ハル
顔を顰めながらそのチャラ男に向き直る
「それで?一体なんの用なのかしら?」
「用?別にそんなのはないよ~、ただ君とお話してみたかっただけ~」
「……」
ついはあー?!と言いたくなった気持ちを必死で押さえ込み眉を顰めるだけに止めた
「それならもうそれは果たされたってことになるわよね?悪いけど、あなたのお遊びに付き合っている暇はないの」
こちとらかわいいかわいいコレットを待たせてるんだよ!!
「ははっ、冷たいな~、本当にあいつが言っている子と同一人物~?」
おかしそうに笑うチャラ男にさらに不信感が湧いてくる
こいつの言うあいつってのは一体誰だ?それに、さっきの言い方じゃあ、こいつが今の私じゃない、もう一人の私を知っているような言い方じゃない
「何が言いたいのかしら」
「いんや~、ただセツィーリア様はなかなかに演技がお上手だな~と思っただけ」
「……あなた、何者?」
「おっと、これはうっかりしてたよ、まさか名乗り忘れてたなんて」
別にそういうことを聞いているわけではないのだけど…
「俺の名前はハレンメア・コロンス。親しみを込めてハルって呼んで~」
「親しみは込めないけど、あだ名があるならそっちを呼ばせてもらうわ」
「…へえ~、意外だな、セツィーリアちゃんがそう言ってくれるなんて」
「?言っている意味が分からないわね、"ハル"の方が短くて呼びやすいじゃない」
「そういうこと?」
「どういうことよ」
何言ってんだこいつ
どうもいまいち会話が噛み合ってない気がするんだけど
首を傾げる私を見てチャラ男、あっ間違えた、ハルは一瞬だけ呆けた面をしたかと思ったら
「ふはっ!なるほど、確かにちょっとおかしいねセツィーリアちゃんは」
いきなりディスってきやがった
「え?喧嘩売ってるの?」
真顔で頭に怒りマークをつけながら小さく呟く私の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、ハルはツボに嵌ったのか暫くの間肩を震わせて笑っていた
なんだこいつマジで
馬鹿にされてるようでかなり気持ち的には不愉快だが……
…こいつがさっき一瞬だけ見せた笑顔は
あれだけは
「嘘くさくなかったんだよな…」
なぜだかとても印象的だった




