表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ


どうも、しばらく小説家になろうから離れていましたが本日より活動を再開します。


以前は、ローファン、VR、恋愛を同時連載していましたが、今回は一つに集中するためになるべくこの作品のみで戦っていきたいと思っております。


それでは、宜しくお願い致します!

 

 この世界には「能力」と呼ばれる特殊技能が存在する。科学とは異なって進歩してきた技術であり、今の社会を形成している柱の中でも最も重要なものと言ってしまっても過言ではない程に発達している。


 古くは中世の頃に、当時のヨーロッパ諸国で能力を行使する「能力者」という者が初めて確認された頃から始まる。


 当初は「魔女」と呼ばれ迫害されていた彼女達であったが、詳しく実態を調べてみると女性だけでなく男性も不思議な力も扱う事が判明。(いわ)く手から火を出したり、甘言に乗せられやすくするなど様々な能力を彼らは行使してみせた。


 その後も世に認知されていなかっただけで、次代が進むに連れて能力者という常人とは異質な者の姿は、少しずつではあるが明るみになっていった。


 それはこの日本という国も例には漏れず、その存在が表舞台に出た頃は群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)の戦国時代。能力を発現した人間ならば、その力を持って誰もが天下を狙う事の出来る下剋上が蔓延(はびこ)る世。教科書に載っているような有名な戦国大名と言うのはその誰もが強大な力を持っていた。


 ここで少し説明をすると、力が発現する原因と言ったものは現代における研究でも全く解明されておらず、何の兆候も見えないなどざらである。ある日の朝に目が覚めたら能力が使えるようになっていましたという事があり得る時代なのである。


 ただしかし、二つだけ解明されている事実、と言うよりは傾向なのであるが能力が発現するのは年齢が十五歳までの若者のみとなっている事である。これは、能力というものが認知されてから六百年程の昔から今までただの一つも例外に漏れない。一度発現してしまえば死ぬまで力を失う事は無いと言われている。


 そしてもう一つは、この能力が発現するのは先天性と後天性の二種に分かれる事である。先述の様にある日突然、能力を手に入れるという事もあるのだが全体の割合で言ってしまえば二割程しかいない。そのほとんどが先天性であり、更に言ってしまえば先祖代々その能力を伝承してきた由緒ある一族というのも存在する。


 伝承されてきたその力は、代が替わるごとにその質を落としていくのではなく更に磨きがかかっていく。この事に気付いた者は末代まで自分たちの家が影響力を持つようにと、親から子、子から孫へその力の振るい方、知識を伝授していった。


 そして時はそんな能力者と一般人が共存している現代。彼らの趣味嗜好(しゅみしこう)は何ら違いがある訳でもなく、ただ不思議な力を持っているかどうかの区別のみであった。馬が合わなければ付き合わないという普通の感情を持ち合わせている能力者は、現代社会でも排されることは無く寧ろその力を駆使して自国の利益となるような立場に就いていた。


 そんな彼らは非常に重宝され、普通の人では成しえないこともやってみせる仕事ぶりから、重要な役職に腰を据える人は多かった。世界はそんな彼らの力をどれだけ伸ばし、どれだけ抱えこむかで自国の国力と直結するために、人材育成に励み始める。


 勿論、日本もその競合に参加しており世界でも有数の強豪国である。「祥奏院学園(しょうそういんがくえん)」はそんな能力者達を育成するための唯一の高等教育機関である。小・中学校の義務教育期間は能力者も一般人も、お互いを知り合うという理由もあって一緒に教育を受ける。その間の能力に関連する教育に関しては、国から補助金と教育者が派遣され、決められた施設内であれば子供たちが学ぶことが出来る。


 そして、義務教育期間が終了するとその時点で能力者であると判明している生徒は全員が祥奏院学園に通う事になる。全員と言っても能力者の数が圧倒的に少なく、数は前後するが年に二百人程度が集まる。また、理論上は能力の発現が十五歳までであるために、転入生というのはほとんど入ってこない。あるとしても、一年生の間だけだろう。


 ここまでが祥奏院学園に入学する流れであり、入学後は普通の高校生と変わらない基礎五科目である国語、数学、語学、理科、社会と、基礎能力修練、応用能力修練、基礎戦闘修練、応用戦闘修練の四科目をカリキュラムとして学んでいく。ここでしっかりと学んでいく事で、自分達の身の振り方が明確になっていくという事で生徒達は切磋琢磨し合い、日本の能力社会は高い水準を保っていく。


