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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男好きなビッチ姫

作者:

 


「ねぇねぇ、おばあちゃん。ビッチ姫のお話してー」

「ビッチ姫ー」

「お話してくれなきゃねむれないー」


 大勢の小さな子ども達が、一人の白髪の老女のまわりに集まる。


「おやおや、しょうがないねー」


 老女は編み物の手を止め、ロッキングチェアから立ち上がり子ども達の手を取る。


「それにはまず、ベッドに移動さ。風邪をひいてしまうからね」


「はーい」「はーい」


 子ども達は急いでベッドに移動する。

 おばあちゃんと呼ばれる老女が、意外と短気な事を皆知っているのだ。


 全員がベッドに潜り込み、老女も子ども達のベッドに腰かける。


「さあ、じゃあ物語の始まりさ。昔々あるところに~」





 昔々あるところに、シェラウスビトローチというとてもキレイなお姫様がいました。

 お姫様の名前はとても長いので、お姫様はビッチ姫と呼ばれていました。


 このお姫様はとても困ったお姫様だったのです。

 とてもキレイでダンスも上手。

 頭も良くて度胸もあり、剣も魔法も国一番。

 でも、お姫様はとても男の人が大好きだったのです。


 貴族でも騎士でも平民でも商人でも奴隷でも。

 気に入った男の人がいれば、誰でもベッドに連れ込んでしまうのです。

 これには、王様もお妃様も困りました。


「ビッチ姫、男の人を連れ込むのはやめなさい」


「ならば、お父様が私に相応しい殿方を連れてきてください」


 王様は、ビッチ姫に相応しい隣国の王子を連れてきました。

 しかし、ビッチ姫は王子様が気に入りません。


「ビッチ姫、何が気に入らないんだ?」


「私、ブサイクは嫌いですわ」


 王様は、森の向こうのイケメン王子を連れてきました。

 それでも、ビッチ姫は気に入りません。


「ビッチ姫、何が気に入らないんだ?」


「私、自分より弱い男は嫌いですわ」


 王様は、砂漠の向こうの強い王子を連れてきました。

 それでも、ビッチ姫は気に入りません。


「ビッチ姫、何が気に入らないんだ?」


「私、自分より馬鹿は嫌いですわ」


 王様は、海の向こうの賢い王子を連れてきました。

 それでも、ビッチ姫は気に入りません。


「ビッチ姫、何が気に入らないんだ?」


「私、短小早漏包茎は嫌いですわ」


 それでも、王様は諦めません。

 ビッチ姫に相応しい王子を世界中から連れてきます。

 その度にビッチ姫は…


「私、テクなしは嫌いですわ」

「私、ロリコンは嫌いですわ」

「私、ワキガは嫌いですわ」

「私、ハゲは嫌いですわ」

「私、ど下手なくせに自分のテクは最高で毎回女を天国にいかせてヒーヒー言わせてるぜ♪な勘違い野郎は嫌いですわ」

「私、自国の令嬢を8人も妊娠させ、その子どもを4人は堕胎させ、2人は養子に出し、1人は売り飛ばし、1人は愛人にしているドクズは死ねばいいと思いますわ」


 ビッチ姫は、誰も気に入りません。


「おお、ビッチ姫よ。お前はこれまで、ブサイクでも馬鹿でも、自分より弱くても変態でも短小早漏包茎でも一夜をともにしてきたではないか。何が気に入らないんだ?」


「一夜をともにする相手は誰でも良いのです。快楽を与え、一時の癒しを私に与えてくれれば満足ですわ。ですが、夫となる方に妥協はできません。この私の夫となるのですから、完璧最高を求めますわ」


