18 過ちとその償い<1>
投稿遅くなって本当にすみません。
俺たちは今ボス戦をしているであろうところにいる人――ではないところにいる情報屋にメッセージで状況を聞くことにした。
『今はどんな感じだ?』
『戸が開いて無いからニ戦目は終わってないところ。ただ、一戦目が終わったという情報から2時間近いから、終盤戦だと思う。―100C』
直後に返信が。それも、まあまあ長い分が。そして、代金まで忘れていない。
ここで言う、Cが代金で、クレジットの略らしい。
最前線で戦う情報屋は、情報量豊かなのだがなかなか成立しない。俺は大体の情報屋を知っているが、成立させたのは知っている限り彼1人だけだ。
そんな話は良いとして、彼が3戦目、つまり南の門にいる事は確実といえる。俺は気持ちばかりで、
『人手足りるか?』
『20人余り、かな。これたら来て』
そんな事を打ってしまったせいで、参戦しなくてはいけなくなった。
シュータ、リーナは共に「もう無理!」と拒否されたので、一応ネオを連れてきた。一番近くの町に転移すると到着まで5分かからない。
「おっす。お疲れさん」
さっき話していた情報屋に声をかけ、約束の料金を支払った。
彼にはもう既に現実比1万円近くを授けている。
「ようやく来たね? ・・・そこの人は?」
あいさつの後、すぐにネオに興味を持つ。さすがは最前線の情報屋だ。
俺はグランドクエストのNPCだという話とともに、心を持つNPCだと話した。
「はじめまして、私はネオです」
一通り紹介が終わったところで、自ら話してくれた。
「おお・・・! 君が最近有名の・・・!」
「・・・?」
ネオは疑問符を抱えているようだが、クエストを進めることは勿論、始める事すらも不可能では、と言われているほどのクエストのNPCなので、情報屋が喜んでいる理由が分かる。
「君、以外と有名だよ?・・・ネットの方で」
後半を意図として小さくした言葉は、
「本当ですか?」
聞きとれていないらしく、正しく受け取ってくれてはいないだろう。
「とまあ、詳しい事は後でじっくり話すよ。今はボス戦を頑張ろう」
「そうだな。この後じっくり話を聞かせて貰おうかな。情報提供料は出すよ」
変な契約が終わったところで、門が開いた。勝利を意味する。
「さあ、行こうネオ」
「はい」
「ちょっと!? 忘れるなよー」
こんな軽い気持ちでボス戦に挑んだ俺だったが、この後痛い目にあう。
そして、2戦目があった東門では。
「こんなに強いとか聞いてねぇよ・・・」
勝利してはいなかった。むしろ敗北だった。
俺らは、2戦目が負けている事を知らない。
それと、もう一つ知らない事が。――南の門が一番強く設定されてある事だ。
「主体は回避。相手の攻撃と攻撃の合間を狙って攻撃する形で」
「分かった!」
今ネオが初めてため口で返事した気がするが、そんなことは気にならなかった。
指示を出して、ほんの数秒でボスは現れた。形はクモのような敵。一度戦ったことのある敵にも似ていた。しかし、それは他のゲームでの話だ。まさか、とは思って、
「子グモが湧くかもしれない。気をつけろ!」
全体にはそう指示した。そして、それに合わせて全体が動く。しかし、その情報は偽りとなる。
――子グモは湧かさない代わりに、毒ガスを放ってきた。ガスとはいえども、実体があり、形を変えることが可能らしいそれを、刃に変え、一人ひとりに突き刺そうと試みる。
俺には5、6本がこちらに来たが、全て斬りおとす。しかし、適性の無いネオはというと、そうもいかなかった。
両足に1本ずつ、首のほんの少し下に1本の計3本がささっている。各自のダメージ値は低く、ネオの体力を一割程しか削らなかったが、追加効果により麻痺毒を――本来、あり得ない事だと後日情報屋が説明してくれたが――受けてしまってる。
この時、ネオが考えていた事は、意外なことだった。
――あの時と、同じ。
あの時、それは過去に何者かの手によって、動けなくなった時だった。あの時も動けないまま、倒れ、目の前であったことをそのままにしかできなかった。
――コンナコト、ナンテコトモナイ。
少しずつ理性が失われていく感覚。苦しみは何も感じない。その代わりに、途轍もない程の怒りという感情を持っていた。
その時だった。
「・・・オ! ネオ!!」
カズキの声によって目覚める。あいまいではあるが、ネオを起こそうとしていたのだと思う。
「大丈夫か!? 意識が消えてたぞ!?」
この声ははっきり聞こえていて、「大丈夫です」と答えようとした・・・が、声が出なかった。
毒が発言を拒否し、何もできずにいた。
次回は続きから。2編目です。