 しかし、そんな不思議な力を持った彼らが優遇されることに関して嫉妬をもってしまい輩もいる訳で、不埒な考えをする団体も現れる。思想を持つだけであれば特に咎められることは無いのだが、行動に起こしてしまう犯罪者たちも一定数存在してしまう。そんな団体や組織を取り締まる事も能力者達の責任であり、それを専門に扱った警察の部まで出来上がってしまう程であった。


 そんな普段の生活の中でも、身近に感じられる能力者という存在。世界中の政府はどれだけ自国の治安が良いまま維持できるか、国同士の競合に負けないようにするかという課題を常に考えながら、国々はこれからの将来を担う子供たちのために教育を施していく。


 そして、今日はそんな能力者の卵を育てる機関である、祥奏院学園の入学式が行われる。桜舞う校門を目指して通学路を歩いていく生徒達の身に着ける制服は、ピカピカでシワが一つもなく卸したてであることが一目でわかる。加えてうら若き彼らのまとう雰囲気と、期待と不安に彩られた複雑な表情がそんな彼らの初心さを際立たせており、道往く通行人やらはその光景を見る事で再び季節が春なのだということを認識させられた。


 特殊な学校という事もあり、学園の周りは非常に強固で高さのある壁に囲まれているために、外から中の様子をうかがう事は決して出来ないこの祥奏院学園。まして、侵入者など許すことが無く校内には常に能力者である守衛が設置されている。そんな自分たちの通うはずの学園の中の様子など知る由が無かった生徒達は、校門を過ぎて少し歩いた先に見えるその校舎を見て仰天した。


 豪奢な造りのそれは、本当にここが自分たちの学び舎であるのかと疑ってしまう程である。校舎だけでなくそれに連なる建物、庭などが規格外であり、一瞬気圧されてしまう。


 しかし、それも一瞬の事で次にくるのは喜びの感情。こんな恵まれた場所で自分たちは学ぶことが出来るのかという高ぶりが彼らの全身を突き抜ける。それだけ国としては、若い芽を大事に扱っていきたいということが嫌でもわかってしまう。


 先程までの緊張はどこへやら、なんとも単純にのまれてしまった新入生たちは、重かった足取りも今は軽やかに式が行われる会場までその足を運んでいく。


 そんな浮ついた新入生たちとは違い、ピリッとした雰囲気を持った少年が会場に向かって一人歩いている。


 まるで、色素が皆無な髪。なんの淀みもない白髪は前髪はキリッとした水色の目にかからない程度に切り揃えられている。十五歳としては高身長であり、どこかでモデルでもしているかの様に脚も長くスタイルが良い。顔も非常に整っており、男でありながらシミ一つない綺麗な肌をしている。


 近寄り難い空気を漂わせているが、その容姿はどうしても周りの目を集めてしまう。新入生はおろか、学園に着くまでに通ってきた道でも一般人の目線を奪ってきた。


 神秘的な容姿をしているのに、どこか危険な匂いもする彼を周りの女子生徒は見逃すはずもない。声を掛ける勇気がない彼女たちたが、既にロックオンは済ませている。


 まだ入学式は始まっていないし、そもそも学園生活はこれからなのだ。まだまだこれからお近づきになる時間はあるだろうと考えて、頭の中ではあれやこれやと計画していく。


 反対に男子生徒たちは、自分たちとはまるで格の違うことを早々に思い知らされ、少し気落ちしている者もチラホラと見受けられる。


 そんな事など知る由もなく、視線には気付いてはいるが悪意の無いものだと判断し、無視して歩く男子生徒。彼の名前は鏡透徹(かがみとうてつ)


 日本でも有数の名家である「鏡一族」の生まれである。彼らの特徴として、髪の色が真っ白である事とその途轍もない能力を誇るところである。鏡一族の能力は非常に有用で、世界中のトップが喉から手が出る程に欲しがる人材である。


 そんな鏡一族は、能力者の中では勿論のこと一般人でもその名を知らない者はいないとまでされる名家。この国のあらゆる重職に就く人物には、鏡の血が流れている者も多く、優秀な能力者たちを数多く排出してきた。


