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魔法使いのアイゼンロザリオ  作者: 神威 春華
序列戦編
3/4

第二講目

第二講目

「VS、金雷の姫!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼女の言葉を聞いたクラスの面々は一気に喧騒を広げる。春希自身、この喧騒の意味を理解するのに少しの猶予を持て余した。

「月音!いいから私と魔法決闘しなさいよ!!」

魔法決闘デュリオ・プレイダとは、国立法技研究学園内の生徒達が第一アリーナにおいて、許されている私闘である。これによって、序列が決まる事もあり、これを学園祭の出し物にするほどの人気ぶりらしい。

「な、なんで俺みたいな底辺生徒なんだよ?実際、俺の序列は最下位だ。」

春希はエレナに疑問を投げつける。

「月音には関係の無い事よ。私は、序列32位よ。」

要らない…とは言えない情報まで教えてくれた。全校生徒56000人の32位。春希にとっては雲の上の存在で、関わることがないと思っていた。だが、現実は甘くない。今こうして目の前に序列32位の彼女が居るのだから、否定が出来ない。したくても出来ないのである。

「…俺は戦わなきゃ駄目なのか?」

「当たり前よ。さぁ、早く言いなさいよ。私と魔法決闘するって。」

春希は逡巡する。ここで、この誘いに乗ったら自分が神脈世代だとバレる可能性がある。だが、乗らなかった場合男子になんと言われるか分かった物ではない。事実、エレナはとても綺麗なのだ。つまり、美少女なのだ。彼女は。

数十秒考えて、春希は答えをエレナに告げる。

「…莉望。俺はお前の魔法決闘、受ける。これでいいだろ?」

春希は面倒くさそうに魔法決闘を受けると言った。エレナは、少し満足げに微笑む。

「それでいいのよ、月音。期日は今日。放課後に、第一アリーナで。」

急な話だが、特に予定も無いので行かなければならない。

「…分かったよ。ルールは通常ルールでいいんだな?」

魔法決闘には二つのルールが設定されている。

一つは、攻撃から身を守る防御魔力シールド・マナが尽きた方が負けというルール。こちらが一般的に使用されるルール。

二つ目は、防御魔力が尽きて、意識が飛んだ方が負けと言う有り得ないルール。これは生徒間だけの、ケンカルール。

「通常ルールよ。じゃあ、楽しみにしてるわね、月音。」

キーンコーンカーンコーン…1時限目終了のチャイムが鳴り響く。エレナはこちらを向き、最後、春希に告げる。

「逃げたら承知しないわよ?」

春希は溜息をつきながら、言い返す。

「逃げるわけねぇだろ?折角来てもらったんだ。やらなきゃ失礼だろ?」

「ふ、ふん!その威勢が何処まで持つか、見物ね!」

そうして、1時限目の騒動は幕を閉じた。春希はまた、呆れた溜息をついた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2時限目が終わり、悠牙がこちらに話しかける。

「春希君、本当に金雷姫トワイライト・プリンセスとやるの?」

聞き慣れない単語が春希の耳に届いた。金雷姫?

