第三講目
第三講目
「佐倉亜鈴と月音春希というコンビ」
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少女と少年は、いつもの散歩道を歩いていた。
「……あーあ、疲れたなぁ……おんぶしてよ…」
小さい赤髪の少女は黒髪の少年にぼやく。少年は少女の方を向き、呆れた様に答えた。
「まだ全然歩いて無いでしょ…もうちょっと頑張ろうよ。ね?」
少年は少女に激励した。少女は口を尖らせ、不満を少し零す。
「…けちー。別にいいじゃーん…」
少女の不満に負けたのか、背中を向けてしゃがみ込む。
「はぁ…ほら、早く乗って。」
「ありがとー!」
お構い無しに背中に飛び乗ると、少年は立ち上がる。そして、歩き始めた。
「…あのさ、……ってさ、好きな人とか居るの?」
急な質問をされる。少年は焦る様子も無く背中に乗る少女に言う。
「ううん、居ないよ。でも…こんな事言うと悪いだろうけど…僕は……の事が好きだよ。」
「…そう、なの?私も、……の事好きだよ。」
そして、少年と少女は桜並木の下り坂をゆっくりと歩いて行った。
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「……んゅ…?」
机に突っ伏して寝ていた赤髪の少女は寝ぼけなまこを擦り視界をクリアにする。
「えっと……放課後…かな?」
時計を見上げてまだ寝ぼけていた少女は飛び上がる。
「…って、放課後ぉっ?!」
立ち上がる時に豊満な二つの膨らみが大きく揺れた。赤髪がボサボサのまま、机の横に掛けていたカバンをひったくり教室から飛び出す。
(なんだか、懐かしい夢を見たなぁ…)
彼女は、先ほど寝ていた時に見ていた夢を思い出して少し赤面する。全力ダッシュの成果が、すぐに玄関に着ける。
「あー…やっぱり怒ってるかな…」
頭を搔いて、自分の下駄箱から靴を取り出し素早く履く。そして、外に待っていた少年が呆れた目でこちらを見てくる。
「遅いぞ?どうしたんだよ?」
カバンを背中に預ける様にして手で持っている少年は少女に問う。
「ごめんごめん…居眠りしててさ…」
少年はそんな事だろうと思っていたらしく肩を竦めた。
「あのな、少しは気をつけろよ?それと…」
少年が少女に近付き、殆ど零距離になる。
「え、あ、ちょっ?!」
少年が髪の毛を直し始める。手にはクシが握られており、それで素早く直しているのだ。
「もう少し待ってろ。髪の毛、ボサボサじゃねぇか。直してやるから待ってな。」
少年はヘアゴムを取り出し、少女の髪の毛を後ろで止めた。
「…さて、これでいいか?嫌なら止め直すけど?」
少年は少し満足げに腕を組んでいた。少女は、彼が止めてくれた髪の毛を崩したく無かった。
「ううん、これでいいよ。ありがと、……!」
「そうか、喜んでくれたら嬉しいよ。」
少女に少年が微笑みかける。そして2人は、校門を出る。少し歩き、少年が思い出した様にぼやく。
「…懐かしいな。ここ、2人で来たよな。」
その場所は、桜並木の坂道。昔、彼達はここを散歩していたのだ。
「そうだね…いっつも私、……におんぶして貰ってたよね。」
少し恥ずかしげに頬を掻き、頬を赤らめる。その様子を、少年は笑顔で見ていた。
「あはは、変わらないな……は。どうせなら、またしてやろうか?」
ニヤニヤとしながら少年は少女に告げる。
「……いいの?」
目を輝かせて、少女は少年に返した。少年は少し焦りを見せ、少女に言う。
「あ、いや、これは冗談で……はぁ、分かったよ…ほら、早く乗れよ。」
途中、少女が裏切られた野良犬の様な眼差しで少年を見た為に、少年は少女に背を向けてしゃがみ込む。
「ありがと。……ってさ、ホント優しいよね。」
少女を背中に受け止め、そのまま歩き始める。その間に、少女が呟いた。
「そうか?そう思ってくれるだけ嬉しいよ。」
穏便な口調で少女に返す。夕日が2人の顔を照らす。風が心地よく吹き、頬を撫でる。
その時、意識がシャットダウンされる。まるで、何かに目覚めさせられるように────
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「…きて…くら……起きて、佐倉っ!」
エレナの通った声に意識が呼び戻される。亜鈴は、机に突っ伏して寝ていたらしい。現時刻はもう17時30分を過ぎていた。
「…あれ、私は…何を?」
亜鈴は、まだ寝ぼけている意識を無理矢理戻そうと眼を擦る。
「はぁ…アンタ、ずっと授業中寝てたのよ?そしたら放課後って、どんだけ熟睡だったのよ…」
物凄く呆れられた気がするが、亜鈴は気にも止めなかった。
「あ、あぁ、エレナ?なんで貴女が私を起こしたのよ?」
エレナはそっぽを向いて、嫌々答える。
「春希に頼まれたのよ。『今日泊まるなら、早く帰って来い』って言われたから、それを実行しようとしただけよ。」
腕を組み、目を逸らしたエレナの仕草に耐えられず、亜鈴は吹き出す。
「ぷっ…あはは!貴女、意外と真面目なのねっ!あはははは!」
とうとう腹を抱えて笑い出す。エレナは顔を真っ赤にして抗議。
「ばっ…馬鹿言わないでよ!春希に頼まれただけなんだってば!」
「うんうん、分かってるから…あはは、じゃあ…行こっか。」
「…ふん!」
亜鈴は机の横に掛けていたカバンをひったくり、歩き始める。エレナも同様に歩き始める。
「全く……春希に頼まれたとはいえ…ぶつぶつ…」
何かぶつぶつと呟いているエレナを尻目に、亜鈴は唯、目的地を目指した。エレナも負けじと追いかける。
(春希は…絶対渡さないんだから!)
