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ピンチです





「……シェ、リー……?」



待って

感情の整理をさせて


これはシェリーが助けに来てくれたことを喜ぶべき?

それとも自分たちのせいでシェリーがこいつの前に現れなければならなかったことを悔やむべき?




……………違う、どれも今の私の感情には当てはまらない……シェリーのこんな顔見たら湧いて出てくる感情は一つ






恐怖だ





シェリーが一歩一歩歩みを進めて私とクズ野郎の対角線上に値する位置に止まる


何も喋らないし

こっちを見ようともしない

ただずっとクズ野郎を睨み続けている



静かすぎる空間で聞こえてくるのは耳元で鳴っているような自分の心臓の音だけだった



「お前が用があるのは俺のはずだ。2人は関係ない」



ドスの効いた声で言うシェリーに対し男はただただ可笑しそうに笑った



「ははは!!何言ってんのお前?!関係ねえわけねえじゃーん!!…お前にとって大事な奴は(ぜーん)員俺の獲物になるんだよ!まあ?思わぬ拾い物をしちまったが……」


そこで男は横目で私を一瞬チラッと見た

びくっとなる私を見てすぐに目線はシェリーに戻されたが下劣な笑みが浮かんでいる

本当に……気持ち悪くてしょうがない



「それも充分エサの役割を果たしてくれたしなあ!!……しかも期待以上に」


「……ふざけたことを…!!」



遠目からでもシェリーの拳が強く握りしめられているのが分かる

あぁ、ダメだよ

そんなに握り込んじゃ手が傷つくよ

のんきにそんなことを思いながら、私は徐々に男の声をシャットアウトしていった

聞こえてはいる……けどわざわざこの男の言葉で感情を乱されるのは馬鹿馬鹿しいと思ったから"私にとって不要な者"に対する何も聞かないモードに入ることにしただけ



「クハハ!いいねぇその顔、もっと悔しそうにしろよ、俺にもっとその歪んだ面を見せてみろよ?どうだ?気分は!ずっと探してた俺と会えた感想は!」


「……………」


「おいおい、黙って睨むだけとか面白くねえだろ?俺は知ってんだぜ?お前が俺の情報を二年前から死にものぐるいで集めまくってたのを」


「……だまれ」


「あ?なんだよ、聞かれてまずい相手でもいんのか?クハハ……おいそこのガキ!お前こいつと仲良いみてえだけどこいつが今まで何やってきたのか知ってるか?知らねえだろ!教えてやろうか?」


「…黙れ」


「こいつ、情報収集するために自分の顔利用して片っ端から女と寝まくってたんだよ!あー、思い出すだけで笑えるわ!どうだあ?俺のおかげで女と寝れた感想は、気持ち良かったか?がははははははははは!!」


「黙れ!!!」



高笑いをする男とここに来て初めて声を荒らげるシェリーを私はただ無表情で眺めていた



そこで男はいきなり笑いを止め私に目を向けた

だけどシェリーは全然こっちを向こうとしない

ずっと下を向いて歯を食いしばっている



………この男、わざと私の前で恐らくシェリーが私に知られたくなかったことをぶちまけたんだな

私の反応を見るために

…………シェリーを傷つけるために



反応ね……シェリーがそんなことをしていたって聞いて私が取るべき反応って……




「最低ね」



今度はシェリーがびくっと体を震わせたのが見えた

そして、視界にも入れたくない男がさらにニヤリと気持ち悪く笑ったのも



「汚い、そんなことをするような人だとは思わなかった、ありえない、気持ち悪い」


「…クハハハ……おいおい、そこら辺にしといてやれよ、さすがに」


「なんて言うと思った?」


「哀れになっ………はあ?」


「…へっ?…」



ちょっとちょっと、なんでシェリーまで驚いてるわけ?物凄く心外なんですけど!!



「シェリー、私があなたのことをあんな風に言うわけないでしょ?」


「でも……今の話を聞いたら」


「だから?」


「え?」


「聞いたから何?まず私はそこの男の言葉を一切信用してないわ。そして、もし仮に今の話が全部事実だとしても!…私があなたを嫌うことなんて絶対にありえない」



しっかりとシェリーの瞳を見つめ返しきっぱりと言い切る

それまで顔面蒼白だったシェリーだったが、心なしか少し顔色がマシになったように感じた


ごめんね、あんな紛らわしいマネしちゃって

でも、どうしても許せなかったの

どうしても、この男に一泡吹かせてやりたいと思ったの



シェリーから男に視線を移す

さっきの余裕綽々の笑顔はどこへやら、今じゃこの世の全てが気に入らないっていう顔がそこにはあった



「残念だったわね誘拐犯。あんたの思惑じゃ私にシェイルスを軽蔑させて傷つけようとしてたのかもしれないけど、お生憎様ね!私とシェイルスの絆はあんたごときのモブが傷を付けられるようなもんじゃないのよ!!」



そう怒鳴ってやれば


ガタッ!


