カウントダウン
クロスの頬に手を添えたまま、私から目を逸らせないように真っ直ぐとクロスの目を見つめ続ける
だって、知ってたから
こうすれば
「…あぁ、分かった。ありがとうな、セツ」
いつだって根負けするのはクロスのほうだったから
添えているほうの手にクロスの手が重なる
不格好に押し付けたままのハンカチもちゃんと受け取ってくれたことホッと一息をつきながら、スーッと目線をクロスの後ろへと向けた
その視線にクロスが気づかないはずもなく
「セツ…」
「大丈夫、ヘマはしないから信じて」
多分クロスが言いたいのはそういう意味じゃなかったと思うけど、敢えて気づかないふりをした
今の今までクロスしか目に入っていなかった世界だったけど、徐々に周りの様子への把握も始めていった
ユーリとソフィはなぜか複雑そうな顔をしながら私たちを見つめていた
きっとこれから取る私の行動を心配しているんだろう
コレットは少し顔を赤くしながらなぜか目を輝かせている
まるで映画のワンシーンを見てトキめいている女の子みたいな反応だ、、、何を見てそうなったんだろう?
ハルは、、、やめよう
さっきと同じ、もしくはそれ以上ににやけている顔だ
まあ、さっきの約束通り、面白いものを見せてあげるわよ
そして、ヒロインちゃんは…
ジーッと私を見ている
ひたすらに私を見つめている
おうっと、何を考えているか読み取れない子に見つめられることほどちょっとドキッとすることはないぞー??
そして
最後に目を向けたのはこの騒ぎの元凶たちだ
より一層姿勢を正し、笑みを携える
一歩一歩ゆっくり、けれどしっかりとした歩みで妙に顔色が悪くなっている3人に近づく
コツ コツ
靴音が妙に食堂に響いていると感じるのは私だけなのかしら
あぁ、でも
音が響くたびにどんどん顔が青ざめていく様子からして、こいつらにとって私の出す音は恐怖へのカウントダウンになりつつあるのかもしれない
まあ
その通りなんだけどね




