9 彼女の捜し物<1>
4話編成です。(今回は)
翌日、ケータイに入っていたメール類を速攻で削除し、何事も無いようにログインした。
今日は土曜日。なのだが、午後からバイトのため急いで続きのクエストをすることにした。
「・・・あ、いたいた」
実は昨日、集合時間と集合場所を予め決めていた。
「やあ、今日もよろしく」
「はい、何度もすいません」
最近、NPCがもの凄くかしこまっている気がする。彼女が好例で、何かあったらすぐ謝る。俺はあまり得意ではないのだ、すぐ謝る人が。
人じゃないからか気にした事はあまりないが。
「今日はここのダンジョンにある・・・」
彼女が袋から何かを取り出し、見せてきた。
「この『光り輝く光石』を20個ほど欲しいのです。ついて行きますんで、お願いしていいですか?」
俺はその光石を見せてもらい、あることに気付いた。
(これ確か、モンスターのドロップ品だった気が・・・)
ここで断ると予定が台無しになるので、今日出来るかは別で引き受けることにした。
「分かった。今日で終わるか分からないけど、一応行ってみよう」
「ありがとうございます。・・・用事があるなら別の日でもいいですよ?」
そこは気を使う所じゃないよ・・・と心の底から思っていながら、
「い、いや大丈夫だよ」
そう答えた。
5分後。
ゲーム内で検索した結果、『ボス級の敵を倒すとたまにドロップするアイテム』という事と、『特定のモンスターを一定のタイミングで倒していく』と手に入るという情報を手に入れた。
――しかし、疑問は二つ。
1つ目は、『ボス級』とは、どれが基準なのか。
基準が分からない限り、正直何時間かけても無駄に過ぎない。つまり、1つ目の方はほぼ不可能。
2つ目は『特定のモンスター』が何なのか。
3つ目は『一定のタイミング』の幅。
この疑問は、やってみるしか分からないが、正直こちらも無駄になりそうだ。
「はぁ、どうすればいいんだよこれ・・・」
悩んだ挙句、最終手段を使うことにした。
――情報屋に、訊く。
俺が知ってる情報屋は、お金稼ぎ目的が多いが、情報量は多くない奴らばっかりだ。――売れて無いらしいが。
その中に、飛び抜けて情報量が多い奴がいる。名を『ジルコ』と呼ぶ。
前回訊いたときは、配布後すぐの情報を偽りなく教えてくれていたのだ。
『光り輝く光石ってどのモンスターから出る?』
そう訊いた直後。
『ジルゴット・ストーってやつから。――100ミン』
情報料とともに、そう答えられた。
ジルコット・ストーとは、岩の形をしたクモ型モンスターらしく、やたらとごついらしい。
その辺の情報はともかく、出現場所が南の森だと聞いた。正直、何日かかるのか分からない。
「とにかく、出発するか・・・」
今頃だが、変わった物がいくつかある。
1つ目は『街の自転』。全範囲をクリアした後、理由は不明だが街の転移、通称『街自転』が無くなったらしい。――でも、理由は『クエスト攻略が安易になるから』とかだろうと予想している。
2つ目は『通貨』。前は何だったか覚えてないが、全マップクリア後にアップデートで通貨が変わった。
――それまでの通貨は使えなかったらしい。
3つ目は『クエストの量』。これも全範囲をクリアした後、projecter達が増やしていったとともに、適性審査つきではあるが、クエストを作ることが可能になった。――今では、6000ものクエストが揃えられているのだが。
おもに3つ。その他は重力パラメータの調整などで、前よりは現実に近くなった気がする。
マップも広くなった気がするが、これだけは変わって無い。南の森と言えばマップの最南端エリアである。
「自転ってありがたかったんだな・・・」
今頃そう思ってしまった俺であった。
―――――
そう思った1時間後、
「どこで出るんだよ・・・」
そうなった。
「あのとき一緒に訊けばよかった・・・」
今頃後悔し出す俺と、
「・・・大変ですね・・・」
と人ごとのように言う彼女。
――こうして、今日の捜索は終了へと近づいていった。
―――――
この二人、実はこの後・・・彼らの身に何かが起こる。
そう、予言者でもある情報屋はそう言った。
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