「その…トワイライト…なんちゃらって何なんだ?」

知らない事はしっかり聞かないと。少しでも情報を集めないと負けるだろうから。

「えーと、二つ名だよ。要するに。」

聞いたことがある。二つ名とは、強い力を持つ生徒がその功績や、実力、魔法の属性を把握した上で学園側が名付ける物である。

「そうだったのか…待てよ?プリンセスって事は、莉望はお姫様なのか?」

悠牙はその言葉を聞いた時に顔をしかめたが、直ぐに表情を落ち着かせ話す。

「うん…なんでも、亡国のお姫様で、日本に逃げて来た時に日本人の男性と結婚したんだってさ。」

春希はその話を聞いて、心の奥がズクン、と傷んだ。彼女は、そんなに辛い過去を持っていたのか…

「そうなのか…それは、辛いだろうな…ところで、莉望の属性みたいなのは何なんだ?」

話を切り替えて、悠牙に問う。

「彼女は雷の魔女アイゼンだね。武器は二刀の剣。剣速は先端部分で音速を少し超えるんだってさ。」

春希は感嘆する。魔女なのに剣とは。しかし、春希は1人思い当たる人物が居るのを思い出してしまったので、春希は忘れようとする。

「そうなんだな…じゃあ、俺と相性最悪じゃないか?俺の片刃の大剣だからさ、スピードが遅いんだよな。」

「そうかもね…まぁ、ボクも応援しているよ。君なりのノルマリオの意地見せてね?」

「プレッシャーをかけんな…期待に応えられるように、努力するさ。」

2人は微笑みを交わし合い、授業のチャイムが鳴り響いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

マギクレシア教室、少女が周りの目を引いている。その少女とは、先程春希に魔法決闘を挑んだ少女。そう、莉望エレナである。何故、人目を引いているか。簡単だ。1人の女生徒とエレナは喧嘩をしていた。

「エレナ、なんで春希と魔法決闘なんてするの?!」

「うるさい!佐倉には関係無いでしょ!」

エレナと喧嘩していたのは、緩やかなウェーブがかかった赤髪の少女。つまり亜鈴である。

「エレナじゃすぐに負けるわよ!」

「あんな雑魚に負けるわけ無いでしょ?アンタ、序列何位なのよ?!」

「22位よ!」

亜鈴はふふん、とふんぞり返る。その時に魅力的な胸がワンテンポ遅れて揺れた。

「ぐぎぎ…この乳牛めぇ…!」

「うるさい貧乳」

「今なんて言ったのよ?!」

エレナと亜鈴の胸は明らかに差があった。亜鈴は普通の生徒よりも大きい。発育がまだ止まらないらしい。それに比べてエレナはほぼ平らと言っても過言ではない程の大きさである。つまり貧乳なのだ。エレナはそれをコンプレックスに持っている為、貧乳とは禁止単語なのである。エレナの前では特に。

「まぁ、エレナじゃすぐ負けるわよ。春希のスピードに追いつけない限り、ね。」

エレナに取っては聞き捨てならない。あんな奴のスピードに追いつけない?馬鹿を言え!

「私の最高剣速は音速を少し超えるわ。たかだかノルマリオのスピードじゃ私に勝てる訳無いわよ!」

その喧嘩を落ち着かせたのは授業の予鈴だった。2人の少女は睨み合ってから渋々席に戻って行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、放課後。第一アリーナの前には何故か人の行列が。それを見た春希は、悠牙に問う。

「あのさ、悠牙?なんで私闘なのに人が見に来るんだよ?」

悠牙はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに答えてくれる。

「だってさ、マギクレシアとノルマリオの生徒が闘うなんて、それは気になるでしょ?ボクだって気になってたからこの場に来てるんだし。」

「お前なぁ…これは見世物じゃねぇぞ…」

これだけ人が居れば春希の実力は使えない。つまり、とてつもない手加減をしなければならないのだ。

「まぁ、頑張ってよ。ボク応援するからさ。」

悠牙は春希に微笑む。だが、春希はえも言われない胸騒ぎがしていた。そう、まるで、春希が変わった、あの時のような…

その思いを払拭するように、1人歩みを進める。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

同時刻、アリーナ控え室では。

(月音は、何かしら隠している…?それを見せたくないから、あの時の決闘申請で面倒くさそうに…?)

1人思考を巡らせるエレナ。だが、自分が信じる戦法なら勝てる。そう思っていた。だが、エレナも同じ胸騒ぎがしていた。

エレナが祖国から逃げてくる時の前日に起きたような、そんな胸騒ぎがエレナを埋め尽くしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方観客席では。

(春希、まさかとは思うけど本気は出さないわよね…?この人だかりなら、使わないだろうけど…)

春希の本気は実際亜鈴も1回程しか見た事が無い。その時は亜鈴が誘拐された時に見たのだったか。あの春希は、もう見たく無いのと同時に、とてもカッコ良かったのだ。この世の中で1番と思える程に。

(負けないでね、春希…!)

