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第九章 亮太、柔道のコーチになる

数日経過しても、目当ての教科書は古本屋では入手できなかった。

会社が創立記念日で休みの泉が、「そんなにケチケチせずに教科書ぐらい買ったら?一緒に行こうよ。」と助言した。

亮太は、「俺の体は将来何が起こるかわからない。その為に無駄遣いしたくないんだ。」とその理由を説明したが、今回は諦めて教科書を買いに本屋に行くと、柔道部員の野口多津子が待ち構えていた。

「陽子さんにお願いしたい事があるのよ。」と声をかけた。

亮太は、多津子が教室で私を捜しているようでしたので、あかりや啓子のかげに隠れて誤魔化していたが、まさか教科書を販売している本屋で網を張っていたとは油断したと反省していた。

亮太は、「何?また柔道の試合?」と若い女性と組み合えるのは嬉しいが、いい加減飽きたなとうんざりしていた。

多津子は、「いいえ、今回は違うのよ。じつは今年の新入生のなかに、高校時代、柔道部の主将を務めていて、各種試合で何度も優勝している松木翔子がいるのよ。新入生に適わなければ私達の立場がないわ。その時の為に、陽子さんにきてほしいのよ。」と真剣な眼差しで訴えた。

泉が亮太の腕を引っ張り小さな声で、「あの顔は真剣だわよ。断ったら以前のように、毎日亮太の前に現れるわよ。私達の住んでいるマンションにまできたらどうするのよ。」と会社が創立記念日で休みの泉は亮太と内緒話をしていた。

亮太も泉から依頼されると断り切れずに了承して多津子も安心していた。

    **********

新入生の初稽古の日に亮太も呼ばれて、しばらく様子を見ていた。

予想通り、翔子は強く、柔道部員は誰も敵わず、全員、数秒で倒された。

亮太は、その様子を見て、ここの柔道部のレベル低いな。柔道ではなく丸でダンスじゃないか。と思っていると、多津子が亮太に助けを求めた。

亮太と翔子との試合が開始された。

亮太は、腕を組んでいて微動だしなかった。

翔子はバカにされているようで、頭にきて、亮太に襲いかかると、簡単に投げられた。

翔子は、えっ?嘘!いつ投げられたんだろう?と信じられなかった。

翔子は、「いまは、あなたが腕組みなんかしているから油断しただけよ。」と翔子のプライドが許さず、再度亮太に襲いかかったが、全く敵わなかった。

翔子は、「オリンピックを辞退した女子柔道の達人がいると聞いて、一度対戦したくてこの女子大に入学したのよ。あなたが女子柔道の達人ね。男性のような柔道ですが、組み合った時は確かに女性だったわ。何故オリンピックに参加しないのですか?」と不思議そうでした。

亮太は、「私はオリンピックに興味がないだけよ。翔子さんはあるの?」と話題をすり替えた。

翔子は、「勿論あるわよ。オリンピックに参加したいわ。陽子さん、オリンピックに参加しないのだったら、私のコーチになって。」と依頼された。

亮太もオリンピックには興味があったが、ドーピング検査などで、体を調べられると困るので、オリンピックは辞退していた。

亮太は自分のかわりに翔子に出場してもらおうと思い、コーチを引き受け、この日以来、マンツーマンで、亮太が翔子の指導をしていた。

    **********

OLとして就職した泉は女子大に顔を出す事がなくなり、このような事になっているとは夢にも思っていませんでした。

週末にも亮太は外出しているので、不信に感じて亮太に確認した。

亮太から説明を聞いた泉は、「その翔子って新入生は将来有望なの?それとも美人だから?亮太のタイプなの?」と亮太の考えを確認した。

亮太は、「俺は女だぞ!美人には心引かれない。俺のタイプは泉だ。次回のオリンピックも夢じゃない。俺が指導してオリンピックに参加させてやる。メダルも夢じゃない。」と力説した。

泉は、「亮太、その翔子さんがメダル獲得したらどうなるかわかっているの?コーチと歳の差一つで、コーチに全く敵わないと世間が知ったら、マスコミが黙ってないわよ。何故亮太自身がオリンピックに参加しなかったのか?参加できない理由があるのかと色々調べて、亮太の正体がばれる可能性があるわよ。」と亮太の軽率な行動に呆れていた。

