11 彼女の探し物<3>
3/4編目。
<追記>
状況を読むのが楽になるため、外伝を先に読むことをお薦めします。
――その発言とともに、この闘いは始まった。
「はあっ!!」
そう言いながら使った技は『目晦まし斬り』と呼ばれる奴だ。
目元に爆薬を置き、爆発したところで回転斬り。ちなみに、システムに無い技だ。
「グラァァァ!!」
その技を零距離で受けると、相当のダメージを負うこととなる。
――しかし、何故か敵の体力は1割も減って無く、せいぜい5分といったところだ。
「・・・何故だ?」
その理由、少し考えるとすぐに分かった。――つまり、『親の心子知らず』とは反対の、『親の身は我が身』のような状況だろう。
「あれは、あの敵特有の、防御手段です」
アヴェルは小さな声で、しかしはっきりと言った。
――あれが、ジルコット・ストーの防御。
「なるほど。了解。じゃ、少し下がってて」
「・・・いいえ、私も戦います」
これが、今日一番の意外な発言だった。
「一緒に戦わなければ意味がありません。――だから、一緒に戦います」
俺は少し悩んだが、彼女の戦闘を思い出して、
「よし、そうしよう」
俺は、許可という選択を下した。
―――――
「はい!!」
そう言って敵を斬り倒したのはアヴェルだ。敵が四散し、周辺は静寂に包まれる。
「よっ、ナイスファイト」
俺は彼女の戦いっぷりを見て、NPCだからと言って油断はできないな、と心に記しとめた。
「ありがとうございます」
戦闘後の彼女は微妙にも表現のしづらい顔を浮かべている。まるで――
――戦闘に恐怖を抱いているような目つきだった。
「大丈夫?疲れてるように見えるけど・・・」
「大丈夫です。心配掛けてすいません」
「いや、そうじゃなくて・・・」
いつか、この闘いが終われば訊こうかな。
そのことも心に記しとめた。
―――――
そして、闘いは終盤へ。
「これでも喰らえっ!!」
この時、俺の愛用である『ブルー・レア』という片手剣が赤く、しかしほんのり青く発光し出した。
こうやって光った時は、剣と人間の気が調合した時のみ。そして、光っている間だけの技が覚醒する。
『スカイブルー・クライマー』。
それが、この剣特有の技だ。
右から斬り倒しを行い、当たった部分には火傷がかかる。その次が左から斬りおろし。氷属性の反応があるため、氷結という効果が発生する時がある。
その後が斬り上げ。最後に斬りおろし。どちらにも火属性効果がある。
「グラアァァァ!!」
これはターゲットにしか当たらないし、ターゲットは相手側からは替えられない。
――つまり、最強と言える一撃。
それをまともに食らった敵は。
「シャアァァァ!!」
生きていた。実際は、防御が低いわけではない。体力が低いのだ。
「ウソだろ!?」
体力は低いので、どうにかすれば一気に持っていけると思っていた。
――しかし、耐性が炎と氷にあるとは思って無かった。
「――どうでもいい。この手で倒してやろう!!」
「私もいるよ!!」
そう声をかけてきたのはほかでもない、アヴェルだった。
「おう!一緒に倒そうぜ!!」
「了解!!」
こうして、今戦のみのタッグが完成した。
―――――
「何、カズキだ!!・・・はい?」
「え、どうしたの?」
そうやって呆気に取られているリーナに、シュータが説明。
「今、カズキはジルコット・ストーの親分と戦っているらしい」
「ウソぉ!!――あんなに強い奴を!?一人で!!?」
「いや、一人じゃないだろう」
そう、あいつにはあのNPCがいる。――あいつなら、しでかすだろう。
でも、この不安な心情は何なのだろう。胸を締め付けるような、心が痛い感覚。
「――行こうか」
「そうね、そうしましょう」
すでに数年を経験している二人だ。阿吽の呼吸などいとも簡単に成立する。
そうして、この二人のタッグも、行動を開始した。
―――――
そう言えば、彼女ってあんなに元気だっけ?
今頃考えなおすと『?』が大量に浮かんでくる。
――それは良いとして、いまは戦闘に集中しなければならない。ここで負ければ、他人との差は圧倒的だ。
「ハアァァァ!!」
そう声を出して放った技は、昔懐かしの、あの技。
『クロス・ジレイサー』。
あの『ソードエンズ・オンライン』の頃の、かつて最強と呼ばれていた技。その打撃数は今でも最高を誇っている。その数なんと、52連撃。
――昔は、38連撃だったが。
この時、俺の覚醒が始まる。右手にしかなかった剣が、左手にも。
体自体に攻撃判定を持ち、属性は『無』。つまり、有利不利が無い。
「ぶっ飛べー!!」
右に左に。そして、上に下に。
超高速である一撃クラスの技がかけ合わさったかのような、必殺級の技。
「私も!!」
そう言ってアヴェルも攻撃を開始。短剣技は知らないので、彼女に任せることにした。
――そして、彼女の技も最高級クラスの技の予感がした。
この調子で攻撃を続ければ、勝てるかもしれない。
しかし、そう思えたのも一時の間のみだった。
『クロス・ジレイサー』が外伝に出るのはもう少し後ですが、気長にお待ちください。
<予定>
・4/4編目はこの編の投稿日の12時間後に投稿されます。
・外伝は8月上旬投稿予定。遅くなってすいません。