龍は眠り、鯨は再び漂い始めた。
これはそう、鯨が見ていた弱く小さい龍が
遠い遠い宇宙で堕ちた話。
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