第五章 スキーツアー
亮太は前期試験も終わり、泉とあかりの協力で、なんとか大学生活を送っていた。
そんなある日、啓子が、「冬休みは正月前にどこかに旅行しない?」と提案した。
亮太は、「旅行か。冬は寒いから、温泉かスキー旅行などはどうだ?」と啓子の提案に乗り気でした。
あかりが、「スキー場に温泉は捜せばあると思うわよ。日中はスキーを楽しみ、夜には温泉とか、どこかに飲みに行くのもいいと思うわよ。」とあかりも乗り気でしたが、亮太と温泉は考えられず、スキーを強調した。
啓子が、「それじゃ、どこかのツアーに申し込もうよ。」と具体的に考えていた。
亮太は、「ツアーだと時間に縛られるよ。周遊券でも買って、どこかの民宿を予約して自由に楽しもうよ。」と自分達だけで自由にしたい様子でした。
そこへ泉が来て、「スキー場の近くの民宿なんて、早くから予約しないと満員よ。冬はスキーツアーも多いから、添乗員は、学生アルバイトの場合もあるわよ。添乗員や他のスキー客と楽しく過ごせばどうかしら。」と亮太の提案は今更無理だと忠告した。
亮太は、「そうか、それじゃ、今年はスキーツアーに申し込み、楽しければ来年はツアーではなく自分達で適当に予約して行こう。みんなでツアーのパンフレットを入手して検討しよう。泉も一緒に行こうよ。」と全員で調べる事にした。
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一週間後、それぞれ、スキーツアーのパンフレットを持ち寄り、泉と亮太がルームシェアーしている部屋に集まった。
啓子が、「スキー場では赤倉という名前を聞いた事があるからここはどうかしら?」と提案した。
泉が、「失礼ですが啓子さん、スキーの経験は?」と確認した。
啓子は、「ないけれども何故?」と不思議そうでした。
泉は、「私は何度かスキーに行った事あるけれども、赤倉は初心者向けじゃないわよ。初心者には、栂池スキー場などが適していると思うわよ。」と忠告した。
あかりは、「そうか、泉さんはスキーの経験があるのね。経験者の意見を尊重して、最初は栂池にしましょう。」と経験者の忠告に従った。
特に反対意見もなかったので、場所は栂池に決まった。
啓子が、「それじゃ、栂池のスキーツアーに申し込みましょうか?」と同意を求めた。
亮太が、「その前に、みんな、スキーウエアとかスキー板などの道具は持っているのか?」と確認した。
啓子が、「今度の週末、皆で買いにいきましょう。」と積極的でした。
泉が、「皆さん、今後スキーを続けるかどうかわからないから、最初は貸しスキーにしてはどうかしら?高い買い物だから。」と提案した。
亮太が、「自分の足に合った大きさの靴があればいいが、なければどうするんや?ごそごそのスキー靴で滑るのか?」と確認した。
啓子が、「その時は、何かを靴につめれば何とかなるわよ。」と道具は買わずにスキーウエアだけ準備しようとしていた。
亮太は、「最初だから、そんなに激しく動かないだろうから、途中で靴が脱げることはないだろう。それで行こうか。」と諦めた。
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週末、みんなでスキーウエアを買いにいった。
啓子とあかりがスキーウエアを買うと、「泉さんと陽子さんは買わないの?」と不思議そうでした。
二人ともスキーの経験があり、道具は一式持っているとの事でした。
泉は啓子もいるので小さな声で、「亮太のサイズのスキーウエアは、今の体に合うの?」と確認した。
亮太は、「先日確認して合わなかったので、俺がいつも行っている店で買ってきた。いつものように泉と行こうと思っていたが、まさか皆と行く事になるとはな。」とすでに購入していると説明した。
泉が、「いつものあの店ね。」と亮太には、色々とこだわりがあると感じた。
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冬休みには四人で、泉が選んだ栂池のスキーツアーに参加した。
あかりが、「なぜ、このツアーにしたの?何か理由があるの?」と他のツアーとの違いを聞いた。
泉は、「宿の問題よ。他のツアーは宿がスキー場の近くではないわ。毎朝、ツアーのバスでスキー場まで行くのだと思うわよ。貸しスキーはスキー場の近くにあるから、毎朝、スキー板などを借りて、夕方に返す事になるのよ。面倒でしょう?」とその理由を説明した。
あかりが、「それでも、そのようなツアーに申し込む人がいるのは何か理由があると思うわよ。」と考えていた。
泉が、「さすがあかりさん、鋭いわね。毎日、ツアーのバスでスキー場に行く時に、ツアー客の要望で、今日は別のスキー場に行こうと、ツアーの添乗員に頼むと、いろんなスキー場に行けるから、それを期待しているのかもしれないわね。」と予想した。
