5-4 自作剣技<4>
『自作剣技』編、ようやく完結。
話し合いが一段落した頃、シュータは。
――さらに突き進んでいた。
森を抜けて、岩山までも抜けて、その先は湖。
そこには、一人の姿が。
「来るか・・・?」
――相手は、まだこちらに気付いて無いようだ。
ここぞと思い、一応『隠蔽』と『幻惑』を使い、隠れて射撃。
どうか!?
そう思ったものの、一発で即死は無いと判断した。――例え、その人がヒットポイントが少なかろうと。それはともかく、その敵は。
「・・・誰かと思えば、あなたでしたか」
聞き覚えのある声。つまり、組んだことのある人、もしくは古参。
前の方は無いと思っていい。理由、それは『僕がカズキ以外と組んだことが無い』からだ。自慢できることではないが。勿論、NPCを除いて。
しかし、いまだに思い出せない。こいつは誰だ?
その静寂の中、相手が名乗り始めた。
「覚えて無いようなので、名乗りますよ。――私はルギウス。あなたとは公式デュエル戦で闘い、あなたに勝った者です。まだ、覚えてませんか?」
何を言っているんだ、こいつは。
まだ公式デュエル戦などは行われていないし、このゲームでは一度も負けたことが無い。
その心情を見透かすように、相手はこう言った。
「勘が悪いですね。説明しましょうか・・・あの『実質デスゲーム』で、ですよ」
何を言っているのか、その全てを悟り、その頃の記憶がよみがえってくる。
あの時、――確かに、俺はあいつに負けた。
最後、手筋を見極められ、フェイントを無視して攻撃してきた奴がいた。
――本当に、あいつなのか。
その時、またもや見透かすように、相手はこう言った。
「攻撃は最大の防御、でした。――あの頃は、命の大切さが分かってい無かったから、あんな事が出来たんです」
僕の返答を待たずに続ける。
「でも今は、あの頃フェイントをかけたあなたを、優しい人だと考えています。――こちら側からすれば、『敢えて攻撃しなかった』とも読めるからです」
なるほど、だから僕に気付いても敬語で優しく喋っているのか。
納得し、ここから去れる、そう思った刹那。
――ルギウスの青白い剣先が、僕の頬を掠めた。
「だからこそ、その時のお礼をしたいので、あの時の続きをしましょう」
「・・・分かった、そうしよう。でも、今の不意打ち分は回復させてくれ」
「了解しました。あなたがスタートの合図を出して、それに従います。勿論、そこからは手加減なしですよ」
そうして、昔の決着をすることにした。
最悪、ここで退場する事も考えなくもなかった。
しかし、降参の文字に、手が動こうとしなかった。ここで降参すると、この相手に申し訳ないと手が伝えているのか。
――いや、違う。そんなものではない。
この相手は、一度負けた相手。だから、リベンジを果たす。
その意思が、手を動かさなかったのだろう。
その頃、相手のルギウスは、俺が自動回復する間の5分間、敵という意識を忘れたかのように、じっと、待っていた。
そして、全回復という、決闘の時間がやってきた。
「・・・時間です。今から、始めますよ」
「望むところだっ!!」
僕の初撃、それは体側からの斬り上げ。相手は、一発目から『剣技』を使おうとした。その光の強さからして、初歩レベルの技と予想した。しかし、推測スキルは危険、としか示していない。
まだスキル値が低いのか、それとも本当に――。
その答えは、手口にあった。
実はルギウス、隠しかつシステム外の『剣技発光抑制』を使っている。つまり、最高威力の剣技でも、光の威力を抑えて低級風に変えられるのだ。
僕は、その光だけを信用し、判断を誤った。
左からの突き。これは右に回避。しかし、見えたのはこれが最後だった。
自分の視界が黒くなり、やがて――
数分後、死亡という文字を浮かべて、ロワイヤルが終了。この後、ルギウスが優勝したらしい。
6「動き始めた世界」は7月頃。
他サイトには8月投稿。
8月頃より、少し投稿間隔が縮まります。
2週間に1回くらいです。(予定)