美少女たちとお知り合いに
明日投稿と書きましたが、ストックもあるので2話目投稿します!
醍醐味であるバトルはもう少し後になってしまいますが、お待ち頂ければと思います。
宜しくお願い致します!
(周りの生徒もこっちへ行ってるし……。方向は合ってるよな?)
冒頭でいきなりバレてしまった白髪美少年である鏡透徹の弱点。今日行われる能力者教育機関の「祥奏院学園」の入学式がある式場へ向かっている途中なのだが、彼は極度の方向音痴である。
まず、歩いている時に東西南北の判別がつかず感覚で歩いてしまうため、いつも目的地とは全くかけ離れた場所へ行ってしまう。
悪い癖だと同居人で使用人の東雲実から、何度も口を酸っぱくして言われているのだが、一向に治る気配は無い。というよりも、彼に治そうというつもりが無いためである。
事前にパンフレットなどを確認してくればいいだけの話なのであるが、そこに関してはルーズな透徹。今のように、周りについて行けば目的地に着くという軽い気持ちでいた。住んでいる家から学園までの距離は、非常に近いために迷うことは無かったが今後が危ぶまれる事態であった。
校内の敷地が広いために、歩く必要があるため、少し歩いていくとやがて異様に目に付くきらびやかな施設が見えてくる。端には「祥奏院学園入学式会場」と書かれた看板が立っていたので、目的地の式場だと確認する。
何とかして式場へ着いた透徹は、早速会場であるセレモニーホールへ入っていく。このセレモニーホールは普段使われることは無いのだが、今から行われる入学式や学園祭などのイベント行事で使用される以外には開放されることは無い。
維持費の無駄では? という声も上がることがあるのだが、生憎とその程度のお金の問題ならば余裕で賄える程度には潤っている能力者社会。それだけ、政府からこの学園への期待値は高いという訳だ。
そんなことは露知らず、次々と式場へ新入生が入っていく中で透徹もその流れに乗って受付を済ませていく。
「特進科の鏡透徹です」
自身の所属科と名前を受付の女性へ告げる透徹。それを聞いた彼女は、手元のパソコンでキーを叩き何かを調べている。
「はい、鏡透徹くんですね。確認出来ました、入学おめでとうございます」
そう言ってニッコリとこちらに笑顔を向ける受付。新入生の全員に対して、この笑顔を振りまいているのかはわからないが、きっと大変な仕事なのだろうと内心で思う透徹であった。
「ありがとうございます。それと聞きたいのですが、特進科の座る席は場内のどの辺りなんですか?」
事前情報を全く持ち合わせていない透徹であるが、同じような新入生は今までも多くいたのであろう。特に嫌な顔もされることなく、丁寧に位置を教えてもらった。
特進科は場内の前列の方に座るようにとのことを、その場で初めて知った透徹は早速その場へ向かう。前列に座るというだけで座席指定は無い旨を聞いた透徹は、席はガラガラであったのでなんとなく真ん中辺りの椅子に腰を掛ける。
どうやら、特進科の生徒はまだ来ていないようで椅子に座りながら少し足を伸ばしてリラックスを始める。
ここで特進科について説明をしていく。まず、その祥奏院学園には特進科と普通科の二つの二種類がある。特進科は一般の学校と同様に、本人の志望及び学校が認めた生徒である成績優秀者のみで構成されたクラスである。
新入生は毎年で二百人前後が集まる中、特進科クラスは定員二十人で構成され、残った新入生は三十人程の人数を計六クラスに分けて組まれる。
特進科はAクラスと呼ばれ、普通科はBからGクラスまで成り立つ。
特進科は完全に成績優秀者のみしか入ることを許されないために、一番目の印象があるAを名乗っているが、以下のBからGクラスに関しては成績順という訳ではなく単なる抽選で決められる。
そして、特進科と普通科の違いは成績だけではない。Aクラスとして入学できた生徒は、祥奏院大学という上のステップに上がるためのエスカレーターに無条件で乗ることが出来る。このエスカレーターに乗って進学することが出来れば、卒業後はエリート街道まっしぐらであり、非常に高い評価を得ることが出来る。