 ビッチ姫は王子達からの求婚を断り続け、ついに世界中の王子達を振ってしまいました。

 これには王様も怒りました。


「ビッチ姫、一国の王女が結婚せずに独身を貫くなどあってはならん」


「ならば私は女王に即位し、弟の子どもを養子にして王位を継がせますわ。王位争いを起こさぬように私は配偶者は持たず、避妊しつつの夜遊びにつとめますわ」


 王様は激怒しました。


「今まではお前の我儘にも目をつむってきたが、今回はそうはいかん。ビッチ姫よ、お前は修道院へ行くのだ。神に仕え、心身ともに清らかな生活を送るがいい!」


 しかし、素直に修道院へ行くビッチ姫ではありません。

 修道院は女の園。

 清く正しく生活するところです。

 贅沢大好き男大好きなビッチ姫にとっては地獄のようなところです。


 ビッチ姫は逃げ出す事にしました。

 気づいた王様は追っ手をかけましたが、剣も魔法も国一番のビッチ姫です。

 誰も敵わず、見事に逃げ切りました。


 ビッチ姫は森を抜け、砂漠をわたり、海をわたり、遠い遠い国へと逃げました。


 ビッチ姫は貢がれた宝石を売り、自身が作成した秘薬を売ってお金を稼ぎます。

 また、贅沢三昧男三昧な生活に戻りました。


 ですが、欲張りなビッチ姫です。


「まだまだ遊び足りないし、男も足りないわ」


 そこでビッチ姫は考えました。

 魔法が得意なビッチ姫、若さを保つ秘薬を作り出したのです。


 ずっと若いままのビッチ姫、ずっと遊んで暮らしていました。

 父親の王様が死んでも、弟が死んでも、弟の子どもが死んでも、そのまた子どもが死んでも、ビッチ姫はずっと遊んでいました。

 何年たったのか、自分が今何歳かもビッチ姫は忘れてしまいました。


 ビッチ姫が遊びはじめて何百年とたちました。

 いつまでもキレイな少女の姿のままなビッチ姫。

 いつの間にかビッチ姫は、魔女と呼ばれていました。

 世間では、男が大好きな女性は『ビッチ』と呼ばれるようになっていました。


 けれども、そんな細かい事は気にしないビッチ姫。

 今日も男をあさりに出掛けました。


 まあ、なんという事でしょう。

 ビッチ姫の大好きな若い男が一人もいません。

 女と子ども、老人しかいないのです。


 原因は隣国との戦争でした。

 隣国が攻めてきて、若い男は兵隊として戦争に行っていたのです。

 ビッチ姫は怒りました。


 隣国の王の元へと乗り込み、戦争をやめるように言ったのです。

 横暴でワガママな王様はビッチ姫を無視して追い払います。

 横暴な王様以上に、短気でワガママなビッチ姫。

 横暴な王様を、魔法で殺してしまいました。


 さすがに、「げ、ヤベ」と思ったビッチ姫。

 誰かが来る前にスタコラ逃げ出しました。


 実はこの横暴な王様、隣国で自分本意な独裁をしいていた為、いなくなってとても喜ばれました。

 今回の戦争も横暴な王様の独断だったので、王様がいなくなってからすぐに終わりました。

 これにはビッチ姫も大喜び。


 すぐに男あさりに出かけました。

 ですが、戦争で疲弊していた為、みんな身体が弱く病気をしていました。

 ビッチ姫が大好きな若くて健康な男はいませんでした。

 ビッチ姫は怒りました。


 王様に進言しても、戦争でお金をたくさん使ったのでお金がありません。

 ビッチ姫はお金をたくさん持っていたので、王様に貸してあげました。

 すぐに病院がひらかれ、薬や包帯でみんな元気になりました。

 これにはビッチ姫も大喜び。


 すぐに、男あさりに出かけました。

 ですが、戦争で田畑が荒れてしまった為、みんな十分にご飯を食べられていません。

 ビッチ姫が求めても、ビッチ姫が望むほど愛してくれる男はいませんでした。

 ビッチ姫は怒りました。


 王様に進言しても、戦争でお金をたくさん使ったのでお金がありません。

 ビッチ姫はお金をたくさん持っていたので、王様に貸してあげました。

 近隣諸国から食料を輸入し、すぐに炊き出しが始まりました。

 田畑も新たに作られ、ご飯に困る事はなくなりました。

 みんな、お腹いっぱいご飯を食べられて元気になりました。

 これにはビッチ姫も大喜び。


 すぐに男あさりに出かけました。

 ですが、戦争で教育が不十分だった為、みんな勉強がわかりません。

 ビッチ姫が大好きな賢い男はいませんでした。

 ビッチ姫は怒りました。


