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第二話・魔女と呼ばれた辺境伯



目を覚ますと、なんかいい感じの病室にいた。

病室特有の薬品臭はするものの、俺は前世でも触った事がないフカフカのベットの中で眠っていた。


「起きたか。」


ぶっきらぼうな男の声が聞こえて、視線を向けると白衣を着た若いハゲがいた。


ただのハゲじゃない。髪の毛はもちろん、髭も眉も全て脱毛されたツルッツルのハゲだ。きっと毛と言う存在が体に存在しないのだろうと言うくらいのハゲがいた。


「一応言っとくが、これ(毛が無いの)は自分でやったんだ。仕事中に毛が落ちるのが鬱陶しくてな。」


彼は慣れた感じで言った。きっと何度も同じことを言っているのだろう。


「俺の名前はヤルトマ、医者だ。お前を治したのは俺だぞ?」


「ありがとうございます。」


「おう、少し待ってろ」


ヤルトマは『チリンチリン』と小さなベルを数秒でメイド服の女性が部屋に入ってきた。


「患者が起きた、報告よろしく。あー、あと粥の準備もな」


するとメイドさんは「かしこまりました」と無表情で一礼して部屋を出て行った。


「あーあ、せっかく美人なのにニコリともしねぇ、もったいないよな?せっかくおっぱい大きいのに。」


「そっそうですかね?」


「まぁ、まだガキだから分からんか。軽く検査するぞ、痛みはあるか?」と言いながら俺のデコに手を開けるヤルトマさん


「無いです」


「おーし、上等だ。まぁ担ぎ込まれた地点で鼓膜の破裂以外には目立った外傷は無かったからな。」


鼓膜の破裂、その言葉を聞いて、ドラゴンの姿が脳裏をよぎった。


「みんなは!?あのドラゴンはどうなりましたか!?」


「おう、ウチの騎士サマがぶっ倒してくれたぜ、死者無し、負傷者一名…お前だ。んで、もうお前はほぼ完治。ドラゴンが商団隊(キャラバン)襲った事件の中じゃかなり良い方だ。なんならドラゴンの素材で黒字なくらいさ」


「はぁ〜よかった。」


ベットに体を預けて脱力する。


『コンコン』と扉がノックされる。


「どうぞー」とヤルトマが言うとさっきのメイドさんが入って来た。


「ゴルド様を親方様がお呼びです。来られそうですか?」


「ん?医者として言うなら飯食って少し安静にしてからがいいと思うが…まぁ問題はないだろうな、一応1時間以内だ。」


「お伝えいたします」


「それじゃ、行ってこい。」


『バシッ』と背中を叩かれて部屋を出る。「こちらへ」と道案内するメイドに連れられ部屋を出ると廊下に出た。



しかし床は大理石で壁には絵画、天井は高く、等間隔で高そうな花瓶が置かれて花瓶にはセンス良く花が飾られていた。


「えっ此処どこですか?」


「此処はダーナ城。ダーナ辺境伯様のお城でございます。」


俺はとんでもないところに来てしまったらしい。







しばらく歩くと部屋の前に止まった。


『コンコン』とメイドさんはノックして「ゴルド様をお連れしました。」と言った。



「入りなさい」と女性の声が聞こえた。背中に悪寒が走る、俺の予想が当たっているならとんでもない大物がこの部屋の先にいるの筈だ。


「失礼いたします」とメイドさんが扉を開けて俺を中に入る様促す、部屋の中は執務室だ。一見すると豪華絢爛な様に見える内装だ。飾られている絵画やくるぶしまで届きそうな毛の高い絨毯、ピカピカに磨かれた机に触らなくても柔らかいことがわかるソファ。


しかし、そんな高級なものが多い筈部屋は驚く程、洗礼されていてどこか落ち着く雰囲気だ。内装の豪華さに負けない計算された機能美の様なものを感じる。そんな執務室だ。



そこの奥に座るのは美しい女性だ。


「いらっしゃい、ゴルド・マッカート君。私はエリザベート・ダーナ。辺境伯をやらせてもらっているわ」


エリザベート・ダーナ。別名《南の魔女》


豊かな農業地帯である王国南部を任される女傑であり、行く度に渡る公国からの侵略戦に勝利して来た正真正銘の実力派貴族でありながら2児の母でもある。


2人の子供を産んでも彼女の美貌は衰える事は無く、前世のテレビ番組で流行った美魔女と呼ばれる雰囲気を持っている。


「おっ私はゴルドと申します!マッカート家からは出た身であるので、マッカートではありません。ただのゴルドでございますっ。」


突然の大物に驚いて挨拶すると彼女はフフフと笑って「座って」と俺をソファに座らせた。


対面する様に彼女が座ると、俺の目をじっと見た。


「そっくりね。貴方の母親に。」


「母さん?ですか?」


「ええ、青い目と金髪、鼻の形…他は似てないけど、カレンの面影がある。ドラゴンに立ち向かったそうね?彼女もそう、気がつくと動いてるのよ。みんなの前に立って戦う。体が弱い癖に勘だけは一流でケロッとしてるの。心配する私達のことも考えなさいって…」


「……」


そういえば母さん事をほとんど知らなかった。名前と、父親の側室だった事と、俺を産んですぐ死んだ事と、体が弱かった。コレくらいしか知らない。



「彼女は友人だったの。学園生活3年目、最後の年に出来た最高の友達。死んだって聞いたけど、貴方に会えてよかったわ」


「母さんと俺はそんなに似てますか?」


「まず顔が似てるわね。それにドラゴンの件、彼女なら間違いなく貴方と同じ事をしたでしょうね。サラッと生きて帰ってくるところなんて瓜二つ。フフッ」



『ゴツン!』と頭にゲンコツが落ちた。


「痛った!!!」


「子供がドラゴン相手に囮になるんじゃないわよ!そう言うのは大人の仕事!貴方がやる必要は無い!!」


『ゴツンッ』と追撃が飛ぶ


「まったく、呆れるしか無いわ…流石クルシースの血筋って事ね。こんな所に残ってるなんて…。」



「クルシース…ですか?」



「はぁ…知らなくて良いわ。あと、話したい事も幾つかあるの…まずは、コレは何かしら?」






そう言って彼女が取り出したのは、

俺が作ったはちみつとその研究をまとめたノートだった。



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