獣たちの葬送
今年は猛暑だった。肌を焦がすほどに照り付ける太陽に慣れていないのか、ジエイタイの連中も何人か倒れたらしい。
僕はそのジエイタイのキャンプに拘束されていた。気温で高温になった金属椅子の足に両足を手錠で固定され、両手も手錠で繋がれていた。
そりゃあまぁ、停戦命令がでたと言うのに、AKを持って特攻なんてすればこうもなる。と言うか本来その場で殺されて然るべきだ。なぜ生かされて、わざわざ尋問なんてするのかと言う疑問はすぐに晴れた。
テーブルを挟んで、ジエイタイの男はタブレット端末に一枚の写真を表示して寄越した。
「君の家族だ、日本にいる。」
ジエイタイは日本の軍隊なのか、と言うのが一つと。もう一つは僕に家族はいないと言うことだ。
「知らないよ、そんなやつら。」
男は怪訝な顔をする。
「幸助なんてやつは10年も前に死んだんだ。俺は自分の名前は知らないが、仲間はコーって呼んでくれてる。だから俺はコーだ。」
呆れたように男は溜め息を着いた。
「いいか?君は幼い頃に誘拐されたんだ。そして少年兵にされて」
その言葉を遮るように僕は「知ってるよ」と言った。
「そりゃ覚えてるさ。ここに来た頃は地獄そのものだった。毎日毎日撃っては殺し撃っては殺し、まともに寝ることすら出来ねぇ。」そう続けた。
「でもある日何かが目覚めたんだよ。なんと言うかこう、するべき事が全てわかるんだよ。その時から俺はぐっすり眠れたよ。殺した奴の顔なんて一瞬で忘れた。殺すと言うことに何も感じなくなった。毎日噛んでた葉っぱも何も感じなくなった。」
一瞬間を開けて「つまり、これは死んだってことなんだろ。」
そう、続けた。