 王様に進言しても、戦争でお金をたくさん使ったのでお金がありません。

 ビッチ姫はお金をたくさん持っていたので、王様に貸してあげました。

 すぐに町や村に学校が作られ、子どもも大人もみんな勉強しました。

 これにはビッチ姫も大喜び。


 すぐに男あさりに出かけました。

 ですが長い間平和だった為、ビッチ姫が好きな強い男はいませんでした。

 ビッチ姫が怒った戦争から何十年も経過していたのです。

 ビッチ姫は怒りました。


 騎士団を編成し直し、トレーニング方法を考案し、ビッチ姫自ら隊員達をしごきました。

 ビッチ姫のおかげで、隊員達はとても強くなりました。

 これにはビッチ姫も大喜び。


 すぐに男あさりに出かけました。

 また贅沢三昧男三昧な生活に戻ったビッチ姫。

 さすがに、少し飽きてきました。


 そこでビッチ姫は考えました。


「好みの男を自分で育てればいいじゃない。」


 なんて、ナイスなアイディアなんでしょう。

 自分の好みな男を、1から育てればいいんです。

 色々なタイプの男を揃えれば、毎日色々楽しめます。


 善は急げなビッチ姫、早速行動を開始しました。

 大勢の男を育てるのです。

 この家では狭すぎます。

 郊外に大きな家を建てました。


 大きな家には家具がたくさん必要です。

 家具をたくさん買いました。

 人が住むには色々必要です。

 文房具も洋服も食料も買いました。


 肝心の男です。

 どうせなら、1から育てたい。

 子どもがベストですが、どこかから誘拐してくるわけにはいきません。

 行き場がなくて困っている孤児をたくさん連れてきました。


 人が生きていくには食べ物が必要です。

 ですが、ビッチ姫困りました。

 ビッチ姫、料理をした事がありません。

 頑張って作りましたが、炭ができました。

 とても困ったビッチ姫。

 料理が作れる人に教えてもらいました。


 人が生きていくには洋服が必要です。

 洋服を着たら洗濯をしなくてはいけません。

 ですが、ビッチ姫困りました。

 ビッチ姫、洗濯をした事がありません。

 頑張ってやってみましたが、洗濯物が泡だらけ。

 とても困ったビッチ姫。

 洗濯ができる人に教えてもらいました。


 人が生きていくには掃除が必要です。

 生活をしていたら、毎日毎日汚れていきます。

 ですが、ビッチ姫困りました。

 ビッチ姫、掃除をした事がありません。

 頑張ってやってみましたが、なぜか逆に汚れてしまいました。

 とても困ったビッチ姫。

 掃除ができる人に教えてもらいました。


 孤児の中には、とても小さい子もいました。

 一人でトイレに行けず、オムツをしているのです。

 ですが、ビッチ姫困りました。

 ビッチ姫、オムツを替えた事がありません。

 頑張ってやってみましたが、すき間からうんこが漏れました。

 とても困ったビッチ姫。

 オムツを替えた事がある人に教えてもらいました。


 ビッチ姫は毎日悪戦苦闘。

 男あさりに出かけるひまもありません。


 そこでビッチ姫は考えました。


「人を雇えばいいじゃない」


 善は急げなビッチ姫、早速行動を開始しました。

 色々な人を雇いました。

 料理が得意な人。

 掃除が得意な人。

 洗濯が得意な人。

 子どもの相手が得意な人。


 ビッチ姫は久しぶりに男あさりに出かけました。

 でも久しぶりで楽しみすぎたのか忘れ物。

 うっかりビッチ姫は1度家にもどりました。

 すると、なんという事でしょう。

 雇った人が、子ども達をいじめていたのです。

 ビッチ姫は怒りました。


「私の将来の恋人達になんて事してるの!!!! この子達をいじめていいのは私だけよ! 主にもっと成長してから夜にね!」


 ビッチ姫は、悪い人の頭を丸坊主にしパンツ一丁で叩き出しました。


 反省したビッチ姫。

 今度は、ちゃんと面接して人を雇います。


 そんなある日のビッチ姫、とても困ってしまいます。

 家の前に子どもが捨てられていたのです。

 町や村でビッチ姫の孤児院が有名になり、生活に困って子どもを捨てていく人が出てきたのです。


 ビッチ姫は困りました。

 ここは、ビッチ姫の将来の恋人養成所であって孤児院ではないのです。

 ですが、ビッチ姫も鬼ではありません。

 行くところがない孤児を放り出す事はできません。


