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ぶちかましてやりましょう




あの日



ユーリが本当の意味でユーリ・ノワールになった次の日



今まで弱弱しく笑っていたユーリが打って変わって表情豊かになった姿を見て、クロスは一瞬だけ目を見張ったがその後すぐに嬉しそうに微笑んだ。と言ってもそのレアスマイルもすぐに見納めになっちゃったんだけど


そして、クロスは私に何も聞かずにただ一言



「お前もあいつも、良く頑張ったな」



「え?」と聞き返す暇もなく、サッと私の頭を一撫でしてからクロスはユーリの方へと向かっていった



出会ったときからクロスは子供なのに聡い子でいつも周りを良く見ていた


そして今回も、何も知らないはずなのにこうして全てを察してくれた上に、たった一言で私を舞い上がらせる


私が前世の記憶を取り戻してから、一番近くにいてくれたのはクロスだった

クロスが私をただの女の子"セツ"にしてくれた


私は感謝してもしきれないくらいのものをクロスから貰ったのにそれを何一つ返すことが出来ていない



だから










「一発ぶちかましてやりたいと思うの」


「頭大丈夫?」


「ユーリ!あんたはもう少し私に猫を被って!」


「で?どういうこと?」



こいっつ…!清々しいくらいにスルーしやがって!

今すぐにこの憎たらしいほっぺたを限界まで伸ばしてやりたい衝動を抑えながら説明する



「もうすぐクロスの誕生日なんだけどね、今までプレゼントとかは渡してたけど大々的に祝ってあげられたことはなかったのよ」


「それでどうやってさっきみたいな物騒な言葉が出てくるの…で?」


「だから今年はこの家の皆でパーッと盛大に祝ってあげたいと思って!」」


「でも、クロスさんそういうの苦手そうじゃない?大丈夫?」


「ユーリぐだぐだうるさい、手伝うの?手伝わないの?」


「…セツ姉一人に任せてたら不安しかないから僕もやるよ。僕もクロスさんのことちゃんと祝いたいし」


「ツンデレ乙」


「言葉の意味は分かんないけどとりあえず一回ぶっ叩いていい?」



ぶっ叩いていい?とか言いながらお前握ってんの拳だよ!?てかいいわけないじゃん!!




「ていうか、皆って、本当に皆でやるつもり?」


「もちろん!誕生日パーティなんて人が多ければ多いほど盛り上がるじゃん」


「だけど……父様と母様はそれを許してくれるかな?」


少しだけ不安そうに呟くユーリ

でも、そんな不安は全く一切必要ない!



「あの二人のことだからこの計画を聞いたら私達より派手にやりたがるわよ」


「え?」



まあ、ユーリはうちに来たばっかだしほとんど私達とずっといるからあまり父と母との交流がない分知らないのも仕方ないか

よし、じゃあこれを機に少しだけ事前学習といこうじゃないか!



「あのね、うちの両親って実はめっちゃクロスのこと可愛がってるんだよ、まあクロスは礼儀正しいし気配りも出来るしあの歳でかなり優秀だから余裕で納得なんだけどね。知ってる?お母様なんて高級パティスリーのパティシエの目の前でクロスの手作りのお菓子をベタ褒めしてたのよ?私も同感だったけどその時の部屋の空気ったらなかったわ、一気に温度が10℃くらい下がったよ」


「そ、そうなんだ。あっ、僕もこの前たまたま見かけたんだけど、父様がクロスさんを誘って部屋でお茶してたよ」


「そうなのよ!!なんでも今クロスうちにある本を片っ端から読んでるみたいで、それで読書家のお父様が話し相手が出来たって珍しく目に見えるくらい喜んだのよ!それからは二人で、たまにエドさんも交えてお父様の書斎で本の感想を言いながらお茶してるって聞いたわ」


「うわあ…さすがクロスさん」


「……あんたその尊敬の眼差し一回でも私に向けたら?」


「やだ、減る」


「何が減るか詳しく私に説明してみろや」



落ち着けー!落ち着くんだセツィーリアー!!今のあなたは令嬢!お嬢様なのよ!!だからその握った拳をゆっくり放すんだ!!

耐えて耐えてぷるぷる震える腕を鎮める

自制してなかったら絶対次の瞬間には私の華麗なる右ストレートが炸裂してたと思う、ふっ命拾いしたな小僧…!

心の中でユーリを打ち負かして気持ちを落ち着かせる



「ま、まあ、そういうわけだからお父様とお母様に関しては絶対に問題ないわ、むしろ派手になり過ぎないように注意しなきゃ」


「うん、了解」


「あと残る問題は…」


「まだ何かあるの?」



不思議そうに聞いてくるユーリ

あるよ、てかこれが一番やっかいというか難しいというか…


苦虫を潰したかのような顔になる私につられてユーリの顔にも険しさが走る



何が一番やっかいかって



「あのクロスに一週間も隠し事が出来る気がしない…!」


「それな」




私とユーリの心が合わさった瞬間だった






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