処分
「それにしても、ネパルナ先生の生徒を思いやる気持ちがここまで強いとは思っておりませんでした。今ご覧になっている資料の内容が公になったら、退学はおろか身分剝奪を受けても文句は言えないと思いますが、生徒思いのネパルナ先生は例えそうなったとしてもきっとノスカ卿たちのことを見捨てずにいてくれますよね?良かったですわね、味方が一人でもいると心強いでしょう?ノスカ卿、ターヘン卿、ベッチ卿?」
にっこり笑顔を向ける私に対しクズ共は悪魔を見るような怯えた目で私を見ていた
馬鹿な奴ら
今にもちびりそうなくらいビビりなのに、喧嘩を売る相手も見極められないなんて
今反省したところで遅いし、もう許す気は一切ないけど、せいぜい漏らさないように最後まで人間としての尊厳くらいは守れるように応援してあげるわ
そして、私の言葉で顔を青くさせたのはクズ共だけじゃなかった
名指しで呼ばれたネパルナ先生はさっきまでの威勢はどこに置いて来たのか、冷や汗を浮かべながら震える声で言葉を発した
「た、確かに私は生徒思いで有名ですけど、さすがにこの学園の生徒じゃない子どもの面倒を見てあげられるほどの人格者にはまだなれていないの!!」
「先生!!?」
「あら、それはネパルナ先生にとってノスカ卿たちはもうご自分の生徒ではないということでしょうか?」
予想通りの反応だ
思い通りに進みすぎててむしろ疑っちゃうレベルね
「と、当然ですわ!!こんな傍若無人なことをする生徒なんて私の誇り高い生徒の中にはおりません!!退学になって当然の奴らですわ!!」
「何をおっしゃっているのですか!!?」
「僕たちを見捨てないでください!!」
「先生、騙されないでください!!」
「お黙り!!馴れ馴れしく話しかけないでくださいまし!あなたたちがそんなことをする輩だと知っていたらそもそもこの話し合いにも来ていなくってよ!?よくも私の事を騙してくれたわね!?」
「そんな!!話が違います!!さんざん僕たちのおかげで甘い蜜を吸ってきたというのにこんな簡単に僕たちの事を裏切るんですか!?」
「まあ!!!!なんって馬鹿げたことを言っているのかしら!!これだから教養のなっていない子は嫌いなのよ!!学園長、今すぐこの三人を退学させて学園から追放すべきですわ!!」
わーきゃーと仲間内での争いが加速していく
三分前まであんだけ仲良しこよししていたというのに、醜いものだ
ていうか、薄々そうじゃないかと思っていたが、今の会話を聞いていて確信した
やっぱりこのおばさん、このクズ共からそれなりの賄賂を貰っていたみたいだな
まっ、今の時点で消す程の人間でもないしここはスルーしてあげよう
後から一気に潰した方が爽快だしね
冷めた目で醜い争いを見ていた私の耳に深い深いため息が聞こえてきた
目を向けると、目頭を押さえて苦々しい顔をしている学園長がいた
かわいそうな学園長
こんな下らない人間の価値もない人間のために場所まで設けて時間を無駄にしているんだから
ご愁傷様です
心の中で手を合わせながら学園長の判断を待つ
「現時点でノワールくんの情報だけでは判断を下しかねるため退学は一先ず置いておくとして、ノスカくん、ターヘンくん、ベッチくんは処分が決まるまでは自室で謹慎、無期限停学の上で外出は一切禁ずる。ノワールくんに関しては……何があろうとも相手に傷を負わせる行為をしたのは君に非がある。そのため、反省文を提出した上で五日間の停学を命じる。」
重々しい声で発せられたのは公正に決められた処分だった
「学園長、ノワール嬢は私を庇っただけなので、その処分は僕が」
私の代わりに処分を受けようとするクロスを手で制してから
「かしこまりました。寛大な処置をありがとうございます」
深々と頭を下げる
ノワール家の令嬢が停学処分を受けるということはそれなりに話題になるが、まあその程度で名に響くような振る舞い方してないから痛くも痒くもないな
と言っても、この決定に納得しているのはどうやら私だけみたいだ