夜行のスキーツアーバスで現地に到着すると、荷物を部屋に置いて貸しスキーを借りに行った。
啓子が、「どの程度の長さが良いのかしら?」と悩んでいる様子でした。
亮太が、「自分の身長を目安にすればいいよ。」と助言した。
その後、スキー場に到着すると、新雪に慣れないあかりと啓子が転倒して、「起こして。」と手を出した。
亮太は、「自分で立てないと、滑っている時に転倒したら、どうやって立つのだ?」と立つ練習から始めようとした。
啓子が、「わかったわよ。」と手をついて立とうとしたが、腕が新雪にめり込んで、全く立てなかった。
啓子が、「立てない、助けて。」と亮太に助けを求めた。
亮太は、「ストックを使えば立てるよ。」と亮太も横になり、ストックをついて立ちあがり、見本を見せた。
あかりは、「立てた。」と喜んでいた。
亮太は、「啓子も頑張って。」と励まして、なんとか啓子も立てた。
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泉が、「それじゃ、行きましょうか。」と声かけすると、啓子がスキー場と反対側に滑っていった。
亮太が、「啓子、どこに行くのだ?」とその理由はわかっていたので笑っていた。
啓子は、「そんなの、私も知らないわよ。」と止まるまで待つしかないかと諦めていた。
やがて啓子は草村に突っ込み止まった。
亮太は、「啓子、向きを変えてスキー場に行くぞ。」と啓子を引っ張って行こうとした。
啓子は、「下り坂ではなく、どちらかといえばゆるやかな登りなのに、どうやって行くのよ。スキーを脱いで歩いていくの?」と不思議そうでした。
泉が、「スキーを履いていても雪道を登れるわよ。このような場所ではハの字登行が向いているわね。」とハの字登行について教えながら向かった。
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啓子とあかりのぎこちない様子を見て、男性五人が声をかけた。
亮太はナンパかと思った。
男性グループのリーダー格の松崎隼人が、「スキーは初めてですか?ここは人が多いので、リフトで山の上に行きませんか?そこで色々と教えてあげますよ。」と下心見え見えで、声を掛けた。
あかりは、「山の上まで行って、降りてこられるかしら?」と心配していた。
亮太は、「それじゃ、私が一緒に山の上まで行くわ。泉、啓子とあかりを頼んだわよ。」と亮太は得意そうな隼人の鼻をへし折ってやろうと思っていた。
亮太が男性達とリフトに乗ると啓子が、「陽子さん、大丈夫かしら?」と心配していた。
泉は、「大丈夫よ。陽子ちゃんは男性達をからかうつもりのようね。陽子ちゃんのスキーの腕前はプロ級よ。」と啓子とあかりを安心させた。
亮太は隼人達とリフトを乗り継いで山頂に到着した。
隼人達は、亮太を怖がらせて抱きつかせようとニヤニヤしていた。
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亮太は、コブコブ斜面の上に行くと、「見本見せて。」と笑った。
隼人は、まだ怖がらないな、時間の問題だろうと思っていた。
男性グループの一人が、見本見せてと催促されて滑り始めた。
コブコブの急斜面は滑るのは困難で、よろよろして転倒した。
亮太は、「スキーを教えてくれると言っていましたが、よろよろと滑って転ぶ方法でも教えて頂けるのかしら?」と笑った。
隼人は、「ここは上級者コースだ。簡単に滑れないぜ。滑ってみればわかるよ。」と実際に滑らせれば怖がるだろうと期待した。
亮太は、「簡単に滑れないのは、へたくそだからよ。」と馬鹿にして、滑りはじめた。
亮太は、上級者コースをスムーズに滑り、転倒している男性を、コブを利用してジャンプして飛び越えて滑っていった。
隼人は、滑って行く亮太の様子を見て唖然としていた。
亮太は。泉達の所まで滑ってきた。
泉が亮太に気付いて、「ほら、陽子ちゃんが戻っていたわよ。」と指さして教えた。
啓子が、「ウワー、陽子さん、スキーが上手ね。教えて。」と亮太の滑りを見て感動していた。
あかりは、「あの男性達はどうしたの?」と男性達がいないので心配していた。
亮太は、「教えてやるだなんてでかい事を言っていたので、上級者コースに連れて行くと碌素っぽ滑れなかったわ。そのうち降りてくるでしょう。」と男性達の事は気にしていない様子でした。
啓子は、「陽子さん、上級者コースを滑れるだなんて凄い。」と感動した。
その後、啓子やあかりは亮太にスキーを教わり、スキー板をハの字に開いて曲がるボーゲンで曲がれるまでになり、スキーを楽しみ今回のスキーツアーは終わった。
次回投稿予定日は、2月28日を予定しています。