亮太は、「わかった。翔子さんと相談するよ。」とどうしようかと考えていた。

    **********

その日の夕方、帰宅した亮太は泉に、「翔子さんと相談した。コーチについては超一流のコーチだから、他の選手に取られないように極秘だと説明する事にした。オリンピックにも俺は行かない。テレビで観戦して、気付いた事があれば翔子にメールする事になった。」と安心させた。

泉は、「それで本当に大丈夫なの?マスコミは、女子大にも取材にくるわよ。」と心配していた。

亮太は、「警備員にマスコミは入れないように依頼しておけば大丈夫だよ。」と深く考えていない様子でした。

泉は、「男性はシャットアウトできても、女性は学生に紛れて上手くすり抜けるわよ。私だって簡単に入れたから。」と亮太の考えは甘いと指摘した。

亮太は、もしばれたら病気だとでも説明するよ。」と心配していない様子でした。

    **********

泉が心配している中、翔子は亮太の指導で、各種試合で連勝して、負け知らずの選手としてオリンピック選手に選ばれた。

翔子はメダル有望とマスコミが取材に来たが、守衛に取材お断りと女子大の中に入れなかった。

女子大の外で張り込んで翔子を尾行していると、数人の不良に襲われた。

翔子が苦戦していると亮太が来て、数人の不良を簡単に撃退した。

翔子は、「助かりました、コーチ。やはりコーチは強いですね。」と感謝していた。

マスコミは、翔子のコーチが発表されてない為に、何かあると考えて亮太を尾行した。

    **********

亮太がマンションの前まで来ると、既にマンションに帰っていた泉は、マンションの部屋の窓から亮太を見ていて尾行されている事に気付いた。

泉は慌てて亮太の携帯に電話して、「亮太、尾行されているわよ。カメラを所持しているからマスコミの可能性があるわ。マンションに入らずに通過して!」と依頼した。

亮太は、「わかった。このまま駅に向かい、駅の公衆トイレに入る。もしマスコミだったら張り込むだろうから、泉も駅に来て、女子トイレを覗こうしている人がいる。痴漢よ!と大騒ぎして。その間に俺はトイレから出るから。」とマスコミだったら撃退できないので、泉に協力を依頼して駅に向かった。

亮太の作戦は成功して、マスコミを振り切って帰った。

    **********

その日以来、マスコミは駅や女子大の正門前で張り込み、マンションには気付いていないようでした。

亮太はマスコミに気付かれないように、裏門から女子大に入った。

翔子にも事情を説明して、自転車通学にして、電車通学しないように忠告した。

マスコミは、数ケ月経過しても亮太と翔子を発見できなかったので、女子大以外の道場で練習しているか、合宿しているのだと判断して張り込みは一時中断した。

亮太は、女子大の近くにマスコミがいなくなったので、翔子と二人で安心して油断していた。

そんなある日、一人の女性記者が、女子大の近くで亮太を発見して尾行した。

女子大にも学生にまぎれて入ってきて亮太を見ていた。

亮太が翔子をマンツーマンで指導していたので、亮太が翔子のコーチに間違いないと確信した。

その練習を見て女性記者は、亮太が翔子より強いと気付いて亮太について調べた。

女性記者は、亮太が大学女子柔道の試合で、五人抜きで一人で優勝した事を掴んだ。

女性記者は、何故亮太がオリンピックに出場しないのか調べても不明でした。

そんな中、女性記者は、亮太の昔の事を調べても、高卒認定試験に合格して女子大に入学した事が判明したが、それ以前の事は、出身校や出身地も不明でした。

亮太は泉とテレビを見ながら夕食を摂っているとテレビニュースで、「オリンピック出場候補、松木翔子選手を簡単に投げる、謎のコーチの撮影に成功した。」と放送していた。

泉は、「ちょっと、撮影されていたじゃないの。どうするのよ。」と焦っていた。

亮太は、「大丈夫だよ。俺の顔は映ってないし、翔子も俺の事はコーチとしか呼んでない。今まで通り、謎のコーチで押し通すだけだ。」と落ち着いていた。


次回投稿予定日は、3月12日を予定しています。

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