10 彼女の探し物<2>
2/4編目。3日連続投稿。
それから6時間後。
俺はまた捜索を開始した。
「本当に、あるのか・・・?」
そう。今日だけでもう10時間も捜している。正直、見つかりそうにない。
「・・・本当にすいませんっ!!」
そして謝ってくる彼女――名を『アヴェル』というらしい――。これが、さらに気を圧迫する。
「良いや気にしないで。第一、手伝うって言ったのは俺だし」
むしろ、ここで止められたら俺のいる意味が無くなる。
「・・・・・・」
捜すのに熱中して無言になるとか、この世はどれだけ安全になったんだろう・・・とか考えながら捜していた。
――そして3分後。事件は起こった。
「・・・!いた!!」
ジルコット・ストーと呼ばれる敵が、俺らの前に立ちはだかった。
「・・・こいつか・・・」
凶悪な目つきと岩のような殺人兵器、と記されてあるそれは、こちらに向かって走ってきた。
「・・・!」
――動きが、鈍い。敵のではなく、自分の。
走りはそのまま突進へと変化し、俺の体に直撃。
「ぐはっ!!」
こちらから手出しができない。その時、途轍もない絶望感を味わった。
――俺が、何もできない。
ゲームを一時していなかったこともある。そのせいで、瞬間的な伝達速度が鈍っている。
「俺は、・・・何も出来ないのか?」
そう考えていた時、2度目の突進が。
――はい、俺の人生終わったー。
その気持ちが、俺の体を本能的に動かした。
「はあぁっ!!」
右斬り上げ。ジルコット・ストーの左手と呼ばれる部分を破壊。
その後の左斬りおろし。右手も破壊。
「まだだっ!!」
剣技と呼ばれるわざ、『オール・ブレイク』発動。回転斬りの後の突き。
――ここで、ジルコット・ストーの胴体が消え、四散した。
「はあ・・・久しぶりってきついな・・・」
この対戦では落ちなかったが、光り輝く光石を20個も取らないといけないとか。
「ちょっと、し無さすぎたかな・・・」
この異世界ゲーム、自分の体力などまでが反映される。つまり、運動をしていて反応速度が速い人は有利なのだ。
「・・・運動でもしようかな・・・」
そう心に決めた俺であった。
―――――
翌日。
今いる場所は自宅の前。ジョギングをしてきたのだ。
「はぁ、きつい・・・」
これでばてる体だからゲームで動けないのも仕方ない。
ちなみに、走った量は3キロないくらいだ。
「よーし、休憩とったし、ゲームしようかな・・・」
そうして、ゲームを開始。これが朝の8時。
「はあっ!!」
この掛け声とともに、敵であるジルコット・ストーが落とす『光り輝く光石』を一つ入手。
これが朝の10時。
「はあ・・・」
この後1時間はジルコット・ストーにすら出会わなかった。
――しかし、この時。
「グルウゥゥゥゥゥ・・・」
何かの声。
「こっちだ!」
そうやって行った先には。
――紛れもなく、ジルコット・ストーの親分。
名が『ジルコット・キングス』となっている。
「・・・ウソだろ・・・」
まだ完全復活してない俺に、こんな強い敵は必要ない。
そう考えていた時、メッセージが。
『言い忘れてたけど、ジルコット・キングスからもドロップするぞ。――そいつ一体で20は集まるだろう』
「まじかよ・・・」
これこそ『究極の決断』と呼ばれる奴か。
1は『地道に、安全に作業していく』。2は『危険を冒してまで、効率よく入手する』だ。
――これなら当然俺は2を選ぶ。可能性が無いとは言えないからだ。
「行くぞ・・・」
剣を構えて、相手の様子をうかがおうとした時点で、もう相手は当たっているかどうかの紙一重のところにいた。
「うっそお!!」
反則だろ!!少しは待てよ!!
そう思ったが、モンスターには礼儀という言葉を知らない。
――そっちがその気なら。
小手調べとして、一番好きな基本技、右斬り上げをした。
的には、残念ながら擦れた。しかし、防御値は低いらしく、擦れただけなのに敵の体力の5分は持っていった。
「それでも・・・!?」
それでも親分か!!と言おうとしたところで、俺は息を詰まらせた。
――親の血から、子分が完成、否、生成されていく。
「・・・うっそお!!」
まあ、こんな反応になるのも当然だ。
もうすでに子分の数は10を超える。
「・・・どうやって、勝てって言うんだ」
とにかく、闘いは始まった。終わりがどうであれ、逃げないのが男だ。
「・・・よし!!来い!!!!」
何が良かったのかは知らないが、この発言で闘いが始まった。
―――――
「そっちはどうだ?」
「こっちは順調。あと30人ゲームオーバーで発動」
とある企業の会話。
「10000ゲームオーバーで発動できるあの機能、ようやく使えるんだな」
「そうだ。何カ月も待ったかいがあったぜ」
そう。ここはエネクトロニック・オンラインのサーバー管理社だ。
そして、あと30人という、謎のカウントダウンが、今―――
――始まった。
新小説『ゴミスペック!!』8月投稿予定。