序章3 宇宙進出に向けて
この章では宇宙のことについて解説するシーンが多く、途中で混乱するかもしれません。気をつけてください。
そこから初代皇帝は様々な改革をした。日本から米を持ち込みそれを主食にするように呼び掛け、公用語を日本語に変更し、地名も現地民の名前も日本式に変えた。さらにヨーロッパのあちこちから一流の大工を呼び、豪華な宮殿を建てた。
政務も落ち着いた頃、初代皇帝は引退し息子(以下、2代目)に皇帝の座を譲った。
そして2代目の戴冠式が終わった夜、彼は夢を見た。 それは、自らが宙に漂っている夢だった。
(あれ、ここは…? なんで私は空に浮いてるのだろう?)
と、その時、とある人物が2代目の手を握った。
「驚かせてすみませんね。我が名は『光神範彦』。この世界の神でございます。貴方のお父様の世界侵略を見守っていました。しかし…世界はまだまだ広いのです。この世界だけで満足してはいけません!私がお連れしましょう!」
「えっ、ちょ……ああああああっ!?」範彦の誘導によって、2代目は上に上に昇っていく。だんだん宮殿の街並みが遠くなっていく。さらに途中で目隠しもされた。
数分経っただろうか。範彦が「目隠しを取って」と言ったので言われるがままに目隠しを取った。
「………!! これは…!」彼が見たのは、一つの惑星。海が広がるとても美しい惑星。
「貴方の帝国のある星ですよ」と言われ、2代目は驚いた。『世界は丸い』……父が風の噂で聞いたらしいが、まさか本当だったとは………。
「もっと遠くに行きましょう」範彦はまた手をひく。2代目は周りをキョロキョロと見渡した。赤から青、黄色、オレンジといった色とりどりの星が一つ一つ、きらきらと輝いていた。
範彦は2代目に『一つ一つの星には人間と同じように名前があり、人間と同じように寿命があること』を教えてくれた。
ずいぶん進んだだろうか。渦巻き型の物体が見える。
「あれが『銀河』です。この銀河には約2000億の星があり、銀河も2000億以上あると言われています」
2000億……そんなのなんて国家予算でくらいしか使わないくらい大きい数字だった。
さらに遠くになると、銀河の集団(銀河団)が、さらにさらに遠くには超銀河団が見えた。
もう頭がおかしくなるくらい遠くに来た。
「ここが宇宙の端です。あ、でも宇宙は複数ありますし、それらを内包するものもたくさんあって…」
「………………」あまりにもスケールが大きい話に全くついていけない。
「どうでしょうか?貴方の帝国がどれだけちっぽけかが分かりますか? もっともっと大きい国にしたいでしょう?」
「………もちろんですよ!!範彦様!必ず宇宙とやらを統一してみましょう!!」
2代目は自信満々に範彦に宣言したところで目が覚めた。
美しい宇宙の風景は見えない。小鳥のさえずりが聞こえるだけだった。
「なんだ夢か……あれ?何これ?」彼のベッドの近くには変な物体が落ちていた。物体には範彦の伝言メモがついている。
『それは掃除機というものです。強い吸引力でゴミをあっという間に吸い込んでしまいます。普通のはコードがありますが、これは充電式です。もう古くなったのであげます。 あと暇なら水留神社にいつでもどうぞ、相談してあげますから』……と書いてあった。
早速メイドに使わせてみた。すると、『キュイ~ン』と気味悪い音がして、誰もが驚いた。しかし効果は抜群で、細かい塵もよく吸ってくれた。そしてなんか皆感動していた。
あれだけすごいものだから、もっと欲しい。メイドの負担だって一気に減るはずだ。とばかりに海辺にある『水留神社』に行った。この神社は代々大祝家が神主を務めている。
鳥居を潜ると、お賽銭箱の付近に座って猫と戯れる範彦の姿があった。
「お、貴方ですか。もう来てくれたんですね」
「ああ、いえ……掃除機とやらがもっと欲しいんです」
「そうなんですか?気に入ってくれて私も嬉しいですよ。 掃除機なら何個もありますから、ご自由に。あと科学者と技術者を呼んできました」
「科学者?技術者?」聞き慣れない言葉の連続で、2代目は混乱してしまった。
「科学者と技術者は今の不便な世の中を変えてくれますから、頼りにしてください。あとタイムマシンをあげますから、未来の地球の本屋で何か本を買って勉強したらどうです?」
「え、ええ…。何かよく分からないけど、ありがとうございます!!」
2代目は大量の荷物を抱え、宇宙征服のことを考えながら宮殿に戻った。