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進歩



女子寮から出て少し歩いたところで



「おはようセツ姉」


「おはようユーリ」



朝から愛しな我が弟が出迎えてくれた



一年の時はコレットと毎日待ち合わせして登校していたが、ユーリが入学してきてからはユーリからのお願いで一緒に登校するようになった

てっきりコレットも一緒に三人で登校するのかと思ってたのに、コレットが「私はセッちゃんと同じクラスだし、朝は姉弟水入らずで過ごしてください!」と天使ばりの笑顔でそう提案してくれたため、お言葉に甘えてユーリとの二人だけの時間を楽しんでいる


新学期が始まってもう二週間が経つ

始めは見慣れていなかった制服姿のユーリももうすっかり様になっている


それにしても…うん…



「セツ姉?どうかした?いきなり黙り込んで」」



会話の途中で黙った私を疑問に思ったのか横から顔を覗きこんでくるユーリ


必然的に近くなったユーリの顔


近年著しい成長期を見せたユーリは、背も一気に伸び、気づけば私が見上げるくらい背が高くなったし、顔つきも体つきも男らしくなっていた

昔は天使みたいに綺麗でかわいかったのに、いつの間にこんなにも大人になってしまったのかしら


うーん…近くで見ると余計に



「ユーリ…あんたってばいつの間にそんなにかっこよくなったの??」


「…え!?」


真顔でそう言えば珍しく少し照れた様子のユーリ

あら、あらあらあら


「なぁにユーリってば~、もしかしてかっこいいって言われて照れてるの~??」


ニヤニヤしながら肘でつんつんすれば


「だって!…セツ姉がいきなり慣れないこと言うから…!」


赤い顔のまま手の甲を口に押し当て目を背けるユーリ


やだ、ちょっと、反応がかわいすぎん??

なんかこっちまで照れちゃうじゃん…!


「モテモテなくせに何言ってんのよ!ユーリが今年の新入生の女子の中でとんでもない人気を誇ってるって知らないの!?」


なんなら新入生だけじゃなく、私たちの代でもユーリの話を聞かない日はないんだからね!?


「かっこいいって言われまくってるモテ男がこんなこと言われたくらいで照れるなんてお姉ちゃん心配よ!?大丈夫!?チョロすぎない!?」



ピュアなユーリは大歓迎だけど、コロッと悪女に騙されちゃうんじゃない!?


心配で焦ってユーリの両頬を包めばさっきまで照れていたかわいいユーリはムスッとした表情を浮かべていた

ムスッとしててもかわいいとか流石かよ



「あのねえ、赤の他人に何言われたって僕はなんとも思わないから」


「え?」


「はっきり言わないと分かんないわけ?セツ姉がかっこいいって言ってくれたからああいう反応したんだってば」


「…え!?」



ユーリのこの反応、覚えがある

…そうだ、一年前、屋上でソフィも似たようなことを言っていた

ユーリも同じような気持ちだったって…こと?



「…もしかして、ユーリは私からかわいいって言われるの、あんまり嬉しくなかった?」


頬を包んでいる手を離しても、ユーリは私に顔を近づけたままの体勢でいた


「珍しっ!セツ姉でもそんなこと考えるんだ」


おい、さりげにディスるな


「別に小さい時はそんなことはなかったよ?ただ、僕もずっと子どもじゃないからね、いつまでもセツ姉にかわいいだけの弟だって思われたくないんだよ」


「でも、私にとってユーリは少し憎たらしいけどずっとかわいい弟で…」


「知ってる。別に今すぐセツ姉の認識が変わるとは思ってないし、今は僕のことかっこいいって思ってくれるようになっただけで大分進歩したと思うよ」


進歩って、私のが姉なのにユーリは時々すごい私のこと子ども扱いする


勝手に拗ねてそっぽを向けば今度はユーリが私の両頬を包んだ



「でも、僕このままでいいなんて思ってないから。これからどんどんかっこよくなって、かわいいって言う余裕なんて無くしてあげる」



覚悟しててね


ニヤッと笑ってそう囁くユーリの顔を今までに見たこともないくらい大人びていて…男っぽくて……不覚にも…




ドキッとしてしまった…






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