3 戦闘の幕開け
少し長くなりました。というより、これからはこのくらいで行く予定です。
剣を抜いているときの1秒程も、ボスは待たなかった。
遠慮のない触手によって初めから死へと逝くプレイヤーもいた。しかし、俺らには何の被害も無い。
ここを好機とよんで――俺の推測スキルとは関係ないが――シュータとリーナに、
「今がチャンスだ!!突っ込め!」
と言って、タイミングの指示を成功させた。のだが、どういうポジションで攻撃するとは言いそびれていた。――が、ここでさっきリーナが言っていたことを思い出した。そのおかげで混乱なく全員が動いていたのだ。そろそろボスも俺らの方に動き始めて来そうなので、俺も思考回路を停止させるようにした。
・・・今頃だが、リーナは俺がどこからと言っていた内容を忘れた。どうしようかと悩んだとき、誰も居ないところにつけばいいのでは、と思いついた。見ると、リーナとシュータが左右に分かれている。つまり、真ん中。
なんか壁役扱いされている気がするが、この際どうでもいい。
俺は剣に力と思いを込めて迎撃を狙った。
のだが。
敵は、あまり活発に動かず俺らを見ているだけで、攻撃を仕掛けてこない。これを俺はチャンスとみて、迎撃ではなく何か他は・・・。
思いつかなかったが、とにかくこちら側から攻めようとした時。
「カズキ!気をつけて!!」
後方からリーナの声が。そう思った瞬間。
――敵の鋭い剣が、俺の目の前を横切った。恐らく、あと50センチ前に出ていたら、確実に斬られていた。
しかし、敵は微動だにしなかったのに、なぜ攻撃を始めたのだろう。そして、いつ、どのタイミングで抜刀して・・・。
ここでようやく、ひとつの可能性が見え始めた。まず、プログラムは思考力を持っていない――しかし、それはものにもよるが――ので、まず抜刀のことなどは考えないだろう。そして、攻撃タイミングを考えるようなこともしないだろう。
つまり、このボスは――少なくとも、だが――人間に近い思考力が与えられているのだろう。
その考えが正しいなら、集中力などもあって一時的に弱くなる時もある、と俺は読んだ。それをシュータに伝えようとした、その時。
――もう一度、俺の目の前を敵の鋭い剣が頭上を通っていった。
しかし、そんなことは気にせずシュータに、
「相手は恐らく途中で弱くなる!!その隙を狙え!!」
俺はそう伝えた。しかし、返事は無かった。
とにかく俺は伝わったことを信じて、回避を繰り返した。
―――――
シュータは、ボスとの戦闘中、どこかは知らないところへいつの間にか転移していた。
「どこだ、ここは・・・」
シュータが珍しく独り言を言った。
「さあ・・・」
と、シュータの隣で言ってきた人がいた。すこし驚いたが、こんなのはシュータで十分慣れている。
なんでもいいが、とにかく状況を整理しよう。
まず、ボスとの戦闘中にここに転移。ここまでは理解できた。しかし、その後ここに来ていまだに理解出来ていない部分がある。というより、その方が大きい。
理解出来ていない部分1つ目、ここに転移した人数。ぱっと見50人じゃ済まない程の人数だが、はっきりとした人数は分からない。
2つ目。転移対象。ランダムならいいが、――もちろんこのあと戦闘になるなら、だが――この後どうなるか分からないので、あまり知り合いには会いたくない。
3つ目。ボス戦の結果。――あとでカズキに訊こう。
今のところ、3つ目以外は解決してない。
シュータは、これから吹く風に身を任せつつ、一歩ずつ前に進みだした。
―――――
リーナも、シュータと同じ地にいた。
もちろん、双方共にシュータが――シュータ視点はリーナが――いることを知らない。
―――――
今は俺も、シュータも、そしてリーナも知らなかった。このゲームは死ぬと何時間にもわたって気絶し、死亡した人がいることを。そして、このゲームで、秘密裏に進められているプロジェクトがあることを。
―そして、知らずにそのプロジェクトの協力者になっていることを。
[予告]
外伝2「不思議な思い出」投稿中。(オープニングのため短め)
本編4「シングル・ロワイヤル」「終焉へと」2編同時投稿中。
お楽しみに!!