第8話 〜魔力について学びました〜
あれから2日経ち、無事に修行を受けることになった。目覚めた時に俺がキッスしようとした天使ちゃんはすぐに帰ってしまった、、今度謝らねば。どうやら以前アンナお姉様が言ってた神魔法とやらで治してくれたらしいが、一体なんなんだ?
とりあえず、今俺はゼンの爺さんと魔法の座学中である。
「さて、まず魔法を教えるにあたってお前はどこまで魔法について把握しているんだ?」
「えーっと、属性が火・水・風・土の四つ」
「うむ。それで?」
なに、それで?だと、、それ以上は何も知らんぞ、、、
「なんだ、それしか知らんのか」
ええ、日本の温室育ちの英雄君です。
「仕方ない、ここから教えにゃならんとは。いいか?属性は今お前が言った四つになるが、魔物と人間が使う属性は例えば同じ火属性だったとしても別物だぞ」
「え、そうなんですか?」
ゼンがガックリと肩を落とす。
「一緒なわけがないだろうが、、お前魔法発動の起源、、、元がなんなのか知っとるか?」
魔法発動の起源か、大体は魔力とかMPとかそういうもんだよな。あとは外に流れてる魔法エネルギーを集めて魔法を行使するとかいうのもあったっけ?
「自分の魔力とかですか?」
「魔力??うーむまあそうとも言えるが、根本的には違うな。じゃあ魔物は何から生まれるかは知っとるだろ?」
ん?そういやその事についてアンナお姉様が言っていたな確か魂だっけか?
「悪なる魂でしたっけ?」
「まあそうだな。生物の負の心の集合体みたいなものだ。そして我々の使う魔法とは魔物が使っている技を真似したに過ぎない」
なに?魔物が魔法を使うのか、今まで魔物が魔法を使うのを見ていないのはたまたまだったのか?
「お前、魔物がわざわざ詠唱をして魔法を使うとでも?彼らは何も言わずともバンバン魔法を使ってきよるよ」
「マジで?圧倒的不利じゃないですか。でもそうなると魔法の元になるのは魂?魔物が悪なる魂の集合体と言っていましたし」
「ほう。なかなか察しは良いようだな。ほぼ正解だ。魔法とは己の心、信じる心から生まれる」
なんだその酷く曖昧な条件、信じる心ってなんだよ精神力とかじゃないのか。
「いまいちピンと来てないという顔だな。よし少し魔法を行使する練習をしてみるか」
そう言ってゼンが杖を差し出した。普通の木を削った感じの杖だな。タクトではなく長いやつ。
「いいか。魔法を使うにあたって必ず必要なのは媒体だ。それがなくては我々は魔法を行使することが出来ない。理由は分かるか?」
「いや、分かりません」
「うむ。それは我々の心は普通表に出てこないからだ。だからあるものを媒介にしないと魔法を具現化させることが出来ん」
「あるものとは一体?」
「魔物の核だ」
魔物の核?そんなものあったか?
いや、スライムの時はアンナお姉様がバラバラに砕いちゃったから一緒に砕け散ったのか。
「お前が知ってるかは分からんが魔物には必ず核と言うものが存在する。核は魔物を倒すとそれ以外が煙になって消えてしまうため唯一の討伐証明となる。そしてそれをギルドが買い取り、武器屋に流れ、その後武器に融合させる」
ほう。討伐証明は核になるのか。確かに倒したら煙になってしまうと知った時に討伐証明に関しては疑問に思っていたんだ。
「まあまずは試しに自分の中にある心を見つけることからだな。じゃないといつまで経っても魔法は使えんよ」
手に握られた杖を見てみる。己を信じる心って言ったってどう使えばいいんだ?
「よし。まずは自分自身を見つめ直すことからだ。お前は誰だ?何故魔法の力を欲する?」
俺は沖田英雄。魔法の力を欲する理由は、、カッコイイからか?んー、、
「イマイチ掴みきれてないようだな。もっと具体的に考えてみろ。お前はスライムにすらコテンパンにやられたようだな。情けないと思わんか?」
そうだ。確かに、スライムにすら勝てないとは情けない。とするとそうか。俺はアイツらを倒すために魔法を使いたいんだな。
具体的なイメージが固まった途端、身体の中に今まで感じたことの無いような感覚を感じた。
「お、ようやく掴めたようだな。それがお前の心、言い換えれば魔力だ。次はそれを魔法に変えなければいけない。まずはその武器に含まれている魔物の核とお前の心を同調させるんだ。今感じている感覚を物体として捉え、杖に流し込み自分の一部として同調させるイメージだ」
いきなり無理難題来たなこれ。
感覚を物として捉えるとかどういうことだ、何となく自分の奥の中に何かはあるんだが、どうしても"有る"という感覚でしかないんだよな。
「いいか?今お前が感じているものを感覚として捉えるな。実際にあるものと考えろ。血液と一緒だ。それを引っ張りだせ」
なんという無理難題だよ。血液引っ張りだせねえし、とりあえず物体として考える。魔力は心だからとりあえず心臓辺りにあると考えるか。そこに魔力の塊が、、おっ!なんかほんのり胸のあたりに今まで感じていた感覚が塊になっていくイメージがある。
「おお、だだ漏れになっていた魔力が一つにまとまってきたな。そうだまずは1ヶ所に集めてそこから引っ張りだすことを意識しろ」
よし。なんとなく塊のイメージは掴めたから、ここから全身に伸ばしていく、、だめだ!伸ばそうとするとイメージが曖昧になって一気に塊ごと消えてしまう。
「まずはそこからだな。常に自分の1ヶ所に魔力を集めることを意識しろ。でないと無意識のまま垂れ流しになって魔物を呼び寄せる。先程の魔法の種類についてはお前が魔法を使えるようになったら改めて話すとしよう」