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1ー①夫


「風邪でもひいたのか?」



仕事から帰った夫が、鼻をぐずぐず言わせ盛大なくしゃみをする私を見て言った。



「いつもの埃アレルギーだよ」



夫とは私の26才の誕生日に出会った。



友人が誕生祝兼ねて、飲みに行こうと誘ってくれた居酒屋で偶然相席になった。



その頃の私は大学時代から6年間付き合っていた彼氏に振られ腐る事2年「男になんて頼らない、私は一人で生きて行く!」とかなり本気で思っていた。



見るからに「若造」と言った雰囲気の当時の夫は、まだ21歳だった。



お酒の勢いもあり、男女四人で好きな音楽や遊びの話でおおいに盛り上がり、楽しい誕生日を過ごす事ができました…で終わるはずだったのだが。



先に帰った夫とその友人、気づけば手袋の忘れ物があった。



「その手袋、ミキが預かっておきなよ」



「何で私が?」



「ミキがトイレに行ってる間に電話番号教えといたから」



「はっ?」



友人は微笑みながら言った。



「最近元気なかったミキが久しぶりに楽しそうだったから、ね?」



正直、面倒臭いと思った。でも、友人の気持ちがありがたかった。



「それに結婚しなくても、彼氏必要なくても、遊び相手はいた方がいいと思うよ」



彼女の言葉に「あ~そうか」と思った。



5歳も年下は結婚相手の対象外、好きな音楽、趣味も合っていたし、確かに気楽な遊び相手としてはOKだよね。


………………


でも、もし夫が悪いヤツだったらどうなっていたんだろ?



「何ぼ~っとしてるの?」



風呂上がり、ビールを片手に夫が怪訝な顔を向けた。

と言うか、私がしげしげと夫の顔を見つめていたようだ。



「いや、もし旦那が悪いヤツだったらどうなっていたんだろうって」



「お前は相変わらずifが好きだなぁ」



「それに年取ったなぁ…と思って」



「お互い様だろ」



夫は苦笑いして、ビールをグラスに注いだ。




結婚前熱烈に迫ってきた夫だったが、結婚後は私の行動にあまり干渉せず、夜の営みも淡白なもので、週1程度。



信用されている?のか、釣った魚にエサは要らない的な事?なのか、あるいは私に女性的魅力がない?のか…



当時の私は年齢差を気にして、甘える事すら出来ずにひっそり悩んでいた。



結婚式直後、「やっと自分だけの物になった」と狂おしく抱かれた事…それが唯一印象に残る夫とのセックスの思い出というのも切ない話だ。



そもそも自分の父親が、母に対し異常ともいえる執着心を剥き出しにする人だったので、自分はそんな男とは結婚したくない…と思っていた。



まさに正反対の旦那と結ばれた訳だが、無い物ねだりということか…



「ふ~っ」



当時を思いだし、思わずため息をつく。



「本当、熱でもあるんじゃないのか?」



特に心配するようでもなく、夫が言う。



今や、立派な熟年夫婦…



もうあっちの方はだいぶご無沙汰である。

お互い空気のような存在だが、仲はそれなりに良いと思う。



(空気はないと死ぬもんね)…心の中で呟いて、何故か可笑しくなって、吹き出す。



「おまえ、なんかやっぱり変だぞ」



今度は少し心配気に夫は言う…やはり空気は必要か?



「何でもないよ、風呂入って寝るね」



今晩は昼間に発掘した昔のアルバムを自室で見よう…


そう思い、リビングを後にした。



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