両手を握り、亜鈴は空に祈った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

春希は、最後の確認に入っていた。法具を収納状態にして、学生服の裏に仕舞う。

「法具もオッケー…後は、どれだけの速さなのかを実感しないとどの程度力を出せるか分からないな…」

そんな思いを巡らせていた時、不意にアナウンスが流れる。

「月音春希、莉望エレナは速やかにアリーナに入場しなさい。」

春希はあの時の胸騒ぎが残っているのにも関わらず、歩みを進める。

(この胸騒ぎは、何なんだろうな…)

そんな事を思いながらも、視界が開けてくる。観客席に居る生徒達の歓声を浴びながら春希は入場する。

もう引けない。やるしかない。

そう自分に言い聞かせ、少女と対峙した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よく逃げずに来たわね。」

「逃げねぇっての…しかし、なんで俺なんだよ?」

「関係ないわよ。」

春希の問いは、即答され、キャンセルされる。春希は溜息をついて、アナウンスの指示を待つ。

「決闘者の法具の展開を許可する。」

春希はその指示を聞いてから、学生服の裏に仕舞っていた自分の法具を展開させる。純白の持ち手と、発動体からは白い光の刃が構築される。至って普通の法具だが、これは春希にしか扱えないモノ。エレナも法具を展開する。春希とは違い、白と黒の発動体を右手と左手に1つずつ握り、純白の刀身と漆黒の刀身が構築される。春希の法具よりかは短いが、通常の片手剣よりかはずっと長い。

「魔法決闘、序列56000位、月音春希。序列32位、『金雷姫』莉望エレナ。

決闘、開始!」

その合図と共にエレナが消えた。そして、春希の懐に現れ肩を狙い突く、が。春希のバックステップが早かった。狙いは外れるも、脇腹に2本直撃する。その時、春希は苦痛に顔をしかめた。

(切られたっ?!)

(避けられたっ?!)

一旦距離を取った春希は、剣を構える。

(そうか…!アイツは、俺を殺そうとしているのか…俺の傷の治りが早いのも知っていての戦法か…ッ!血が飛び散らないタネも分かった。アイツの属性は雷だ。つまり、刀身を充分に熱しておけば、切った時に一瞬で火傷させ、出血を止められる。刀身の周りは熱があるから、その熱で少しだけ飛んだ血を蒸発させている…!しかも、刀身に付いた血は刀身の熱で消えてしまう、その蒸気を悟られないように周りに雷が発生しているのか…!)

春希は戦慄する。自分が神脈世代だと分かっていて、この戦法を使って来たとしたら…

次は、有り得ない場所に突き刺さるだろう。

(どうする…?!俺はどうやって倒せばいい…!?)

(やっぱり、あの速さは見切られる…!神脈世代だから、あの程度の攻撃なら当たらないハズ…だけど、なんで避け切らなかったの…?)

エレナも春希同様、思考を広げていた。

(ここの生徒達に、神脈世代だという事を悟られない為に…?)

エレナは冷や汗を覚えた。今の動きが本気で無いなら、通常の実力なら、自分はどうなるだろう。

(月音、アンタは…強いよ。だけど負けられないのよ、私はッ!!)

エレナが地を蹴るのと同時に春希も駆けた。

法具と法具が激突し、重い金属のような音を響かせる。火花が散り、周囲に風が巻き起こる。続けて2撃目、3撃目と法具同士を打ち付け合う。

(そこだッ!!)

エレナの法具が弾かれた隙を逃さず法具での一撃を加える。腹に当たり、エレナが吹き飛ぶ。

「あぐッ…!」

息が吐き出され、地面に激突し跳ねる。直ぐに体制を立て直し、雷鳴の如く加速して春希に切りかかる。何回か剣を振るい、春希に2つ剣で切られた筋が入る。だが、その傷は直ぐに癒えてしまう。