「恋人候補が増えたと思えばいいわ。百合にも興味が出てきたところだしね」


 どこかずれているビッチ姫でした。


 ある日、ビッチ姫はまた困ってしまいました。

 恋人候補として、ビッチ姫が自ら育ててきた子ども達は元気に成長していきました。

 健康でイケメンで強くて賢い、まさにビッチ姫の好みです。

 ですが、そんな好みの男にビッチ姫は興奮しないのです。


「きっと子どもの相手で疲れてるだけね。そのうち興奮するわ」


 ある日、またまたビッチ姫は困ってしまいました。

 いつまでたっても興奮しないのです。

 そんなビッチ姫に、一人の友人が教えてくれました。


「ハッハッハー。うんこの始末をし、ゲロの始末をし、小さい頃から育てた我が子とも言える男に興奮しないのは当たり前さー。それで興奮したらヘンタイだよ。僕はそんなビッチ姫も大好きだけど・ネ♪ さあ、いざ僕と一緒にメイクラ……」


 バキィ!


 うるさい男は拳で黙らせました。

 イケメンだけど、どこか残念なこの男をビッチ姫はうざがっていました。


 好みの男を1から育てようとした計画でしたが、どうやらビッチ姫は失敗したようです。

 ですが、失敗したからと言って放り投げるビッチ姫ではありません。


「そのうち、興奮する男があらわれるかもしれないわ。」


 無駄にポジティブなビッチ姫。

 ビッチ姫が、興奮する男と会えたかどうかは誰もわかりません。

 きっと、今日も前向きに子ども達を育てている事でしょう。


 めでたしめでたし。




「くーくー」「ぐー」「むにゃむにゃ」


「おやおや、いつの間に」


 老女は起こさないようにゆっくりと立ち上がり、子ども達の布団を肩までかけてやる。


 ゆっくりと歩き寝室から出て、リビングへと移動した。


「おつかれさま、シェラウスビトローチ」


 不意に話しかけられた言葉にムッとする。


「その長ったらしい名前で呼ばないでちょうだい」


 まとめていた髪をなびかせたその一瞬で、老女は少女へと姿を変える。


「たまには呼んでやらないと、名前がかわいそうですよ」


 シェラウスビトローチと呼んだ若いイケメンは、少女へと近寄りその髪に口づけをする。


「子ども達に、貴方の話をしていたんですね。本人が語り聞かせるビッチ姫話。歴史家達がこぞって聞きたがりますよ」


「歴史家に聞かせるなんてお断りよ。子ども達にせがまれなかったら絶対に話さないわ」


「自分のやりたいように行動していたら、いつの間にか大人気ですね」


 男は苦笑する。


「なんの悪夢だっていうのよ。自分の半生が大勢の人達に知られるって。絵本、小説、舞台に絵画。どんだけ私が大好きなのよ」


「でも、あのお話少し足りなくないですか?」


 ビッチ姫は、ついに運命の相手に出会えたのです。

 お相手は1番初めにビッチ姫に拾われた孤児。

 二人は、何十年も一緒にいながら徐々に愛を育んだのです。


「ってね」


「なにが運命の相手よ。あんたが勝手に若返りの秘薬を飲んでつきまとってるだけでしょう。あんたに正体がバレたのは一生の汚点だわ」


「でも、僕はお買い得ですよ。家事も育児も完璧ですし、剣も魔法も得意ですし、健康でイケメンですし、あそこのサイズにも自信がありますし。テクは街で磨いてきましたし。何十年と頑張りましたから、そこそこにはなってると思います」


 ビッチ姫を後ろから抱き締める。


「今から、試してみますか?」


「お断りよ。50年後に出直してきなさい」


「という事は、50年は一緒にいられるって事ですね。嬉しいです」


「…あんたも無駄にポジティブよね」




 この先、二人がどうなったかは誰にもわかりません。

 ですが、ビッチ姫が作った将来の恋人養成所は形を変え、教会と学校が併設された孤児院になりました。

 そこでは、ビッチ姫によく似た男の子と女の子が暮らしていたそうです。



 めでたしめでたし。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ビッチは同性に嫌われ、異性に低く見られますが、ビッチ姫は清々しくて良いですね。 出る杭は打たれるけれど、出過ぎた杭は打ちようがないのかもしれません。 なにげに真面目で面倒見が良いビッチ姫。…
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