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「それじゃ、お母さんと研究所に行ってくるな」

「ちゃんとエイト君と仲直りしておいてね、ティスア。あ、あとゴミ出しもお願いね。生ごみが多くて」

 翌日。休日の朝。サラーサとアルバは研究所に出かけた。それを待っていたかのように、玄関から戻ってきたティスアは、リビングにいたエイトに嬉しそうに話しかけた。

「お母さんたち出かけたから、ネット繋げるよ!」

「勝手なことしてバレたら怒られるよ」

 テレビに目を向けたまま不貞腐れたようにエイトが言った。

「バレなければ大丈夫……って、まだ怒ってるの?」

「僕はもうやらない」

 昨日ティスアに言われた言葉にエイトはまだ腹が立っていた。他の人より頑張らないといけないのは、予知能力が高いエイトが一番よく分かっていた。それなのにエイトのことをティスアの両親の前で、暗に無責任な奴呼ばわりしたのが許せなかった。

「やらないって……特訓?」

「特訓も実験も予知も。もうやらない。週明けに言うから」

「ワタナベ博士に?」

「……ビルさんに」

 エイトの言葉に、ティスアはため息を一つきながら、ラックに入っていたパソコンを取り出した。

「まったく、まだまだ子供だよね、エイトって」

「うるさい」

「もう良いよ。私が事件を止めて見せるから」

 ティスアはそう言って、対面の席に座りつつパソコンを広げた。

「それ、おばさんのパソコン。履歴残るしバレちゃうよ」

「少しくらいはバレないでしょ」

「怒られても知らないからね」

 ぼそりとエイトが言った。エイトも今度ばかりはティスアを庇う気はなかった。知らんぷりしておこうとテレビを見る。

「まずは、博士の言ってた事件、調べてみようかな」

 ティスアはそう言ってキーを打ち始めた。


「おかしい、全然出てこない!」

「……何が?」

 突然声をあげたティスアに、エイトは興味なさそうに言った。

「博士が言ってた、自律モードの機械人形が起こした事件。絶対ニュースになってると思うんだけど……」

 うーんと唸ってティスアが首をかしげる。

「ちょっと見せて」

「んー、博士が嘘ついたのかなー」

 ティスアは投げやりな様子でノートパソコンの画面をエイトに向ける。そこにはブラウザと検索エンジンが表示されていた。

「機械人形、殺人事件、って。これじゃ出ないと思うよ」

「どういうこと?」

 怪訝な顔のティスアを置いて、エイトは身を乗り出してキーボードを打ち始めた。

「機械人形の型番? そんなの調べてどうするの」

「博士はバグって言ってたから、メーカー名と機械人形のシリーズと、型番から調べなきゃ……これかな?」

 機械人形のカタログから調べていくと、教育用機械人形を主に販売している大手のメーカーサイトに行き当たった。そこには評判の良い機械人形シリーズの素体がいくつも並んでいた。そのどれもが数十万以上の価格だった。

「ふぅん、リゥが言ってたけど、やっぱり機械人形って高いね」

「……今は第九世代が最新。過去の話ってことは、五年前くらいに発売してる第六世代のシリーズかな?」

 エイトはそう言って古めの型番を元にして、事件やうわさを調べ始めた。だが、しばらく調べてみても、やはり事件性のある話はどこにもなかった。

「やっぱり博士の嘘だったんじゃない? 早く話を終わらせたかったのかも」

 やがて飽きてきたのか、ティスアはそう言って背もたれに寄りかかると、テレビを見始めてしまった。

 いつの間にか自分が調べている事に気づいて腹が立ったエイトだったが、ふと、画面の端に気になる言葉を見つけた。

「十歳の子供、事故死。バグが原因? 第六世代の危険性と、それを隠すメーカーの裏」

 エイトはいかにもゴシップニュースのタイトルの様なそのサイトを開いた。そこには派手な装飾の言葉と、過激な言葉で機械人形の危険性を煽る記事が所狭しと並んでいた。

「うわ、なにこのサイト」

 いつの間にか後ろで見ていたティスアがそう呟く。どうやら反機械人形の記事がまとめられた、怪しいサイトを開いてしまったらしい。エイトは見ていいのかなと思いつつも、怖いもの見たさで記事を読み進める。

「これ、あのメーカーの型番だ」

 その記事には、先ほどまで見ていた機械人形の素体と、それにまつわる事件について書かれていた。

「同型番の機械人形を利用していた、当時まだ十歳だった子供が亡くなった。被害者の名前は、渡部透君」

 写真などは一切載っていなかった。そこには、嘘か真か分からないが、バグによって機械人形が被害者を殺してしまったとまで書かれていた。

「メーカーはバグと断定し、事故扱いとして処理。被害者遺族に慰謝料を支払った」

「ふぅん。博士の言ってた事と似てるけど、これだったのかな。……どこにも自律モードだなんて書いてないけど」

 ティスアの言った通り、記事を読み進めても肝心な話は書かれていなかった。こういったゴシップにありがちな、根拠を欠いた記事だった。

「なにこれ、機械人形は危険、依存すると世界は支配される、全ての機械人形は破壊するべき……ばっかみたい」

 ティスアが怒ったような口調でそう言った。関連記事には機械人形の有害性や危険性を誇張したものがあふれていた。

「ていうかエイト。そんな危なそうなサイト見てたって、後でバレても知らないからね」

「え、そんな」

 言われてエイトは慌てたようにサイトを閉じた。ティスアはしーらない、と言ってそっぽを向いてテレビを見始めた。

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