娘はキレています
お父様のお話を全て聞き終えてからきっちり一分後
「ミリアーナさああああああああああああんんんんんん!!!!!!」
私の絶叫は屋敷中に響いた
いきなり叫んだ私にお父様は耳を押さえながら心配そうに見ている
でも、悪いけど今はお父様にかまけてる暇はない
「はい、こちらに居ります。お嬢様」
私の絶叫にも一切の動揺を見せずに瞬時に現れたミリアーナさんの所に可能な限りの速さで駆け寄って耳打ちする
そしてすぐにミリアーナさんは頷いて目的地へ向かって行ってくれた
いやあ、本当にミリアーナさんもエドさんも、こんなに力強い味方はいないね
いなくなったミリアーナさんの代わりに扉付近に控えていたエドさんが扉を再び閉めてくれた
その際小さく私に「うまくいきそうですか?」と耳打ちしてきたので私は若干キレながら
「これでうまくいかなかったら私は家出しますわ」
本気でそう呟いた
「おや、でしたらその際は私もお嬢様についていきますね」
微笑みながら扉を閉めるエドさん
…あ゛ぁーもおー、この屋敷の男共ってなんでこうもずるいんだよー!…笑顔一つで骨抜きにされそうなんだけど…!!
「セツィーリア?」
エドさんの笑顔にやられていたら困惑したようなお父様の声が聞こえて、忘れていた怒りもまた復活した
完っ璧なお嬢様笑みを携えてお父様に振り返る
一瞬お父様がびくっとされたのはきっと気のせいよね?
「お父様、セツィーリアは大変悲しいでございます」
「な、なぜだ」
おかしいですわね、どうしてお父様のお顔が引きつっていらっしゃるのかしら
悲しいと言っておきながら笑っているから?それともご自分の過ちに気づいたからなのかしら?
「なぜ?なぜですって…?そんなの」
そんなの…
そんなの……!
「お父様とお母様が想像以上のバカだったからに決まってるでしょう!!」
一瞬で怒りで顔を真っ赤にしながらお父様に怒鳴る
呆けてるお父様をよそにこれまたナイスタイミングのミリアーナさんが戻ってきた
「お嬢様、お連れいたしました」
「セツィーリア……ヴァーシス様…」
私が連れてきてとお願いしたお母様と共に
ふっふっふ…よく来た、よく来てくれましたわねお母様!!
戸惑いが前面に出ているお母様を横目にお父様と向き合う
「お父様、いつまでも逃げていないでいい加減ちゃんと向き合ってください。これからお二人にはこの書斎で二人になってもらいますので、さっき私に話したこと、そしてお母様に伝えたかったこと、包み隠さず全て!何一つ漏れることなく!!お伝えくださいね?」
「セツィーリア、気持ちは嬉しいが」
「そうよセツィーリア、それにいきなりそんなことを言われても」
「もし!!」
まだぐだぐだ言う二人の言葉を遮って二人を一瞥する
「もし、次にお二人を見たときまだそんな体たらくを見せてるようなら」
そして高らかに宣言した
「私はミリアーナさんかエドさんの娘になります!!!」
「ふふ、それはとても楽しそうですね。私はヴァーシスよりも良い父親になる自信ありますよ?」
「私も、かわいい娘が増えるなら大歓迎でございます」
あんぐり顔をする我が両親とニコニコとノッてくれる執事とメイド長
多分この屋敷の中で絶対に敵に回しちゃ駄目なのはうちの親よりこの二人だと思う、いやマジで
「とにかく!まだこの娘が惜しいなら!!ちゃんと仲直りしてください!!」
バァンッ!
そう言うや否や、二人の返事も聞かずに、私たち三人は書斎から出て行った