「ぐッ…!こんのォッ!!!」

カウンターの横蹴りが入り、エレナは空に浮く。春希はそれを逃がさず、渾身の一撃を加えようとしたその瞬間。

アリーナの入場口が爆音と共に吹き飛ばされる。春希はその音の根源を見て、驚愕した。

銃を持った三人衆が、爆発物を使い扉を爆破させたのだ。そして、彼等の銃が音を上げるのを悟った春希は、エレナを自分の後ろに押し飛ばす。

「伏せろエレナッ!!」

春希の絶叫。

そして、彼等はトリガーを引いた。火薬の炸裂音が2秒程続き、生徒達は唖然とする。

エレナに飛ばされたであろう弾丸が、春希に命中した。エレナを庇うようにして立っていた春希は、血を飛び散らしながらも自分を盾にしてエレナを守る。

「……月音、アンタ…!?」

やがて銃声が途切れる。三人衆の銃の弾倉が切れたのだろう。

「うぐッ…!莉望、無事か…?」

すっかり朱に染まった春希が、エレナに問いかける。

「な、なんでアンタ…私を庇って…?!」

「そんなの…学園の仲間、だからだろうが…」

その言葉を言い終えた春希は、地面に崩れ落ちる。地面に赤いシミを作り、春希は動かなくなった。

次に聞こえたのは、生徒達の絶叫。逃げる生徒達に三人衆は機嫌を良くした。

「イイねイイねェ…!そこのお姫様だけだったんだがァ…邪魔が入ったんで殺しちまったぜェ…!」

「流石兄貴ッスよ…!さぁ、お姫様を攫いましょうぜ!」

三人衆のリーダー格は、エレナに近づき、蹴り飛ばす。エレナからは痛みに喘ぐ声が漏れる。

「あう…ッ!」

その声を気に入ったリーダー格は、髪の毛を強引に掴み上げ、顔を覗き込む。

「良い顔してんじゃねぇかよおイィ…俺の好みだぜ、これはよォ…」

不気味に舌舐めずりをしたリーダー格を見て、エレナは体を強ばらせる。

「な、なんで私なのよッ…!しかも、関係無い奴まで殺して…!」

そして、アリーナには春希の死体と、襲撃して来た三人衆とエレナだけが残った。

「アンタを攫いに来たんだよォ…さぁ、行くぜェ…!」

エレナに銃を押し付けた瞬間、一陣の風が吹いた。それは、エレナに取ってとても暖かく安心出来る風だった。

「悪いな、俺は死んでなんかいねぇんだよ。」

そう言った時には、リーダー格の腕からはエレナの姿が無かった。

「月音、アンタ…死んだんじゃ無かったの…!?」

「その話は後だ。まずは、この雑魚を片付けないとな。」

春希はエレナを抱えたまま、観客席まで飛ぶ。そこで、エレナを降ろす。

「ここで待っててくれ。すぐ終わるから。」

「ちょっと、アンタ待ちなさいよッ!?」

エレナの静止の言葉を耳にもせず、アリーナ中心に戻る。

「このガキィ…調子に乗るんじゃ、ねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

春希に3つの銃口が向けられ、そこから弾丸が火薬の加速により、高速で迫る。その弾丸は、春希に届かなかった。何故なら、春希が法具で切り裂いていたからである。

「この程度…亜鈴の方が早いぜッ!」

三人衆の間を縫うようにして通り抜けた春希は、法具を収納状態にする。

「まさか、逃げんのかクソガキィ…!!!」

「だって、もう終わってるじゃねぇか。」

その言葉が終わった瞬間、三人衆の武器が細かく切られた状態になり、落ちる。

「な…ッ?!」

その動揺している瞬間を使い、春希は足でリーダー格の顎を蹴り上げて気絶させる。他の男も同様、顎を蹴り気絶させる。

春希は肩を落として、ぼやく。

「…神脈世代なの、バレてるよなぁ…はぁ…」

その時、アリーナの観客席から金髪のロングツインテールをなびかせながらエレナが舞い降りる。

「月音、アンタ…何したのよ?」

目の前の状況が把握出来てないのだろうか、春希に問う。春希は、隠さずに告げる。

「顎を蹴り飛ばして脳を揺らし、気絶させただけ。そして、俺は神脈世代だ。

…ところで、決闘の勝敗はどうする?俺の防御魔力、ゼロだけど?」

春希は神脈世代という事を告げ、決闘の勝敗はどうするかと問う。

「…月音の、負け?」

有り得ない。あんなに強かったのに、負けになるのか?何故…?!

