第六章 授業ボイコット
スキーツアーも無事に終わり、それぞれ正月は帰郷して家族と楽しんでいた。
親兄弟のいない亮太は一人取り残された。
泉はそんな亮太を心配して、正月三が日を家族と過ごせば亮太の元へ戻ってきた。
亮太は、「泉、もう戻ってきたのか?もっと親元でゆっくりしてくればよかったのに。」と何故泉が早く戻ってきたのか理解できなかった。
泉は、「親とは、年末年始過ごせば充分よ。それより、私は亮太とゆっくり過ごしたいから早く戻ってきたのよ。」とその理由を説明した。
その後、泉は亮太と水入らずで過ごした。
やがて正月休みも終わり、啓子やあかりも親元から戻ってきて大学の授業も再開された。
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久しぶりにみんなと再会して色々と雑談していた。
その後、みんなと授業に参加した亮太は、一般教養の授業中、「相変わらずつまらない授業だな。出席カードは提出したので、授業をボイコットしてどこかに遊びにいこうよ。」と誘った。
啓子は、「面白そうね。教室を抜け出そうよ。」と初めての経験にワクワクしていた。
あかりは、「陽子さんと一緒にいると、悪の道に誘い込まれそうだわ・・・」と亮太の本性は男性だと感じた。
亮太が、教科書やノートなどをカバンに入れて教室を抜け出す準備をしていた。
あかりが、「本当に抜け出す気?それはダメよ。」と呆れて止めた。
「だから、そう言っているじゃないか。何がダメなんだ。あかりは頭が堅いな。もっと臨機応変に対応しないと嫌われるぞ。」と最初に亮太が席を立った。
啓子も、「私も行くわ。」と教科書などをカバンに入れて亮太についていった。
あかりは、「ちょっと待ってよ。本当に行くの?」とあかりも教科書などをカバンに入れて遅れて教室を出た。
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教室を抜けて学生のたまり場に行くと泉がたばこを吸っていた。
亮太が、「泉、お前、いつからたばこ吸うようになったんだ?」と声を掛けた。
泉は、「えっ!?まだ授業中じゃないの?何故ここにいるの?」と慌てた。
啓子が、「陽子さんから授業を抜け出そうと誘われてついてきました。」と授業中であるにも関わらず、ここにいる理由を説明した。
泉は、「ちょっと陽子ちゃん!二人に変な事を教えないで!」と怒った。
亮太が、「何故そんなに怒っているのだ?隠れてたばこ吸っている所を見つかったからと八つ当たりするなよ。」と泉の秘密を知ってしまったと笑った。
啓子が、「ところで授業をさぼってどうするのよ。」と何か目的があるのかと考えていた。
亮太が、「どこかに遊びに行こうよ。」と誘った。
啓子が、「先日スカイツリーに行ったから、今日は東京タワーに行こうよ。」と提案した。
亮太は、「泉、たばこ吸ってないで行くぞ。」と泉も連れて行った。
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東京タワーの展望台に登り、望遠鏡で都内の様子を見てはしゃいでいると男性五人に声をかけられた。
亮太は、またナンパかと思い、男性グループを見ると、松崎隼人がいた。
亮太は、「あら、口先だけで、ろくすっぽスキーができない松崎さんじゃないですか。」と笑った。
隼人は、「あっ!お前は。」と驚いた。
啓子が、「陽子さんに上級者コースに連れていかれて大丈夫でしたか?」と笑っていた。
隼人が、「立ち話も何ですから、喫茶店にでもはいりませんか?」と上級者コースでの話題は都合が悪いので、話題を変えて亮太達を誘った。
亮太は、話をするだけならいいだろうと考えて、隼人達と喫茶店に入った。
隼人は、「しかし、陽子さんはスキーが上手なのですね。」とスキーの話はあまりしたくありませんでしたが、共通の話題で切り出した。
啓子が、「陽子さんのスキーの腕前はプロ級らしいわよ。」と雑談を始めた。
隼人は、「ああ、それは俺も認めるよ。あのコブコブの斜面を、ジャンプも含めてあんなにスムーズに滑れるとは驚いよ。」と亮太のスキーの腕前に感心していた。
亮太は、「あのような場所では、滑るというかつま先で滑っている感じだよ。」と感想を述べた。
