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緋色



私が一歩一歩進んでいく度に息を呑み後ずさっていく人が横目で見える


そうだ

それでいい


今この瞬間、誰であっても、



私の邪魔をすることは許さない




拳を握り締めながら、それでも乱暴な歩き方にならないように進む

幸い当事者の誰も私の存在にはまだ気づいていないみたいだ



丁度いい

いきなり現れるほうが恐怖を植え付けられるから



脳内で未だに下品に笑っている3人組が無様な姿になってそこにくたばる様子を想像しながら歩いていた時だった




「はいはーい、とんでもないお顔になってますよ~セツィーリアちゃ~ん」



いきなり手首を掴まれて歩みを止めさせられた




「何かしら、ハル。今の私を邪魔したら後悔することになるわよ」


「だ~って、今のセツィーリアちゃんの顔殺人鬼みたいだったから、流石に止めないと人命に関わると思って~」


「私がこんな公衆の面前で物理的に何かをすると思って??流石にそこまで理性は失っていないわ。それに………ああいうのは人命に加えなくていいただの汚物よ」


「おぉ、、いいねぇその顔、俺までゾクゾクしちゃう」


「とにかく放してちょうだい。…これからもっと面白いこと見せてあげるわよ?」



言いながら腕を振りほどこうとするもハルは一切力を緩めない



いい加減に本気の本気で忠告してやろうかと思った時だった




「どうやら、ヒーロー気取りは一人だけじゃなかったみたいだね~」



意味深なハルの言葉に疑問を持ち、奴の見ている先、クロスの方を見れば



クロスの顔よりも先に飛び込んできたのは赤、美しい緋色だった





「え…」


「まあまあまあ!!なんの騒ぎなのでしょう!!?名門校と聞いていたのに、スラムにいるような輩と対して変わらないですわね!!」




私の困惑の声に被せるように、堂々とした、響き渡る声が耳に届いた


見れば、クロスも驚いたのか珍しく目を見開いてびっくり顔だ

かく言う、驚いたのはクロスだけじゃない

この場にいる全員、彼女の声を聞いた全員があっけにとられたのは間違いないだろう


行動もそうだが、口調がなんというか、芝居じみているのだ

明らかに使い慣れていないようなお嬢様言葉、、

彼女は一体…



「これは一体なんの騒ぎだ!」



はっきりと彼女の顔を見ようと目を凝らしてもいい具合に人と重なって顔がいまいちよく見えない

そして、彼女の登場とほぼ同時くらいに、ソフィが数人の生徒を引き連れて現れた


恐らく生徒会の面々だろう

その後ろから息を切らしたコレットとユーリも見える


多分急いで呼びに行ってくれたんだろう

きっと傍観者からしたらそれが正しい選択肢だったんだろうなあ



キョロキョロと辺りを見回していたユーリがクロスを見て目を見開いて、そしてすぐに目が合った私の所へ駆け寄ってきた



「セツ姉、一体何が」


「待って、ユーリ。全部終わってから説明する」


「…うん、、ていうか誰この人」


「あ、俺?俺はセツィーリアちゃんの愛じ「隣の席に座っているだけの人よ」せめてクラスメートって言ってよ~」


うるさいハルの声を遮断して全神経をクロスと見知らぬ少女に向ける



さっきから妙に心臓がざわついている



ここは元々ゲームの世界だから見渡せば奇抜な髪色が飛び込んでくるが、

あの少女のような目を惹く緋色の髪は初めて見る

でも、以前にも、どこかであれに似たような髪を見たことがあるよう気がする

どこだ、、思い出せそうで思い出せない





「君たちは一体何をしているんだ!」



素早くクロスたちのほうに向かって行くソフィの顔には明らかな怒気が表れ出ていた



「へえ…どうやらフィーも君のクロスくんを気に入ってるみたいだね」


「嫉妬は後にしてくれない?今はその時じゃないって分からない?空気読んでくださる?」


「はいはい、ハリネズミお嬢様」



心の中で舌打ちをしてから、意識を再びクロスたちのほうに戻す



生徒会であり王子のソフィが出てくることは予想していなかったのか、明らかにクズ野郎どもは焦りの表情を浮かべていた

それに反してクロスはソフィの顔を見て漸く表情が少し和らいだように見えた



さて、焦っているところに追い打ちでもかけてあげよう



手首を掴んでいるハルの手を叩いて拘束から逃れる

そうして、騒ぎの中心のへと足を踏み入れた時だった




「ほらあなた、美しい顔が台無しですわよ?これでも使ってくださいな!」



クロスに向かって真っ白なハンカチを差し出す少女



近づいていくにつれてどんどん少女の顔がはっきりと見えていく

それにつれて心臓のざわつきもどんどん増していく




ああ、思い出した




「セツ…」


「あら?どなたかしら?」




ハンカチを差し出した状態のまま少女とクロス、そして、その場にいる全員が私の存在に気づく



それでも、私の視線は少女一人に向かっていた

この子、話し方はともかく


緋色のロングストレートの髪に夕暮れ色の瞳

以前にも感じた美が殴ってくるようなこの顔






「?私の顔に何か?…それにしても、あなたも美しい顔をしておりますわね!」





















このゲームのヒロインちゃんに間違いない














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