予測できた再会
どうも、皆さん最近アニメとか見てますか?
自分は暇がある時に、一括で見るタイプなのですが、ここいらは溜まる一方で中々消費出来ていません。
少しずつでも進めていきたい自分です。
教室内での顔合わせも一通り終わり、後は担任の教師が来るのを待つだけ。各々の席に座った生徒たちは、近くに座る人同士で、親睦を深め合っている。
透徹たちも、彼を中心に様々な美少女たちと会話を広げていた。
「麗莉と乃愛は似たもの同士だな」
「麗莉とは長い付き合いだけれど、こんなに人に慣れるのが早いのは始めてよ。特に透徹、貴方に対してはね」
「ち、ちょっと聖那ちゃん! そんなことはないですっ!」
「リリたん、ちょっと照れてるねぇ」
恥ずかしがり屋だという麗莉と乃愛を、いじる透徹、聖那と永遠。麗莉が即座に反論をするが、顔を赤くして耳をピクピクさせている様子を見ると、あながち間違いでもないらしい。
詩音が口元をピクピクさせて、念仏のように何かをブツブツ唱えている。
「……私は違う。必要最低限のことだけを喋っているだけ」
「はぁ、この子は昔からこうなのです。最低限のことしか口に出さないので、勘違いされる機会が多くて……。本人には悪気はありませんので、ご理解いただければと思います」
「なるほど、乃愛さんは無口キャラなのですね! この集団は本当に個性が強くて面白いです!」
主人の叶が、侍女のことを悪く思わないで欲しいと庇う。透徹は小さい頃に何度も接したことがあるために、二人の性格というのを知っているが、他の生徒は知るはずもない。再び詩音が透徹を睨みながら何故か頬を膨らませている。
一方、ティナは相変わらずのキャラであるが、彼女の一言に皆が賛同するのと同時にもう一つの共通した思いを抱く。
(ティナが一番キャラ濃いやん!)
「……ハッ! 何か今、おいらの枠が奪われそうな気がしたぞ!」
「何言ってんのお前」
教室内の隅で、突然そんなことを言い出した坊主頭でそばかすとゲキマユを持ち、体型はふくよかな激ぽちゃ少年。彼の前に座って体を後ろに翻している男子生徒が冷静なツッコミを入れる。
こんな風に時間が緩やかに流れていくと、教室のドアがゆっくりと開かれる。どうやら、担任の教師が来たらしい。先程まで談笑に浸っていた透徹たちを始め、体を前に向け止めて教師が黒板の前まで歩いてくるのをじっと見守った。
「うーし、皆着席して静かにしてるなー偉いぞー」
上下黒のジャージにサンダルというあまりにもラフな格好。猫背で教室に入ってきて挙句には欠伸までする始末。目の下にクマがある不健康そうな男性が、かったるそうにAクラスの面々に棒読みで語りかける。
「ふわぁ〜。……ん? この前の席から二つ空いているじゃないか。どうした、トイレでも行ってんのか?」
恐らく教師であろう男が、埋まっていない席のことを指摘する。確かに、誰も座っていない。すぐに人数を確認してみると、やはりこの場には十六人しかいない。
今年の特進科Aクラスの合格者は十八人のはずであり、この二席、しかも前列にある席が余分なものではないということが分かる。しかし、思い返してみても誰もそこに座った記憶はなく、常に人の気配を探りがちな透徹も、その当たりには人はいなかったと断言出来る。
教卓の上でぐだる男の言うように、トイレで遅れているのだろうか。しかし、入学式が終わってここに移動するまでに集まっていた人数も思い出してみると十五人。余分な一人は気配遮断が得意な永遠であるが、残りの二人は一度も目にしていないし、感知もしていない。
「もしかして、入学早々に遅刻かー? ったく、大層なご身分なこって」
一人で愚痴る男。自分の世界に飛んでいた彼だったが、皆の視線に気付き慌てて現実へ帰ってくる。
「すまんすまん、いきなり面倒そうなことが起きたんでな。ちょっと気分が落ち込んじまってたわ」
潔く開き直って、男はその場を誤魔化す。
「んじゃ、仕切り直して。俺は新山修輔だ。今はここで生徒を教える立場にいるが、まぁ、特殊技能隊で燻っていただけだ。一年間よろしくな」
軽く自己紹介をしたが、生徒たちはある一部分のワードが聞こえたことで、それまでどこの浮浪者かと思えるくらいの装いをしている男のことが信じられなくなる。目を見開いて口を開けて驚いている者もいた。
「ん? どうしたお前ら? こんな格好してる奴がまさかとか思ってるのか?」
ニヤニヤしながら、聞いてくる担任教師の修輔に、一同は腹が立ったが、まさかと思ったのは図星。
皆が反応したのは「特殊技能隊」というワード。これは、途轍もない訓練と実戦が絶えず、命の駆け引きが行われるような危険な仕事。国の自衛を目的とした組織で、主に能力関係での大きなトラブルがあった際に活動をする。また、彼らの存在が国家間での力の象徴と呼ばれ、生半可な実力ではここに入ることはおろか、続けることなど不可能である。それ程に過酷な仕事だ。それ故に、人々からの憧れの眼差しが注がれ、給料も良くステータスとしては最高のものだ。
そんな誰もが尊敬する国の象徴が今目の前にいる。彼の言っていることには根拠が無いのだが、この祥奏院学園特進科Aクラスの担任をする程の人材と考えれば、信じられるものかもしれない。
間違っても、修輔の言うような「燻る」という表現で収まるような職ではない。特殊技能隊に入るためだけに、人生を賭してそれでもダメという人間もいる程には。
修輔が生徒たちをからかって楽しんでいると、教室のドアが再び開かれる。入ってきたのは男女が二人、両人とも淀みのない白髪を揺らしている。