そう心の中で叫び、走りだした。「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ?!」と言うエレナの静止の言葉も聞かず。
突如、何かにぶつかる。ガンッ、と頭の中で響く。何にぶつかったのかは、知らなかった。そのまま、意識が消え失せた。エレナの叫び声が、少しだけ聞こえた気がした。
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「…ぅ…ここ、は…?」
最初に視界に入ったのは、白い天井。ライトの純白の光が目に差し込む。少し目を細め、辺りを見回す。
(誰も…居ない?)
亜鈴は、背筋に氷を落とされた感覚に陥る。自分の状況を整理しようと、試みる。
(私は、何かにぶつかったの…よね?その後、気を失って…腕と足が動くから、誘拐では無いよね。
ん…?おでこの辺りにひんやりしたのが…ある?これ、なんだろう…)
腕を動かし、額にあった物に触れる。水分のぐちょっとした感覚が指を伝う。布の感触がある為、これは水濡れタオルだと判断した。
「…誰が…こんな事…?」
そうやって呟いた瞬間、扉の開く音。
「…あれ、亜鈴。起きてたのか。まだ動くなよ?お前、頭電柱にぶつけて流血しながら気絶してたらしいじゃねぇか。大丈夫か?」
「………え?」
亜鈴は自分がぶつかった物を知らなかった。しかも、流血していたのも初耳である。
「あのな、エレナが教えてくれたんだぞ?電話してくれたお陰ですぐに向かえたんだからな?エレナには礼を言っておけよ?」
亜鈴の額に乗っていたタオルをひょいと取り上げ、洗面器に並々注がれている水に浸けた。タオルを絞り、もう一回亜鈴の額に乗せる。
「すまんな、頭打ったって言ってたからさ。俺んち、氷作ってねぇんだよ…ホントごめん。」
罪悪感に満ちた顔つきで春希が亜鈴に謝る。
「春希、悪いのは私なのよ…春希が謝る必要なんて無いの。私が前を向いて走ってたらこんな事には…いたっ!」
頭に電撃の様な激痛が走る。大人しくして、寝ていないとまた激痛が走り回る事だろう。
「大人しく寝てろ。俺の部屋だけど…エレナはリビングで寝るとさ。俺は…そうだな…何処で寝ようか…」
春希がぼやく。
(寝る場所を、私が取っていたの…?)