あかりが、「それじゃ、前に重心を傾ければいいの?」と先日のスキーの感覚を思い出していた。
亮太は、「スキー場で教えたボーゲンを思い出してみろよ。後ろに重心があると曲がれないだろう。前に重心を傾けるが、前にこけると足を痛めるよ。こける時は意識的に山側にこけるようにするんだよ。間違っても谷側にはこけないようにしないと、そのまま転がっていく事があるよ。」と忠告した。
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隼人は、スキーの話題だと亮太が主導権を握り、自分達が主導権を握れないので話題を変えようとした。
隼人は、「皆さんは、休みの日は何をして過ごされていますか?何か趣味でもあるのですか?」と普段の様子を知りたそうでした。
あかりは、「学生の本分は勉強だから、勉強しているわ。」と学生はなにをするべきなのかを考えていた。
亮太は、「あかりは真面目やな。そんな硬物だと男が寄りつかなくなるぞ。松崎達男性グループが一歩引いているのがわからないのか?」と呆れた。
啓子が、「そうよ。勉強ばかりしていると、あっという間にお婆ちゃんになっちゃうわよ。勉強しなくても、陽子さんから試験で良い点をとる要領を教えてもらったでしょう。」と自分がさぼりたいので亮太に同調した。
隼人が、「そんな方法があるのですか?」とその方法を知りたそうでした。
啓子がその方法を説明すると隼人が、「ああ、それなら俺も聞いた事がある。」とその方法に納得していた。
亮太は、「あかり、何事も要領が大事だよ。大学で良い成績をとってどうするのだ?会社に就職しても要領が悪ければ、碌な仕事はできへんぞ。」とあかりを説得した。
隼人が、「先ほどから聞いていると陽子さん、美人なのに男性みたいな喋り方ですね。」と亮太は男っぽいと感じている様子でした。
啓子が、「陽子さんは、言葉づかいだけではなく喧嘩も強いのよ。以前泉さんが不良グループに絡まれた時、陽子さんがその不良グループを撃退したのよ。」と亮太が男っぽいのは言葉づかいだけではないと説明した。
隼人は、「スキーの滑りを見ると、陽子さんは運動神経が良さそうなのでわかるよ。」と不良グループを撃退した事を納得していた。
男性グループの一人が、「松崎、お前、陽子さんの事を気にいったようだな。でも陽子さんと結婚して浮気すれば怖いぞ。」と笑っていた。
亮太が、「怖くないわよ。」と俺は男とは結婚しないよと思っていた。
隼人は、「怖いよ。ボコボコにやられるよ。」とこんな女と結婚する男はいないだろうと思っていた。
亮太が、「何でそんな話になるのだ!おい、帰るぞ。」と席を立ち喫茶店を出ようとした。
啓子が、「そんなに慌てなくてもいいじゃないの。もっとゆっくりしようよ。」と亮太を止めた。
亮太は、「じゃ、啓子だけ残れ。喫茶店なんて、どこにでもあるだろう。東京タワーにまで来て、喫茶店でゆっくりしなくてもいいだろう。俺は帰るぞ。」と喫茶店を出た。
啓子とあかりと泉が、「ちょっと待ってよ。」と亮太を追った。
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残った隼人達男五人で雑談していた。
「やはり、あのグループのリーダーは陽子さんのようだな。可愛い啓子ちゃんをゲットするには陽子さんを味方にする必要があるな。」と啓子と友達になりたい様子でした。
「いや、陽子さんは泉さんに頭が上がらない様子だったぞ。」と泉がリーダーだと反論した。
「陽子さんは実行力があるが、泉さんは冷静に色んなことを判断していたぞ。あのグループの参謀じゃないか?」と全員で色々考えていた。
結局、泉を味方にすれば陽子を説得してくれるという結論に達した。
「さっそく作戦開始だ。泉さんと友達になろう。」と提案した。
「所で、泉さんの連絡先は?試験の話をしていたから学生のようだが、どこの大学だ?」と考えていた。
結局名前しか聞いてなくて、誰も連絡先を聞いてなかった。
隼人が、「あのグループの誰かを見かけたら、尾行して調べよう。」と提案した。
「ストーカーと間違われて通報されたらどうする?普通に声をかければ問題ないだろう。」と反論して全員納得して解散した。
次回投稿予定日は、3月2日を予定しています。