「このルールは防御魔力が尽きたら負けだろ?だから俺の負け。それだけだよ。」

彼は忠実すぎる。あくまでもルールを守ろうと言うのだ。

「それに、俺はお前を守れただけでいいさ、莉望。」

エレナは、心臓が激しく跳ねるのを感じた。彼の笑顔に、魅了されてしまった。当初の、殺害などという任務の事すら、全て無かった様に忘れてしまった。

「…月音、1つお願いが、あるの。

…いい?」

勇気を振り絞り、聞く。

「なんだ?無理なお願いじゃなきゃいいぜ?」

良かったが、果たして快く受け入れてくれるのだろうか。暴れる心臓を押さえつけ、言いたかった事を言う。

「私の…護衛を、して欲しいの…」

精一杯の勇気。エレナには春希しか頼れないのだ。彼のような腕が立つ者なら、頼めると思ったのだ。だが、無理があるだろうか…?

「あぁ、さっきの奴らがアンタを狙ってたから、それから守って欲しいと?」

「だ、駄目、かな…?」

「いや、全然構わないよ。俺は一向に困らないし。」

快く引き受けてくれた。今すぐ飛び跳ねて喜びたいのを、押さえつける。

「ただし、俺からもお願いがある。」

「ひゃうっ?!な、何?!」

声が裏返ってしまう。興奮を隠せないので、顔を赤くしているのだろう。

「俺と友達になってくれ、エレナ。」

真剣な顔で、こちらを見据えて言ってきた。

「…月音、そんな事でいいの…?」

「春希でいいよ。俺もエレナって呼ばせてもらうけどな。」

あまりにも無欲すぎる要求で、目を丸くした。彼は、本当にそんな要求でいいのだろうか。深くは考えなかったが。

「そうだな、今日の事もある…今日は俺の部屋に泊まって行け。その方が安全だろ?」

春希は唐突に言い放つ。エレナはしばらく言葉の意味を噛み締めて聞いていたが、やがて顔を真っ赤に染め春希に言う。

「な、何言ってるのよ?!ま、まずアンタが迷惑じゃ…!」

「いや、俺は構わない。しかも、他に頼れる奴、いんのかよ?」

「うぐ…」

痛い所を突かれて、呻き声を上げてしまう。

「そ、それに、異性と二人っきりなんて…その…」

左手と右手の人差し指をくっ付け、俯いてしまった。

「あー…それなら、俺の部屋で寝てくれ。俺はリビングで寝るから。」

彼は本当に何なんだろうか。泊まっていけと言われるし、身を盾にして自分を守ってくれた。しかも無欲。何者なのだろうか。

「そ、そう…なら、お邪魔するわね。」

そして、アリーナの事件は警察が来て終了した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うー…恥ずかしいわね、なんか…」

