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バンドマンの恋

今は 唄が 良ければ


ほんのちょっと

顔が田舎くさくても


そこそこ

活ける時代




十数年前



バンドブームだった頃




ちょっと可愛い

恋物語があった





バンドブームの時代


やたら

ルックス重視バンドが

多かった



唄が上手い



楽器が上手いより



見栄えで人気なんてのもね



完璧にコピーバンドでも

なかなかのものだった




多分 成り切る自信が

そう 見せたのかも

しれないけど




それでも

弾けない楽器を背負い


指先が痛くなっても

上手くなりたくて

懸命に練習したものだ





バンドマンはモテる



動機は かなり不純



私も その一人です




友人が作ったバンドのベースが抜け


まったく楽器を触った事のない私が代役に



ふたつ返事で

バンドマンになりました




私のバンドは

バンドと呼べたか

微妙ですが




一応

ライブなんてものも

やりました





そんな中



ライブで一緒になった

バンドと

合同で練習をした時





どぉ見ても

バンドマンに見えない

男の子が居た




ガッシリとした体に

野球部員と言うより

柔道の主将の様な




ちょっと不細工だったかな




でも

やたらキーボードは

上手だった





ピアノを習っていたらしい






練習と言っても

ただ

ワイワイしゃべったり



ギターが大袈裟な

パフォーマンスを

バカ気で やってみたり



ごちゃごちゃと





隅っこで

キーボードだけが

何か弾いていた




多分 作曲してたんだろう



しきりに

譜面用の紙に

書き込みながら



夢中で弾いていた






そんな事とは

知らずに


大騒ぎしている

他のメンバーがいる中




たった一人


キーボードに

耳を傾けていた

女の子がいた





その娘は

他のバンドからも

人気がある程




綺麗な女だった




本格的にバンドに参加するタイプでは

なかったけど




舞台の上では


高校生でありながら



色気もあり

見栄えが

とにかくいい






その娘も


最初から

からかうつもりもなく





ただ

本当に


キーボードを楽しそうに

奏でる男の子に

吸い寄せられる様に






『上手いね』と

声を掛けた





興味が

あっただけかもしれないが


彼女は 素直に

尊敬の意を表した







男の子は



その時



恋に落ちた……が




残念な事に

彼は

今まで

女性と話す会話を

学んでおらず




とても



恋に 臆病だった






まさか…



こんな綺麗な女性と…




無理だ…




そぉ あきらめて





彼女は とても

スマートな恋をする




素直に

そのキーボードの彼に

接しているのだが



どぉも

彼の方が

いまいちな態度ばかり




彼女は

そんな奥手な所も


また惹かれていたのかも

しれない






数週間後



スタジオの時間が

ちょうど 重なり




バンドのメンバー達と

街中を

ブラブラする事になった




相変わらず

横で歩く彼女の顔を見ずに


うつむいて

歩く彼





彼の心の中では





まだ


半信半疑と

戦っている様だ





LIVE用の小物を買おうと



小さな雑貨屋に

入った時




なんとなく

食器を見ていた彼が




ひとつのコーヒーカップを

手にして

眺めていると




彼女は

そのコーヒーカップと

色違いのカップを

手に持ち





『お揃いで買おうよ』と

解りやすい


告白をした





レジに

ふたつのカップが並び


同じ袋に収まったが



彼は支払いを済ませると





袋ごと



ふたつのカップを

彼女に持たせたまま…





彼は

それから

悩み続けた





どうして

彼女が

自分を

選んだのかを




自分の不甲斐なさに


溜息だけが

溢れてくる





そんな

彼を見て


また

彼女も

悩んだ




美女と野獣の様に






そして

答えを出したのは




やはり

彼女の方で




『ごめんね』と

呟いて


泣いた







それから

彼女は

好んで黒い服を着て




あまり


笑わなくなった



後悔を始めた彼が

恋多き仲間の

沢山のアドバイスを聞いて



少しづつ

前向きになり


自分の容姿に

こだわっていた事を

悔いながら




彼女の為に

曲を作った





しかし


もぉ

彼女が振り向く事は

なかった






それでも

一途に彼女を想い


傷つけた事を

償う様に


必死で曲を作り



勇気を出して


何度も

彼女に声を掛ける

努力をした





見守る方が

痛々しくなる程






そんな時


彼は仲間に言った




『つきあえなくてもいい

彼女に白い服を着て欲しい』と





貧乏な学生バンド



とてもLIVE会場を

押さえる余裕もなく




少し 大きめの

スタジオを貸し切り


そこで

LIVEを開催した



[入場無料]

学生バンドには

かなり キツイ





噂を聞き付けた

他のバンド仲間が

実費でLIVEに参加し


会場代と入場代を

補佐した





入場条件は…


[白い服]




チラシも宣伝もなく


口コミだけで

会場は

白い服の客で

埋めつくされた




ドリンクなし

舞台なしのLIVE




[やるだけの価値がある]


誰もが

そんな気持ちだったと

思う




薄暗いスタジオに

白い服が

踊る




ボランティア参加の

バンドも

なんとなく

いつものLIVEより


楽しそうで





入れ代わり

立ち代わり


客が出たり

入ったり




たった数時間の枠の中で


自由気ままな

時が流れ



彼のバンドが

トリを飾っている時





壁に寄り添って



白い服を着た



彼女の姿を



ボーカルが見つけた




ボーカルはバンド仲間に

合図を贈るが

キーボードの彼は

気付かない




アンプから引かれる

コードを引き擦りながら

ギターが

キーボードの所まで

下がって


彼に合図を贈る






白い服の波を

食い入る様に

必死に探す彼





なかなか見つけられず

気だけが 焦る





彼女も

なんとなく

隠れてしまって



姿を見せずに







そのまま

簡単なMCが入り



仲間達は

楽器を置いた




キーボードと

ボーカルだけの

バラードが流れ





彼女の為に作った曲が

愛を奏でた





まだ 彼女の顔を

見る事が出来ない彼が


うつむいたて

弾いている







演奏が終わり


静まりかえった会場で



彼が

顔を上げた時





彼の目に

映ったのは








 コーヒーカップだった








不器用な男の

ちょっと可愛い

恋物語


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