 その昔は、「鏡氏(きょうし)であらずんば人にあらず」とまで言わしめた一族は、昔程にその影響力は無くとも、今でも十分すぎるほどのネームバリューはあるのだ。


 そんな、この国のトップの生まれである鏡透徹。しかも、彼は現鏡家当主である玲瓏(れいろう)の実子であり長男であった。


 生まれた時から、玲瓏の目をして相当な能力を持っていると言わしめた透徹。三つ子として生まれた弟と妹も含めて大切に育てられた。


 母は元々体が弱く、三つ子の出産には身の危険があるという医師の言葉があったのだが、彼女の決意は固く、無理を押して出産した。


 その無理がたたったのか、彼女は産まれてきた子供たちを目にすると、笑顔を浮かべた直後にその命を落としてしまった。

 

 そんな最愛の妻の忘れ形見ということで、玲瓏は一生懸命に透徹らを育てた。父としてではなく、教育者としても小さい頃から訓練をつけてあげたり、欲しいものは何でも買い与えた。


 使用人たちも、母を持たないそんな子供たちを不憫に思ってか、玲瓏の目の届かない所で秘密に甘やかしてやったり、身の回りのお世話を自発的にしたりなどの可愛がりようがすごかった。


 しかし、事態は一変する。三つ子が五歳の時に能力が判明したのだが、次男と長女である弟と妹の能力は非常に強力かつ希少なものであった。それに比べ兄の透徹の得た能力の名は「透徹」。触れたものが全てすり抜けてしまうというだけの能力であった。


 まだ、その力を十分にコントロール出来れば良かったのだろうが、透徹は中々制御出来ずに「幽霊」だと馬鹿にされ、弟と妹ばかりがその才を伸ばしていった。初めの頃こそ次期当主と呼ばれ、一族のトップであった透徹は次第に陰りを見せ始める。


 家の中でも、優秀な弟と妹と比較され、一族の者からは陰湿なイジメと陰口を叩かれるようになっていった。その状況に成す術もなくただ流されていくだけの兄に、弟と妹も見切りをつけてしまう。


 父の玲瓏も、既に透徹のことは眼中に無いのか、一家団欒の中でも彼だけをいないものとして扱ってきた。


 そして、無能はこの家には要らないということで破門とまではいかずとも、これまで住んでいた実家を追われ、人里離れた閑散とする山へとその身を置かれた。


 流石に一人では何もやっていけないということで、当時から透徹の専属のお付であった東雲実(しののめみのり)と二人で、鏡一族の持ち家に飛ばされた。


 実家にいる時から、酷い仕打ちを受けてきた透徹にとって実は常に自分の味方であり、母のような存在であった。実自身も、どれだけ同僚に透徹のことを言われても、当主である玲瓏がどんな扱いをしようが、彼女だけはいつも彼の傍にいた。家族を持たない彼女にとっても、口には出さないが、透徹は息子同然であり、間柄は主と使いではあるのだが、確かな絆がそこにはあった。


 祥奏院学園に入学するにあたって、近くに越してきた透徹と実は、今朝も親子のように「行ってきます」というやり取りをして登校してきた。


 実家での環境から、他人のことを信用しない性格になってしまった透徹であるが、一番の理解者である実には心を開いており、彼の心はいつも彼女に対しての感謝で溢れている。


 正直、ここに通うということは弟と妹と顔を合わせることになってしまうということであるために、憂鬱な気持ちであった。過去のことは忘れて自分のことだけを考えて生活していこうと、気持ちを固めているつもりではあっても実際に目にしてみればどうなるかはわからない。


 「透徹様は透徹様ですから」


 家を出る際に実から言われたこの言葉。まるで自分の心の内を読まれているようで少し気恥ずかしかったが、この人には叶わないと思うと同時に勇気づけられた自分がいると理解した。


 ここから、自分の新たな学園生活が始まる。


 不安が無い訳ではないが、悲観してばかりでもいられない。今更、あの家に戻ろうとも思わないし、壊れた仲を修復しようとも思っていない。


 自分で学び、自分の力で生きていける術を学ぶためにこの学園に来たのだと奮い立たせて、式場へ向かう透徹。


 「俺は俺だから」


 先程までは少し薄暗く曇っていた空も今では晴れ渡り、太陽が燦々(さんさん)と彼らを照らしつけるのであった。



読んで頂きありがとうございます。


もし面白かったなど思って頂けたら、ブックマーク、ポイント評価、感想をくれると嬉しいです!


次回投稿は、明日の同じ時間帯を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