正当化
まず話を始めたのはクズ共だったが、案の定嘘八百を並べ立てていた
やれ、ぶつかって謝りもしなかったのはクロスだの、クロスが先に生意気な事を言ってきたから反論していただけだの、私には何もしてないのにいきなり熱湯を掛けられただの、聞くに堪えない話ばかりだったのは言うまでもない
さらに気持ち悪いことに、担任が自分の味方だと分かったからか、まさかの泣き落としまで入れてきたことだ
男女差別をするつもりはないし、大の男が泣くなとかも言うつもりはないけど、全ての元凶のくせに被害者面してウソ泣きしてんじゃねえとは言いたくなるよね
「信じられませんわ…そんな極悪非道な生徒がうちの学園にいるなんて…!!」
そしてまんまと騙されるネパルナ先生
え?てか本気で信じてるの?もしかしてグルなんじゃないの?
「僕たちは穏便に済ませようとウェルシーくんに一言謝ってもらいたかっただけなのに、ウェルシーくんは反省する素振りもないしノワール嬢は僕たちの話も聞かずにいきなり僕の手に熱湯を…!先生、流石の僕もこれは許せません!!」
「まあ…!ノスカくん、安心しなさい!加害者にはそれ相応の罰をきっと与えますわ!さて、ノワールさん、ウェルシーくん、何か言い訳はございますか?とはいっても、どう見ても非はそちらにあるように思えますけどね」
何やら勝ち誇った顔をするネパルナ先生
んー、おかしいな、戦う相手増えてない?こんなこと言うのもなんだけど、外野はしゃしゃり出ないでいただきたいんですけど??
「ノスカ卿、言いたいことはそれで全てでよろしいですか?」
「っ!……何がいいたいのですかノワール嬢」
「いえ?ただ、今のうちに言いたいことを言っておいた方が後から負け惜しみを言われても困りますもの。ただの確認作業ですわ」
「まだ僕を馬鹿にしているのですか!?」
「それでは、ノスカ卿の番は終わったみたいなので、次は私の話をお聞きください」
怒って立ち上がるクズを無視して自分の話を進める
よくよく考えれば、こんなクズに構ってる時間なんてない
クロスは応急処置でタオルで汚れた顔や制服、髪を拭きはしたものの、スープを被っているから、きっと今不快な気持ちになっているに違いない
だからこそ、こんな下らない消化試合なんてさっさと終わらせて一刻も早くクロスをお風呂に入れなきゃ!
「まず、事の発端はお昼休みの際なのですが、食堂で大きな音が聞こえて、その方向を見たら、スープを被ったクロスくんがいたのですが、その周りをこちらの三名が聞くに堪えない暴言や身分を蔑むような言葉を浴びせ、クロスくんの尊厳を汚すような行為を強制させようとしていました。その際、クロスくんは反論もせずにただその場でじっと耐えていました。ここまでで、どちらが酷いか聡明な先生方なら分かりますよね?」
「先生!僕たちはそんなこと」
「次にですが」
今は私のターンなんだよ、邪魔すんな
茶々を入れようとするクズに喋らせる隙は与えない
「ノワール家は基礎教養として、情勢については常に最新の情報を取り入れております。その際にこういった情報も耳にしたので気になって調査をしたところ、このような事実が明らかになったので、是非とも先生方にも目を通して頂けたらなと思います。」
鞄から三つのファイルを取り出して先生方の前に置く
それぞれに、クズ三人衆の家の名前が載っているから、きっと今頃内心で焦りまくっているに違いないだろうな
「先生!これは今回の件には全く関係ありません!見る価値のない物です!」
「そ、そうです!!それに、僕たちにこんな仕打ちをしたノワール嬢が用意したものなんて本物とは思えません!僕たちを攻撃するための言いがかりに決まっています!」
「この中に何が記されていようと、ノワール嬢が僕の手に熱湯をかけたことを正当化できるものにはなりません!!」
「そうですわ学園長!こんな信憑性のないものを一々真に受けていたら我々の立場がありませんわ!」
わーきゃー喚く四人の声を完全にシャットアウトして、ただ真っ直ぐと学園長と向き合う
「学園長、どうぞ、中身をご参照ください。私は自分の行動を正当化するつもりはありません。熱湯をかけたという乱暴をしたのは事実であり、公衆の面前で行ったため証人もたくさんいます。甘んじてそれに対する罰を受けるつもりでいます。ただ、私は私の大事な友人であり家族であるクロスくんが蔑まれるという事態を受け入れるつもりはありませんので、彼を守るために取った行動については一切後悔はしておりません」
なんならやり方が温かったって反省するくらいだ
「そして、一つだけ言っておきたいのは、私の行動は公衆の面前の行われていたものですが、こちらの三名の言動や行動も、食堂にいた多くの生徒が見ております。私の言葉が信じられないというのなら、ぜひともあの時間あの場所にいた生徒全員にお聞きしてみてください。それでも、この三人が本当にただの被害者であり、全ての非が私にあると言うのなら、ノワール家の名に賭けて罰を受け入れます。ですので、どうか賢明な判断を下して頂けたらと思います。」
背筋をピンッと伸ばして胸を張る
そんな私をじっと見てから、学園長は何も言わずに一つのファイルを手に取った
「学園長!!」
ネパルナ先生の金切り声が耳をつんざく
不快で仕方ないけど、ここまで来たらこの人がこのファイルを見ても同じようにこのクズ三人衆の味方をするのか気になってきた
「ぜひ、ネパルナ先生とアーレス先生もご覧ください」
シェリーは神妙な面持ちでファイルを手に取り、ネパルナ先生も憤慨した面持ちで、ひったくるような力で残りの一つのファイルを手に取り読み始めた
そして、段々とクズ三人衆と同じように顔を青くさせていった
真っ赤かな顔からあんなに青くなるなんて、人間って面白い物だなあ