と椅子音を立てて動き男はこっちを鋭く睨みながら近づいてきた


「私はね!シェイルスの過去なんて気にしないわ!過去は過去であって現在(いま)じゃない!前に進み始めてるシェイルスの邪魔は許さないって言ったはずよ!あんたみたいないつまでも過去に拘ってる奴をシェイルスと一緒にすんな!!」



続けて怒鳴れば更に歩行を早める男

なんだ?やんのかこらあ!

こっちだって負けないんだから!!縛られてるけど!未だに床に座り込んだままだけど!それでも絶対あんたなんかにはビビらないんだからね!!



お互い睨み合って目の前に男がやって来るって思ったその時



「…それ以上近寄ったら殺す…!」



シェリーがいきなり私と男の間に割り込んで来た

しかもどっから取り出したのか、その手にナイフも携えて



ピタッと歩みを止める男

でも私にはそいつの表情を確認してる余裕なんてなかった



「シェリーやめて!!」


今はなんとしてとシェリーを止めないと!!



「……セツィーリア様、ありがとうございます。あなたの言葉はいつも私を救ってくれます」


「だったら私の言うことを聞いて!その手に持ってる刃物は離して!」


「すみません、それは出来ません。……俺は絶対にこの男を許せない、一度ならず二度までも…!!」



右手はナイフをかざしたまま左手は私やキュアラちゃんを守るように広げられていた


どうしよう…どうしよう!!シェリーは本気だ…!近くにいるから分かる

本当にシェリーから殺気が出てる、空気がピリピリしてる



何かいい方法は!?とパニクる頭で必死に何かを絞り出そうとしたその時



「お前…本気で俺を殺れると思ってんのか?」


バカにしたような含み笑いを浮かべながらシェリーに凄む男


私もシェリーも座り込んでるかしゃがんでるかしてるから、下から見上げる分顔の傷も相まって余計迫力があった



「あぁ、思ってるさ。例え刺し違えても俺はお前を」


「無理だな」


「…無理なんかじゃ!」


「もっかい聞くけどよおー!…お前そのガキの前で俺の事本当に殺せんの?そのちっちぇナイフでよお、俺のここに振り下ろせんのか?あん?」


「!…っ…」


そう言って自分の心臓がある部分をトントンと叩く男にシェリーは何も言い返せないでいた



とりあえずなんであれ、シェリーが躊躇ってるうちに説得をしなきゃ!と思って口を開こうとした瞬間



シェリーの張っていた気が緩んだことに気づいたのは私だけじゃなかった



「オラァっ!!」


「うぐっ…!!」


「っ!シェ、シェリー!!!」




一瞬何が起こったのか分からなかった

気づいたらシェリーは私の数メートル先に吹っ飛ばされていてお腹を抑えて蹲っていたし男は振り上げた足を戻してゆっくりとシェリーに近づいていくとこだった



頭の中で警報が鳴ってる

でも足が動かない

体が動かない



「シェリー……シェリー!!逃げて!逃げなさい!!」



辛うじて声を絞り出して叫んでもシェリーが立ち上がることは無かった


そうしている内に男はシェリーの元に辿り着き足でその体を仰向けにさせてからその上に跨って今さっき蹴られたシェリーのお腹の上に座り込んだ


ドガッと座られてまた呻くシェリーを見て楽しそうに笑う男

シェリーが危ないシェリーが危ないシェリーが危ないシェリーが危ない!!!



「誘拐犯!!シェリーになんかしてみなさい!絶対に許さない!地獄よりも酷い目に遭わせてやるから!」


「ククッ…おいガキ、てめえは黙ってろ、後でたっぷりかわいがってやるからよお!…だが今はこいつだ」


「ふざけないで!!そこからどきなさい!!」


「おいシェイルス、お前はこの2年何も変わっちゃいねえなあ?俺に大事な奴を2度も手出された気分はどうだ?俺は最高だぜ?お前の母親を殺った時なんか特に興奮したよ、あの綺麗な顔が恐怖に歪んで俺しか目に映ってなかったからなあ!」


「シェリー!!シェリーしっかり!!」



男がシェリーに顔を近づけて何か言っているがこの距離じゃ何も聞こえない

でも男の表情を見れば明らかに胸糞悪い話をしていることだけは分かる



「ほら聞こえるか?あのガキがお前を呼ぶ声を。だけど残念だったな、あのガキももうじきお前の母親と同じ目に遭わせてやるよ」


「あの子に手を出してみろ…この世で最も残酷な殺し方で殺してやる…!!」


「おいおい、こんな無様な姿を晒しても威勢だけはいいな!…安心しろよ、お前を動けねえくれえボッコボコにして半殺しにしてから俺はたっぷりと楽しむことにすっからさ、お前は動けねえ体でも引きずって大人しく横で見てるんだな、俺がお前の妹諸共あのガキを犯して殺すところをよお!」





声までは聞こえなくても2人が会話している事だけは分かった

まずシェリーの意識がちゃんとある事に一安心しようとしたら






男が腕を上げ、拳を振り下ろしたのを見た










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