「初日から重役出勤とはどんな大物が来るかと思えば、超大物だったか。……はぁ、良いから早く空いている席に着け」
白髪の男女の顔を見て、すぐさま状況を理解した修輔。他の生徒からしてみれば、何故遅刻を咎めないのかと思うのが普通なのだが、ここは能力者たちが集う学び舎。二人の顔を見て、この場にいる者の全員に緊張が走る。
携えた白髪を一目見た瞬間に、この国で最も有名な名家であり、御三家の一つ、鏡一族なのだと理解が及ぶ程に知れ渡っている存在。
現当主の鏡玲瓏の、双子と言えばすぐに顔も思いつく。御三家クラスではないものの、名家の生まれである詩音たちも、夜会で何度か目にしたことはあるが、それでも彼らの迫力に押される。
兄の鏡無門と妹の澪月は、担任教師の顔を一瞥した後にクラスメイトの顔を見やる。順番に顔を見ていく中で、二人の視線が丁度真ん中の席辺りに固定される。
一瞬、目を見開いた双子だがすぐに次の顔に視線を移動させる。それも落ち着いたところで、再び担任教師の修輔に向かい合う。
「諸事情により遅れたとはいえ、お話しを遮ってしまい申し訳ありませんでした」
兄の無門が謝罪の言葉を口にすると、横に並んで立つ妹の澪月が「申し訳ありません」と復唱する。
「俺も忘れてたんだ、おあいこだよ」
頭をガシガシと掻きながら、修輔は再び席に着くようにと急かす。
その指示に従って、無門と澪月がそれぞれの席に腰を下ろす。
「これで全員揃ったなー? よし、んじゃあ軽くオリエンテーションを行う。あ、自己紹介は各自でやってくれよ。て言ってもさっきの自由時間で大体は終わらせられたかもしれんが、遅れてきた奴もいるんでな」
修輔はチラッと横目で双子を見るが、二人とも動じない。別に友人など作る必要が無い、と考えているのかはわからないが、反応を示さないならつまらないといった風に、すぐに話題の路線へ戻る。
「オリエンテーションと言っても、今ここでこの学園についての説明を少しと、施設案内をするくらいだ。それが終われば、今日はお開き、帰ってもいいからそれまでは大人しくな」
サラッと進めていく修輔。彼も、早めに終えて残った仕事に時間を充てたいらしく、若干急ぎ足で学園の簡単な説明をしていく。
「と言っても、あんまり説明をすることなんてないがな。基本的には一般的な中学校までにあったような校則だ。しかし、校内での能力行使は原則禁止。身の危険が迫った時の緊急用や、これから案内する訓練所での授業や自主訓練以外で確認されたら、ペナルティを食らう」
ここで言うペナルティは、反省文と校内の奉仕活動などの軽い罰から、停学処分まである。どれだけ軽いペナルティを受けたとしても、履歴として生徒の成績表に残ってしまうために、進学や就職に大きな影響を与えてしまう。責任感が無い、危険な奴という判断材料になってしまうからだ。それだけ、能力者社会というのは、反社会組織の存在もあり敏感なのだ。
「そして、この学園での試験についてだが、筆記試験と実技試験に行われる。どちらも学期末しかないが、それだけ質が高いってわけだ。日頃から勉強と鍛錬を怠っていれば、夏と冬の長期休暇を返上してほぼ毎日来てもらうことになる。それは俺も面倒くさいからマジで勘弁な」
自分たちはAクラスなのだ。あまりそれらについては心配はしていないが、クラスの面々は担任教師のやる気のなさに少し辟易としている。
「そして、夏の長期休暇が終わる九月には武闘会が行われる。まぁ、体育祭の延長線にあって、ちょっと体と体の本気のぶつかり合いがあるだけのお祭りだ」
武闘会の存在は知っているが、この男が言うと途端に軽いものに聞こえてしまう。実力者であるのは分かっているのだが、買うまでしてやる気の無さを見せられてしまうと、先程彼に抱いた憧れの感情も薄れてきてしまう。
「それが終わって冬休み近くになれば学園祭も開かれる。これは、ある意味武闘会よりもメチャクチャとだけ言っておこう。楽しみは取っておかないとな」
ニヤニヤしながら、イタズラ少年のように話し続ける。最初のやる気のなさはどこへやらである。
これには、流石の透徹もイラッときた。
「からかうのもさておき、口頭で済む説明は終わりだ。それじゃ今から施設を案内するから、皆廊下に出てくれ」
変わり身の速い男、新山修輔。早々に新入生たちの心には、こいつは面倒くさい奴と刻まれる。
「うちの担任、ハズレですかね?」
「いや、確かにウザいがあれでも特殊技能隊出身というから、実力は確かだろう。まぁ、教える才があるのかは分かりかねるがな」
小声で心境を呟くティナ。修輔は既に廊下に出ているために今の声を聞くことは無かったが、全員の意見を代弁したその言葉に首を縦に振っている。
それに対して透徹は、まだ決めつけるのは早計だろうと返すが、そうは言うものの彼にも自信が無い。
「おーい、お前ら早くしろよー。こっちは、パッとやってパッと終わりたいんだ」
「あの人、本当に先生なの!?」
思わず永遠がそんなことを滑らせてしまう。
「はぁ、しょうがないから行こうか」
重い腰であったが、仕方なしに廊下へ向かう透徹一行。一行というのは、透徹を始めとした女の子たち計八人のことだ。早くも仲良しグループのように一塊になって行動する透徹たちを、後ろから冷ややかな目で見つめる男女であった。
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