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一つ一つ解いていきましょう



馬車に揺られながら数十分

気を利かせてくれたのかシェリーの怪我の手当てを済ませた後、ルーク様は馬車から降りて自分の馬に乗り換えた


私の隣でキュアラちゃんが毛布に包まって眠っている

シェリーはさっきからずっと頬杖をついて外を眺めていた


正直聞きたいことが山ほどある

でも、それを今ここで素直に聞いてもいいものだろうか…


困った…普段ならもっとうまくやれるのに…



ううううううう、やっぱここは大人しくしといた方が



「そんなに見つめられたら穴が開いてしまいます」


「へ!?」



バチッとかち合う視線

ニッコリ微笑まれてつい引きつった笑みが浮かんだ



「そ、そんなに言うほど見てた?」


「はい、それはもう舐め回すように」


「し、信じられない…!まさかここまで無意識のうちに私の中の変態要素が進化していたなんて…!」



な、なんたる不覚!


頭を抱えて本気で落ち込む私の向かいからクスクス笑ってる声が聞こえた


おいおい、被害者

物理的じゃないとは言え軽いセクハラ受けてんのに何笑ってんだよ

あとセクハラしかけた私にツッコませるなよ



「ふふ、嘘ですよ。聞きたいことがあるんですよね?」


「あっ…き、気づいちゃった?」


「私はセツィーリア様ほど鈍くはないですよ」


「君が鋭いのは分かったからそこでなぜ私を貶す」



普通に自慢すればいいじゃん!!

あと私鈍くないから!!自分で言うのも何がけどフラグには敏感だし馬鹿そうに見えるだけで結構凄いんだからな!?



眉間に皺を寄せてシェリーを睨むも全く相手にされない

ふむ、やっぱりかわいい顔が睨んでもかわいくなるだけだから効果はなしか

セツィーリアよセツィーリア、もう少しお父様に似て目つきやら顔つきが厳つかったら………あっ、やっぱなんでもないっす、この顔が一番です、ちょっと目つきが悪いくらいが愛嬌ですもんね!!うん!



「セツィーリア様」


「いやいや、別にお父様にもっと似たら友達絶対出来ないとかそんな失礼なことこれっぽっちも」


「何を聞いても私は大丈夫ですよ」


「……」



そう言うシェリーの顔は穏やかで無理してるようには見えなかった

だから私も変な遠慮をすることはやめた

だって、そんなことをしたら前に進もうとしてるシェリーに対して失礼だと思ったから



「それじゃあ、まず、シェリーはなんで私達あそこに捕らわれてるって分かったの?」


そう聞けばシェリーは特に驚いた様子もなく自分の懐に手を入れた


そして取り出したのは少し年季の入った銀の懐中時計だった



「懐中時計?」


「はい、父の、形見なんです」


「…え?」


形見って


「これは母が父に送ったプレゼントで世界で一つしかない物なんです。だけど、二年前のあの事件以来、この時計だけは行方知れずだったんです。父はいつも肌身離さず持っていたのに…」



そうか…そういうことか


事件が起きた日からないってことはどこかに落とした、もしくは誰かに取られたということだ

時計は燃えることはないから、この場合真っ先に考えるのは


犯人が取って行った、ということだ



「そして極めつけは、これです」


懐中時計の上蓋の内側を見せてくるシェリー

そこには"Hell again(地獄を再び)"…と刻まれていた


「一度目の地獄を見たのは自分の家だったので、あの男のやり口から考えてまた同じ場所を選ぶと踏んで、あそこに向かいました」


「そして見事にビンゴだったと」


「はい」



パチンッと蓋を閉め懐へと戻すシェリー



淡々としてるけど、シェリーは本当に凄いと思う

どこがって、どんな状況でも頭が回るとこだ


私ならそうはいかない、きっと訳が分からなくなって焦って慌てて、パニックを起こすことしか出来ない

でもシェリーは自分で考えて正解を導き出した

どんなに怒りや憎しみに苛まれてもシェリーはきっとどこか冷静だったのだろう

そこは素直に凄いと思う……けど、時々その冷静さが怖くなる

もしかしたらシェリーがまた自分を省みない時がやってくるかもしれないと考えると無性に怖くなってくる



冷や汗がドッと出た

一瞬想像しただけで背筋が凍る



「聞きたいことはそれだけですか?」


俯いていたからもう終わりと思わせてしまったのだろう

慌てて顔を上げて表情を作る



「待って待って!まだある!どうして王室騎士団にあの場所が分かったの?私はてっきりシェリーがあのクソ野郎の残した手がかりを頼りに皆で助けに来てくれると思ったのに」



なのに蓋を開けてみれば最初に来たのはシェリー一人だけだし、挙句の果てに助けに来てくれたのは王室騎士団の方々

もう改めて考えても頭がパンクしそうだ



「王室騎士団のことは私にも分かりませんが、場所に関してのヒントはユーリ様に託したんです」


「ユーリに?」


「はい、ユーリ様にある物をエドナルクさんに渡してもらったんです」


「もったいぶらずに教えてよ!ある物って?それになんでエドさんに」



身を乗り出す私に呆れることもなくシェリーは落ち着いた口調のまま続けた



「私がユーリ様に渡したのはエドナルクさんから頂いた万年筆です。正確にはエドナルクさんが私の父に、そして父が私にくれた物なんですけどね」



エドさんとシェリーのお父様が旧友なのは知ってる

だから別に物をあげたりしていることに驚きはない…けど



「それでどうしてあの場所が分かるってことになるの?」


「分かりませんか?事情を説明し終わった後にあの万年筆を渡されれば、エドナルクさんならすぐに私達アーレス家が関わっていることに気づくと思ったんです。私は特に何も言っていなかったのにエドナルクさんは最初から私の事情を全て知っていた、おそらく私の目的も」


「……あぁだからか、納得。確かに、エドさんならすぐに気づくね」



あの完璧超人に分からないことなんてない

その上シェリーの残したヒントの意味に気づかないなんてそんなことは万に一つもないわな



「はい……でも、少しだけ予定が狂いました。私は助けがくる頃には全てを片付けて、終わらせたかったんですけどね」



へラッと笑うシェリーを見ても私は全く笑えなかった



その言葉の意味が分からないほど私は無知じゃない







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