第7話 〜どうやら助かりました〜
どこだ、ここは。何も見えない暗闇の中ひたすら歩き続けた。俺はあの時突然体を吹き飛ばされてそこから記憶が無い。恐らく死んでしまったのだろう。さて、異世界から来た人間はこっちで死んだらどうなってしまうんだろう。
「死んでないよ」
「誰だ?」
突然どこからか声が聞こえる。おそらく少女なのだろう。少し無邪気な声だった。
「私の声が聞こえるのね。珍しい」
「君は誰なんだ?」
「それは言えないわね。もっとも今の時点では何者でもないという理由もあるけど」
「どういうことだ?それに死んでないとは?」
「そのまんまの意味よ。あなたはまだ死んでいないわ。もうじき目が覚めるはず」
なんと、死んでいなかったのか。では、この声の正体は一体?
「ふふっ。一体誰かしらね?いつか分かる日が来るかもしれないわね。そうなったら私は嬉しいけれど、あなたは悲しむことになるかもしれないわね」
「どういうこ「ほら、もう意識が覚醒するわよ。またね。英雄。わたしのえいゆう。」」
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「あっ!目が覚めましたか。おはようございます。ヒデオさん」
どうやらまだ夢の中らしい。だってほら目の前にこんな可愛い天使がいるもの。なんだろうすごく顔が近いな。もしかしてそういうことなの?キッスをしたら目が覚めるとか素敵な特典なのか、、?よしここは男英雄、いざ参ります。
「きゃ!なにキスしようとしてるんですか!変態!!」バッシーン
はっ!痛い。ほっぺたが、俺の心が、とてつもなく痛い。夢じゃなかったのか。夢であって欲しかった、だってこんな可愛い女の子にビンタされるとかごほう、、いや失礼。心が痛むぜ、、。
「と、に、か、く。無事目が覚めて良かったです。あなた2日間も寝たきりだったんですからね?とりあえず、ゼンさんを呼んでくるのでここで安静にしていてください」
「はーい」
もちろん。可愛い女の子のお願いだ。安静にしているに決まっているじゃないか。というか、ん?ゼンさん?誰だ?
「目が覚めたか」
声の方向に目を向けると、いかにも達人チックなお爺さんがこちらを見ていた。というか、白髪でひっつめ髪の爺さんとか初めて見たぜ。しかもすげえ似合ってるし。なんなのカッコイイ。惚れる。
「ふむ。なんだかとても気色の悪いことを考えられてる気がするな。初めましてだな。ワシはアンナの師匠のゼンだ」
なんと。お師匠様でしたか。
「あの、アンナさんは無事だったのですか!?」
「心配するな。エルダーウルフに襲われたようじゃが、そんなのに負ける弟子ではない。お主も無事で良かったじゃないか。あいつはもう既にここを発ってしまったよ」
そうなのか。もうお姉様を見れないのは残念だが無事ならよかった。それならそうとやることは決まっている。
「あの、一つお願いが」
「、、、魔法を教わりたいそうだな」
「何故それを」
「アンナが言っていたんだ。まあ聞けばスライムにいいように遊ばれておったらしいじゃないか。情けないから鍛えてやってくれだとよ」
なんと。あの時は厳しい言葉をかけてくださったお姉様がこんなところで優しさを見せるとは。ツンデレ属性。ありがとうございます。
「うむ。アンナがいたら凍結させられそうな顔をしているの」
無事魔法の修行を受けられそうです。