硬いにもほどがある
場所は庭で、ユーリとクロスは仲良くクッキング中です
シェイルスさんがうちの家庭教師になってから約三週間が過ぎた
週に三、四回のペースでユーリと私に勉強を教えに来てくれている
そして教え方が抜群にうまい!
シェイルスさんの担当は主にユーリだから仕方ないのは分かるが、二週間を過ぎた辺りからユーリの学力は私と匹敵するくらいになっていた
というかどうやらユーリは私と違って理系が得意だったらしく、そっち方面では既に私より知識があった
なんつうか、ユーリが成長するのは嬉しいんだけどさ、弟に追い抜かれるのって……地味にショックだわ
「この気持ち分かる!?シェリー!」
「セツィーリア様がお酒も飲んでないのに酔っているのは分かります」
三週間も過ぎれば馴染むのは当然で、かと言って変な酔っ払いみたく絡んでいいということではない
分かってる!分かってはいるんだけど!!
「寂しいもんは寂しいんだよー!!」
ビールジョッキがあったらテーブルに叩きつけてる勢いでテーブルに突っ伏す
向かいには優雅に紅茶を飲んでいるシェイルスさん
さすが順応力もすごいよこの人
週の半分も会っていればボロなんてすぐに出るもんで、その上私は気を許した人には自分でも知らないうちにお嬢様の抜けたセツで接している時があるらしく、シェイルスさんに対してもいつの間にか本性を隠さなくなっていた
最初は当然驚いていた、そして戸惑っていた
つか私も焦った
でも、性格上すぐに、まあバレたもんはしょうがねえ!と開き直ることにした
それにシェイルスさんには素で接したいって思ってたから
その気持ちを伝えて、普段も徐々に素で接してるうちにシェイルスさんも慣れたのか普通に接してくれるようになった
そして私の奇怪な行動にもまったく反応しなくなっていた、いやあ強者だ
「シェリーもお兄ちゃんなんだからそういう気持ちになったことはないの?」
「ないですね…あとやっぱりそのシェリーってやめてくださいよセツィーリア様」
苦笑いを浮かべるシェイルスさんことシェリー
ちなみにそう名づけたのは私なのだ!あっ、知ってた?言われなくても知ってた?
そうだよね~、そう呼び始めそうなの私くらいしかいないもんねー!…ってやかましわ!
……あー、コホンッ
まあ、そう名づけたのはいいが本人がちょっと渋ってるのは残念でならないよね
「えーなんでさー!あと、シェリーこそ普通にセツでいいって言ってるのに」
「そういうわけにはいきません、ノワール家のお嬢様を愛称でなんて」
「そのお嬢様が頼んでるのに?」
「ダメなものはダメです」
「……シェリー頭かてえな」
「…セツィーリア様その口調外で絶対にしてはいけませんよ?」
「大丈夫ですう!私外での猫かぶり完璧ですから」
ニヤッと笑ってもシェリーはため息をつくばかり
心配性だな~
「そもそもなぜそんなに呼び方に拘るんですか?」
「だって愛称で呼びあった方が仲が良いって感じがするじゃん!」
「…仲良しですか……セツィーリア様は私と仲良くなりたいのですか?」
はあ??!何その呆けた顔と今更な質問!
「私はもう既にシェイルスさんと仲良しって思ってたんだけど!?だからさらに仲良くなりたいからシェリーっていう愛称もつけたんだよ!」
なのにその言い方じゃあなんか私だけ一人で盛り上がってる痛い子みたいじゃん!!
むくれる私を呆然と見つめるシェリー……もうこうなったら意地でもシェリー呼び続けてやる…!!
ていうかそんなに驚くこと?私かなりフレンドリーに接してたつもりだったんだけどまさかそれに気づかないほど鈍感ってことはないよね?
鈍感なのはヒロインだけで充分だから!鈍感ポジはヒロインのものだから!
「…ねえ、何か言ってよシェリー」
「え?あ、はい…セツィーリア様にそう言っていただけるなんて光栄です」
「かたっ!!かっっった!!カッチカチに凍った氷山かっての!私が求めてたのはそういう返事じゃない!!」
「お、落ち着いてください、レディがそんな鼻息荒くさせてはいけませんよ?」
テーブルに身を乗り出して詰め寄る私と慌てて止めようとするシェリー
あーそうだろうよ、そりゃ慌てるよなあー!だってノワール家の一人娘が鼻息荒くさせてこんな行儀の悪いことしてんだ!誰かに見られたらそりゃ焦るよなー!
だがな!!
「私の奇行は既に周知の事実!我が家ではこれが日常だからノープロブレムなんだよ!」
「胸張って言えるようなことじゃないです!」
思わぬところでめったに聞けないシェリーの勢いのあるツッコミが聞けた
「ていうかそもそもなんでシェリー呼びそんなに嫌がるんだよ?ちょっと傷つく」
「いえ、決して嫌というわけでは」
「じゃあなんだよ」
「………シェリーってなんだか女性の名前みたいじゃないですか」
「それで?」
「だから、ちょっと…」
「恥ずかしいとか?」
「……」
「乙女かっ!!」
ていうかあんた照れてる顔美少女にしか見えないからやめろ!(嘘ですやめなくていいです、レア顔万歳)




