6/104
2020年春
サイタ サイタ
サクラ ガ サイタ
満開の桜だが
今年はどうにも
さびしげだ
ふたり、さんにん、
見上げるひとは
みな、笑顔
だけれども
重なった花のすきまから
のぞく空には
どこにも出すことのできぬ
涙やら、タメイキやら
理不尽な、なにものかへの怒りが
溶け込んでいるようである。
サイタ サイタ
サクラ ガ サイタ
なにひとつ
おもうところなく
花を見上げられた
ぜいたくを
なつかしみ
根拠のない希望を
酒で呑み込んで
子供らに
消毒しなさい、と
命じる春。