私、莉望エレナは月音春希の部屋に向かって歩いている最中。あの時の勝負、一体春希は何を隠してるんだろう…

そんな事を考えている間に部屋に着いた私は、チャイムを鳴らす。

「はーい、今行きまーす。」

来た…春希が。私を守ってくれた、命の恩人が。

「どなた様ですか…って、エレナか。さ、早く入って。」

春希に言われるがまま、私は部屋に入った。まず玄関は男とは思えないほどスッキリしていて、とても清潔感があった。

「取り敢えず、荷物置こうぜ。重いだろ?」

私の荷物を持って、奥に進んで行く春希を追いかけた。

「は、春希、さ…」

私は何故か廊下の途中で問いを投げかけた。

「ん?どうした?」

「なんで、私なんかを泊めるの?春希、色々言われるんじゃないの?」

春希は少し考えた素振りを見せた後、私の方を向かって言ってくれた。

「別に構わないよ。それに、エレナの安全の方が大切だよ。」

…彼は、卑怯だ。本当に卑怯だと思う。

「さて、俺の部屋で寝てくれ。今日限りだろうが、ゆっくりしてってくれよ。」

いつの間にか春希の部屋の前に居た私達。私は、ドアを押し開けた。

「…綺麗…」

とても男子とは思えない清潔な空間。整頓されたベッドは今にも飛び込みたい意欲を引き立たせる。

「もうこんな時間だ、寝ろよ?」

時計を見上げると、時刻は午後11時半を回っていた。春希は私の荷物を部屋に置いた後、布団を持ち出して、こう言った。

「俺の匂い残ってるかもだけど…嫌だったら消臭剤使っていいから。枕元に置いてあるから、自由に使っていいからな。」

「わ、分かったわよ…」

そういって、彼は部屋から出ていきリビングに向かった。先程リビングを見た限りでは、ソファーで寝るのだろうか。

「私も、そろそろ寝ようかしらね……」

まず、着替えを済ませる事から。制服をハンガーに掛けて、下着を外そうとした時。

「あぁ、そうそう。伝え忘れた事が…!?」

春希が、部屋に入って来た。しかも、今は私が着替え中だ。つまり、私の下着を思いっきり見られたのだ。

「な、な、な……!?」

「す、すまんっ!」

春希が部屋から出て、扉を思い切り閉める。私は叫びたい衝動をどうにか抑えて、春希に問う。

「み、見た…?」

私の問いにはすぐに返答があった。

「……本当にすまん、チラッと見えた…」

「なっ…!?」

やはり見られていた。しかも今日の下着は純白でシンプルな物。だが、自分の背中を見られたのだろうか?

「春希、私の背中見た…?」

「背中?見てねぇよ?」

私は安堵の溜息をつく。私の背中には、仰々しい紋章が付けられている。勿論、消える事の無い忌まわしき怨念。これだけは、誰にも見せたくない。

「す、すまん、もう寝ろ、な?」

「わ、分かってるわよ…!」

「そうか…お休み、エレナ。」

扉越しに春希の声が届く。私の胸がドキン、と跳ねて声が少し裏返る。

「そっ、そうね!お、お休み春希!」

動揺が表に出過ぎた声音で春希に言った私。あぁもう、馬鹿!私の馬鹿!なんで声が裏返るのよ!

「おう、いい夢…とは言えないだろうけど、なるべくいい夢を。」

春希の足音が遠ざかり、次は来ない事を確信した私は、着替えを済ましてベッドにダイブ。

「…はぁぁ……春希の布団、ふかふかね…」

一言で言うなら、至福。雲の様なフワフワ感と春希の男らしいなんとも言えない匂いが混ざり、私の睡眠欲を掻き立てる。

「……春希の、いい匂い……」

彼が使えと言った消臭剤は使う気になれない。この匂いを消したくない。今日、私はきっと彼に……

そんな所で、私の意識はブラックアウトした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…ん、ん…もう、朝…?」

私は体をベッドから起こして目を擦る。視界が徐々にクリアになっていくのを感じながら着替え始める。そういえば、彼はどうなんだろうか。気になった私は直ぐに着替えを済ませ、リビングへと向かった。

「…春希…?」

ソファーに寝転んで寝ている彼を見つける。彼に少し近づいて、顔を覗き込んだ瞬間。

「……誰だ……!」

いつの間にか壁に追いやられて首元に手が押し当てられていた。速すぎる出来事に頭が整理しきれていない。

「は、春希?私よ?莉望エレナよ?大丈夫?」

「…って、エレナ…?す、すまん、今退くから…」

だけど、不運はまた起こった。不意に玄関のドアが開かれ、声がする。

「春希ー…起こしに来た…よ…?」

私達の体勢を見て唖然としているのは、まさかの佐倉だった。なんでアイツが?!