そんな罪悪感に身を焦がれ、亜鈴は言う。
「もし…だけど。私の看病しながら…寝てくれないかな…?」
「いや、お前が困る…困らないか。なら、ここで寝かせて貰おうかな。椅子持ってくる。」
扉を開け、春希の姿が消える。亜鈴は、思考を少し巡らせる。
(エレナは、居るのかしら…)
そんな事を思っていると、とてつもない睡魔が亜鈴を襲う。亜鈴は、睡眠欲に身を委ねた。すぐに眠りについてしまった亜鈴は、朝まで起きなかった────。
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寝起きの微睡から意識を引っぺがし、目を覚ます。朝日が亜鈴の顔を照らす。
「…あれ…?今日…学校、だっけ?」
昨日が金曜日である為、今日は土曜日だ。
(そういえば、春希…どこに居るんだろう…)
少し体を起こし、辺りを見回す。そうすると、ベッドに突っ伏して寝ている少年が1人。そう、春希本人だ。
「…春希…?」
呼びかけても春希は起きる気配が無い。頭は少し痛むものの、これぐらいでは何とも無い。春希に顔を近付けてみる。
「……ん、んっ……」
春希が少し反応した。亜鈴はそれを微笑ましく思った。春希に亜鈴は唇を近付ける。
「……春希……」
額にキスをした亜鈴は、ベッドから降りる。そして、春希に毛布を掛ける。
(…春希、ごめんね。私のせいで…)
春希は自分の睡眠時間を削ってまで亜鈴を看病していたのだろう。そう思うと、春希に申し訳ない気持ちで一杯になった。亜鈴ははるきの部屋の扉を開けてリビングへと向かう。
「…あ、佐倉。起きたの?怪我、大丈夫?」
エレナが居た。エレナらしからぬ挨拶に少し驚きながらも返す。
「うん、少し痛むけどね…そういえば春希から聞いたんだ。私が気絶したの、エレナが言ってくれたんだって?」
その言葉を聞いたエレナは少し頬を赤らめ、そっぽを向く。
「…それが?」
素っ気ない返答だったが、亜鈴には照れ隠しの様に聞こえていた。
「いや、エレナが伝えてくれなかったら…って思っただけだよ。ありがとね。」
「礼なんていいわよ。春希に言えって言われてそうだし。それより春希に言いなさいよ。アイツ、佐倉の事で夜まともに寝てなかったんだから。この学園に併設されてるコンビニまで走って氷買って来て佐倉のおでこに乗せ続けてたんだから。」
これも初耳であった。そういえば、近くに何かの袋があった。あれが氷の袋だろうか。春希には、どれぐらいの迷惑をかけたのだろうか。それに、エレナにもかけている。亜鈴は行き場の無い怒りと罪悪感で頭の中が一杯になった。
「そんな…なんで…」
「知らないわよ。それは春希に聞きなさいよ。
……佐倉、アンタさ。危なっかしいのよ。もっと気を付けなさい?私にも迷惑かけてるんだから。全く…」
エレナは呆れを通り越して哀れな目でこちらを見てきた。亜鈴には、理解出来ない視線だったが。
「ごめんね…エレナ。1ついい?」
「何よ?」
亜鈴は少し疑問に思っていた事を聞いてみる。
「なんで私の事、佐倉って言うの?亜鈴でいいよ?」
「…嫌なの?私、この呼び方が1番しっくり来るんだけど?」
「いやだってさ?私達もう友達じゃない?」
「…友達、ねぇ……」
「…あれ?ダメだった?」
それから、暫くの沈黙が2人を包む。その沈黙を打ち消す様に発する。
「私は…私は、佐倉と仲良くする資格、あるの?春希との魔法決闘の時、あんな事言ったのに?」
亜鈴は何かが吹っ切れた様に爆笑する。
「あはははは!そ、そんな事?!いやあれは私も悪かったけど…あははっ!」
若干涙目になりながら腹を抱えて笑う。エレナは顔を赤くして抗議。
「う、うるさいわねっ!誰だって不安じゃないあんな事言ったんだから!」
「私は全然気にして無いよ、それよりも必死に反論してるエレナ可愛い!あはははは!」
「ば、馬鹿ぁぁぁぁぁっ!」
そうして、朝の小さな騒動は春希が起きて終了した。
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部屋でくつろいでいるエレナと亜鈴に春希が問う。
「2人ってさ、買い物とか行かないのか?ここの商業区とか行ってみたいんだけど…今日は無理だろうから明日行ってみないか?」
春希の提案に素早く反応したのは、エレナだった。
「行かないわね…春希は知ってるの?」
「あー…多少な?」
春希が少し恥ずかしそうに頬を掻く。
「そうなの?私も行ってないから気になるなぁ…明日行こうよ!」
亜鈴がソファーで寝転がりながら春希に言う。春希が頭を抱えてリビングのテーブルに突っ伏した。
「なんで行ったことある奴って言うか知ってる奴俺だけなんだよ…なぁ、他にも誰か呼ばな」
「「ダメッ!」」
春希の言葉をキャンセルするように2人で声を合わせ否定する。春希は心の中で呆れ返っていた。
「はぁ…分かったよ…3人で行こうか。」
明日までに商業区の地図を覚えておこうと思った、春希であった。
次回、「休日の急襲」
To Be Continued!!!!!
あとがき
どうも、神威です。さて、今回の魔法使いのアイゼンロザリオいかがでしたか?少し過去のお話をねじ込んで見ましたが大失敗ですね。はい。そういえば、この作品が出来たきっかけとか話してませんでしたね。ちょっとお話します。
このお話が出来たのは、友人が「魔法使い系統の話って萌える気しねぇ?」と私に振って来てキラキラとした目で私を見るんですよ。やめろ私に振るなと言いましたよ。ええ言いました。ですが作れー作れーと言われている内に私が折れてしまって。そうする内にこれ書くの楽しくなってしまって。
少し真面目に。
編集に関わって下さった皆様。そして、これを呼んで下さる読者様。皆様には神威の精一杯の感謝を送らせて頂きます。
そろそろこの辺りで切らせて頂きます。
また、次回でお会い出来るならお会いしましょう。
神威 春華