また、入学費の免除や学費の減額などの他にも様々な優遇がなされる特進科は正に憧れの的であった。しかし、これだけの好待遇をされるだけあって、そこへ入ることは難関を極めている。
本人の志望ありきとは言え、殆どの生徒がこの特進科を受験する。
この学園に入るためには、能力者であるということと、犯罪を起こしたことの無い生徒のみ入学可能というもの以外は、条件らしいものがない祥奏院学園。
それもそのはずで、能力者ということが判明している時点で原則、有無を言わさず強制的に入学させられることは説明済みであるために、入学に際して受験というものは必要ない。
ただ、特進科へ入るためにはそれなりの知識と技術が必要ということで、筆記と実技の特別な試験が事前に行われる。
そこから、学校で定められた基準に達する生徒が晴れて特進科になれるというシステムなのだ。
勿論、特進科は定員二十人なのでそれ以上の合格ラインを満たす生徒がいる場合は成績順となってしまう。
しかし、今までそのルールを使用したことはなく定員二十人を満たすことは一度も無かった。年によっては十人程しか集まらなかったこともあるという。
そういう意味では、今年は優秀な生徒が多いと学園内で噂される程ではある今回の新入生達。定員二十人のところを十八人まで埋めたことは、この学園設立以来の初の快挙ということだ。
そして、その特に優秀な特進科の中でも更に優秀な生徒が先程まで校内で迷子になっていた少年である。
すると突然、今後のことについて頭の中でプランを組み立てていた透徹に向かって声が掛けられる。
「あの、すみません。お隣、大丈夫ですか……?」
鈴を鳴らすように透き通った声がする方へ透徹が顔を向ける。そこには、正に神に愛されていると言っても過言では無い程の少女がちょこんと立っている。淡い栗色の髪をストレートのロングツインテールにし、華奢な体つきは人間であれば誰しも庇護欲をかきたたせるだろう。髪色とお揃いの色をした二重の大きな目に、どこかあどけなさを感じる桜色の唇は彼女の「初心さ」という魅力を更に高める武器となっている。
申し訳なさそうな顔で下手に出るようにこちらを見つめながら、首をちょこんと傾げているその仕草に、声を掛けられていない透徹の周りの男子生徒がノックダウンした。
彼女は男を落とすために意識してやった訳では無いのだが、生来の天然さがそういった行為を平然と行わせる。
そんな超強力な攻撃を真っ向から撃ってくる彼女に対して透徹はいつもと変わらないクールな表情で、普通に返事をする。
「ああ、構わないぞ。丁度俺も暇をしていた所なんだ」
「そうですか! 良かったです! では、お隣失礼しますね」
パアアッと後ろから音が聞こえてきそうな程に、嬉しそうな眩しい笑顔を浮かべる超絶美少女。そのまま透徹の右隣へ腰を下ろす。
周りの男子生徒は、隣に座るイケメンの透徹に対して、早くも敵対心を燃やすと同時に、平然としていられる彼に対して、尊敬の念を持ったのは秘密の話。
「ここに座っているということは、貴方も特進科なんですよね?」
「そうだな。まぁ、これから大変だろうが仲良くしてやってくれ」
「あっ、そう言えばまだ自己紹介がまだでしたね。私の名前は黄道宮詩音です。よろしくお願いしますね」
「鏡透徹だ。よろしく」
お互いに名乗りあった二人は、しばらくの間は特進科の受験当日のことについて話していた。
あの問題がどうだった、実技試験で緊張してしまったなどの話題から、とりとめもない世間話まで、笑い合いながら流れていく時間の中で、自然と二人の間の距離は少しずつ縮まっていった。
馬が合うのか、透徹と詩音は楽しそうに仲良く話し込む。すると今度は左側から誰かの声が聞こえる。
「仲良く話しているところ、ごめんなさいね。お隣良いかしら?」
そう声を掛けてきたのは、これまた可愛いの次元を超えた超絶美少女二人組。透徹に話し掛けてきたのは、紫色がかかった銀髪の少女。
切れ長の綺麗な紫色の目に、高い鼻、そしてその場にいることはそうなのだろうが、本当に自分たちと同い年なのかと思える程に整ったスタイル。女性としては高いその身長に、メリハリのある体つきとシミ一つない綺麗な肌。十五歳とは思えないその見た目の美しさに、またもや周りの男子生徒が鼻血を出しながらノックダウンしていった。