「あ、亜鈴!?ち、違うんだコレは!」

焦った春希が足を引っ掛け、私の方に転ぶ。そして、彼の手が私のスカートに引っかかる。

「……あ。」

「…あ。」

春希と佐倉の気の抜けた声。そして、重力に逆らえずスカートが落ちる。

「あ、あ、あ…!!!」

「いや、これは不可抗力と言うか重力のせいと言うかしかもいきなり亜鈴が入って来たのもあったけど、駄目だやっぱり俺のせいだすいませぇぇぇん!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

私の足は春希の顎を正確に蹴り飛ばし春希が脳震盪を起こした。すぐさまスカートを持ち、上に引っ張り上げる。

「…エレナ、アンタ何してんのよ…?!」

「あれは春希が…!」

「しかもなんで居るのよ?!」

「そ、それは…」

絶対に理由など言えないのだが、致し方ない。私は渋々答える。

「ご、護衛を頼んだのよ、昨日のテロの1件で…そしたら泊まってけって…」

その言葉を聞いた佐倉は噴火寸前。両手の拳を握りしめ、ぷるぷると震えている。

「…お、起きろ馬鹿春希ぃっ!!」

佐倉が春希を思いっきり殴ると、春希が目を覚ます。

「いったぁっ?!な、な、なぁっ?!」

良く状況が理解出来ない様子の春希が頭を押さえながら跳ね起きる。若干涙目なのは生理的な涙なのだろう。

「なんで私も泊めなかったぁっ!」

「……はぁっ?!」

佐倉は何を言ってるんだと思ったが、分からなくも無いと思い始めた。事実、春希の部屋は居心地が良い。自分の部屋よりも、だ。

「あの、亜鈴さん?分かったから…な?エレナ、今日はどうするんだ?泊まるのか?」

ここで私に振られると意外と困るのだが…取り敢えず言ってみよう。

「その…春希さえ良ければ、また…」

「…だとさ、亜鈴。今日は泊めるから、な?つか、俺はエレナの護衛なんだ…だから、一緒の部屋に居てもおかしく無いだろ?」

春希の墓穴を掘っただろう発言が亜鈴を少し不機嫌になった。

「…うぅ、エレナ…護衛本当にお願いしたのね…」

私は少し優越感に浸った。嬉しい、のだ。春希を独り占め(例えだが)出来る事が。

「じゃあ、学校行くぞ。飯はあっちで食えばいいからな。エレナ、弁当持ってけ。」

春希が私に弁当を手渡してくれた。まさか、昨日の夜…作ってくれたのだろうか。亜鈴が少し妬ましげな顔でこちらを見てきた…気がした。

「…バレない程度に、してくれよ?お前ら困るだろ。」

…忘れていた。聞いた話、私には隠れファンが居るらしい。無関係の話だが。

「ええ。分かったわよ。」

返事を軽く返すと春希は亜鈴にも弁当を手渡した。その時、亜鈴の顔が一気に明るくなったのを私は見逃さ無かった。

…どういう事なのだろうか。それは私には分からない。

誰も他人の事を知り得る事など、無理なのだと、私は遠くない未来知る事になるのを、まだ知らなかった。


次回、「佐倉亜鈴と月音春希と言うコンビ」


To be continued!!!!!


あとがき


はい、どうも。神威です。この度は遅れてしまって申し訳無い……少し、別の事で忙しくてですね、あ、いえ、決してゲームでは無いですよ?!ぷよぷよクエストなんてやってないですからぁっ!

…あ、自白してしまった。いや、ネタが思い浮かばなかったのも有りますけどね?そういえば、最近白猫プロジェクトでハンターハンターコラボが始まりまして。そのコラボガチャを1回10連を引いたんですね。そしたらゴンとキルア君が舞い降りて来てくれまして。もう発狂しましたよ。トイレで。お陰で怒られましたが(笑)

そして、真面目に。

第1講目、第0講目を呼んで下さったS氏。編集作業に関わって下さいましたT氏。そしてノートに書き起こしている方のイラストを担当してくださっているもぐもぐさん。

私の様な下の下にお付き合い頂き有難うございます。これからも、投稿ペースなど、上げて行きたいと思う所存です。

それでは、次回に会うことがあるならば、またお会いしましょう。



神威 春華

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