お菓子は最強
とまあ、そんな話を聞いたら私がユーリを構わないはずもなく、今のストーカー予備軍になってしまっているというわけだ
って
「誰がストーカー予備軍だ!!」
「お姉ちゃん?」
「はっ!ユーリ!!来たのね!」
「ユーリこっち来い、お前の姉は今ただの変態だから近づいたら危険だ」
「ちょっとクロスそれどういう意味!?」
「あはは、大丈夫だよクロスさん」
クスクス笑いながらユーリはいつもの定位置に座りクロスの淹れた紅茶を飲んだ
クロスと楽しそうに、時々笑みを浮かべながら話すユーリを見ると心底安心した
今でこそ私をお姉ちゃんと呼びクロスとも仲がいいけど、つい数日前まではこうじゃなかった
まずユーリがちゃんと話してくれるようになったのが家に来てから二日目の時だった
それまでは首を振ったり頷いたりでしか交流が図れなかった
そして私をお姉ちゃんと呼んでくれたのがその三日後
それまでずっと頑なに"セツィーリア様"と呼んだり、少し進歩したと思えば"セツ様"だったり
なぜ弟から様付けされなきゃならんのだ!!と爆発した私はその三日後の夜にユーリの部屋に行き
土下座した
「ユーリ!!私のことお姉ちゃんと呼ぶまでどかないから!」
と宣言して
当然ユーリは慌てて私にやめるように言ったが、生憎私は一度決めたらてこでも動かない女だ
本当に立ち上がる気がないと悟ったのか、漸くユーリは折れて渋々と言った感じで私のことをお姉ちゃんと呼んでくれるようになった
え?何?たかがそんなことでやりすぎだって?
バカ言ってんじゃないよバカめ!!私からしたらそんだけ重要なことなの!!念願の弟の"お姉ちゃん"って言う言葉がどれだけ貴重か分かる!?実際私は始めてそう呼ばれたとき鼻血出すとこだったんだからね!?はいそこお!!それはお前が変態だからだろ、とかそんなこと思ってんじゃないでしょうね!!?
とにかく!!最初は無理やりとは言え今じゃユーリも馴染んでくれたのか無理してる様子なく私のことをお姉ちゃんと呼んでくれるようになった
そして私の問題が片付いたら浮き出てくるのはクロスとユーリの問題だった
いや、本当は二人に問題の原因はないんだけど…ユーリが来た次の日、私は早速ユーリを連れてクロスに会いに行ったのだ
でも、ユーリはクロスを見た瞬間震えだして私の手を振り切って部屋へと戻っていった
後から聞いた話だと、どうもおじ様の息子がクロスと同い年らしくて、似ても似つかないとは言え自分よりでかい子供を見ると条件反射で震えが止まらなくなるらしい
それを聞いて私は自分の愚かさと軽率さを恨んだ
これじゃユーリもクロスも傷つけたようなもんだ
クロスは気にしてないって言ってたけど、誰だっていきなり自分を見て震えられたらいい気持ちがしないことくらい分かる、クロスは優しいからそう言ってくれるけど私はクロスの優しさに甘えたくなかった
だから考えた、脳みそを振り絞って考えた
とりあえずクロスに何も聞かずにお菓子を毎日作ってくれと頼んだ
少し不思議そうにしてたけどクロスは言われたとおり毎日お菓子作りをしてくれた
しかも手の込んだことに毎日違う種類のお菓子を
そして私は毎日それをユーリの部屋まで持って行った
最初は食べようとしなかったユーリ、多分前の家で食べ物の中に異物を入れられたせいだと思った
だから私はユーリが安心して食べられるように先に味見をした
本当は大げさにおいしいおいしいと言ってユーリの気を引こうと思ったけど、わざわざそんなことする必要もないくらいクロスのお菓子は本当においしくて少しだけ食べるつもりが気づいたときにはクッキーが一枚だけ皿に鎮座していた
そしていつの間にかユーリはそんな私をガンミしていた
いやあ焦ったよね、てかめちゃくちゃ穴があったら入りたい気分だったよね
で、最終的に私が半泣きになりながら「ユーリも食べてみて?…最後の一枚しかないけど…」と差し出したクッキーをやっとユーリは受け取ってくれたのだ
それからはユーリもクロスのお菓子を気に入り、毎日ユーリの部屋でのお菓子タイムは密かに私達の楽しみへと変わっていった
そんな日が四日ほど続いて私はユーリに打ち明けた
このお菓子を作ったのは実はクロスで、彼は少しクールだけどとても優しくてとてもいい子だってことを私の少ない語彙力で一生懸命伝えた
話した時は少しびっくりしていたユーリだったけど、その次の朝私の部屋に来てクロスに会いたいと言ってくれた時は思わず叫び声をあげながら飛び上がってユーリをギュウギュウに抱きしめたもんだ
早速最近クロスがいつもいるフラワーガーデンにユーリと赴けば、クロスは大して驚いた様子もなくただ微かに笑みを浮かべながら
「ちょうど紅茶を淹れたとこなんだ。一緒にどう?」
と私達を出迎えた
あれだよね、クロスが素敵すぎて嫁にしたいってガチで思ったよね
ぎこちなく始まった第一回のお茶会だったけど、クロスの紅茶を飲んだユーリは明らかにホッとしたような顔になったし、クロスも何も言わなかったけど嬉しそうにしていた
それからだ、私達恒例のお茶会が始まったのは
ちなみに、どうやら私の知らないところでユーリは初日にクロスを見て逃げたことを謝り、クロスはユーリの頭を撫でて快く許したそうだ
正直ちょっと妬いた、どっちに対しても妬いた
だって、なんか、私の知らないところで好きな人たちが仲良くしてたら妬くでしょ!?仲間外れは良くないと思います!!
そう言えば少し呆れたように苦笑いを浮かべながら二人は二人して私の頭を撫でてきた
「そういうことじゃない!」と言いながらもあっさり機嫌が直る現金な私だった