そして、そんな彼女の後ろに隠れて顔だけを覗かせている少女。こちらも超絶美少女と堂々と呼べるレベルの容姿をしている。
桃色の髪をショートボブにし、紺碧の目には赤ブチの眼鏡を掛けている。薄く可愛らしい唇をしており、化粧気は無いものの綺麗な柔らかそうな肌をしている。身長は女性としては平均程度であるが、目を見張るのはその胸囲。正に脅威だと言わんばかりに実った果実は、周りの男子生徒が血眼になって見つめるが、やがて頭に血が上りすぎたのか数々の生徒がノックダウンしていった。
「ああ、構わない。黄道宮も大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。よろしくお願いしますね」
二人の同席を快諾する透徹と詩音。
「ありがとう。何だか学園生活が始まって早々に仲良さげにしている男女がいるから、仲に混ぜてもらいたくって」
クールビューティといった印象を受ける銀髪の少女が冗談めかしてそう言いながら、後ろに隠れる女生徒も一緒に並んで椅子に座る。
「そんな関係じゃないよ、俺たちはまだ出会ったばかりだから」
「そ、そうですよ! それに、そんな風に勘違いされてしまったら鏡さんに迷惑が掛かってしまいますから!」
ワタワタと両手を振りながら必死に否定する詩音。ほのかに頬を紅く染める彼女の姿は非常に可愛らしい。
「ふふ、ごめんなさいね。……と、まだ名乗りもしてなかったわね。私は美雪聖那。以後よろしくね」
パチッとウインクをする聖那。その仕草は魅力的で、まるでライフル弾のように放たれたその視線の攻撃は透徹を貫通して、その後ろにいる男子生徒たちが皆ノックダウンされていく。
「そして、こっちが……。ほらっ、自己紹介なんだから自分でしなさい」
そう後ろを向きながら、桃色の髪をした女の子に自己紹介をしろと急かす聖那。
「あ、あの……、私は神咲麗莉です。よろしくです」
ペコリと軽く頭を下げながら、短い自己紹介を済ませる麗莉。どうやら彼女は人と接することが苦手であるらしく、中々透徹とは目線が合いそうにない。
そして、自己紹介してくれた聖那と麗莉の二人に、透徹と詩音がそれぞれ名乗る。
「私、苗字で人を呼ぶのがあまり好きではないの。同い年なんだから、透徹と詩音って呼び捨てにしても良いかしら?」
「俺は全然良いよ。寧ろ俺も同じなんだ。聖那って読んでも大丈夫か?」
「ええ、それじゃあ改めてよろしく、透徹」
透徹と聖那は、お互いに笑顔のまま固い握手を交える。
「あ、それなら私も透徹さんと呼んでもいいですか?」
すかさずその流れに乗ってくる詩音。心なしか結構食い気味に、体を前のめりにしながら透徹の名前呼びに参加してくる。
「ああ、じゃあ俺も詩音と呼ぶから。よろしくな」
「はい!」
満面の笑みで元気よく返事をする詩音。
「ほら、どうせなんだから麗莉も呼んじゃいなさいよ」
麗莉の肩に手を置きながら、説得するように聞かせる聖那。
「うぅ〜、と、透徹くんっ」
体をモジモジとさせ、顔は真っ赤の麗莉。どうやらこういったコミュニケーションには慣れていらないらしく、恥ずかしがりつつもこういった仲に少し憧れを持っていた麗莉は、表情だけは嬉しそうにしていた。
両手に花の状態で、入学式の開始を待つ透徹。ビクビクしながらも、少しずつ溶け込んできた麗莉も含めて四人で話が盛り上がっていく。
既に男子生徒からの透徹へのヘイトは有頂天。入学早々から差を見せつけられ、これが特待生の力かと思いつつも現実を受け止めきれない彼らの葛藤。
そんな事は知ったことではない透徹は、三人との親睦を深めていく。少しのあいだ時間も忘れて談笑に浸っていた彼らだったが、しばらくして会場のアナウンスが響く。
「これから、入学式を行います。新入生の皆様は、速やかに席にご着席願います」
透徹も含め新入生たちの緊張感が再び湧き上がってきたのだった。
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