15 気付かせるため
再会から2時間が経過しようとしていた。
その時にはもう俺は、このゲームの異変に気付き始めていたのだ。
訊いた事あるような、シュータの読み上げたような発言。最初に選択した剣の種類。
そして、今の戦い方とは違うはずの、指示待ちタイプ。
「お前は、誰だ?」
ふと、呟いてしまった。それはシュータにも聞こえたらしく、
「何だって? どういうこと?」
問いただされそうになったので、
「・・・いや、何でもない」
こうして逃れることしかできなかった。
―――――
――疑問は、浮かぶと忘れない物なのか、少し考えていた。これも疑問だと分かった頃には後の祭りだと気づくことになるが、そこまで考える脳を持っていない。
「・・・どうだろう」
最近、ソロプレイヤーとしてゲームをしていたせいか、独り言が多くなった。
それはともかく、流石に確認をしておこうと思って、ウィンドウを開いた。
勿論、ログアウト機能についてだ。ページを開くと幸い、ログアウトはあった。あの男だからまだ手をつけられてない、などというのかと思ったが、それは無かった。
「ログアウトして確認するか・・・」
ボルタに訊くため。通話じゃ信用ができない。
俺は新設されたボタンを、押した。
―――――
シュータはというと、こちらも変な話になったいる。
カズキの方がログインが早く、シュータは少し起動待ちになった。それは良いのだが。
――カズキのプレイ状況を見る事が出来るようなスクリーンがあった。
見慣れたゲームの世界。それは2年間遊んでいたゲームの面影も残しながら、新装されている街だ。
「・・・!?」
ふと、異変に気付く。
自分が、いる。
映像を見せられているのか、それとも本物なのか、それは分からないが、自分がカズキに近づいている。そして言った言葉にも、驚愕することとなった。
自分が一番鮮明に覚えているカズキへの最初の一言。それを、一語一句、間違えずに言った。
それだけではない。他の発言も、あいまいなところはあるが、殆ど全てが昔の発言と同じだ。
「どういう事なんだ・・・?」
疑問を抱えつつも、異変には何となく気付いていた。
―――――
ログアウトをしたカズキは、早速ボルタに問い合わせた。
『はい、こちら・・・』
「少し、話が違うんじゃないか?」
俺は時間がない人のように、必死に問いただす。
『少し待ってくれ。どういう事だ?』
「俺がログインした時、シュータが来たんだが、それが明らかに本人じゃない受け答えなんだよ。どういう事なんだ?」
『・・・気付いたか・・・』
何かを企んでいたかのように、そう受け答えをしてきた。
「いったい何なんだこれは!?」
『それは記憶ベーステストプレイヤーなんだ。ゲームのβ版ではなく、サーバーに残されていた記憶を間違いなく展開できるのか、というテストをするものだよ』
ここでようやくゲームでは無い事を白状したボルタ。
「何をテストするために渡したのかは知らないが、もう使わないぞ。――機械、貰っていいか?」
『勿論、無料であげたわけではないぞ。――見抜いた、報酬とでもしとこう』
ブチッ。
いいと聞けば切るのみだった。
俺はもう二度とあのアプリを使う事は無いだろう。そうなら、これまでやってきたゲームの続きをすればいいだけだ。
しかし、今後使う予定になる事を、俺は知らない。
次は元の軌道に戻る予定です。