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ボクとランのモノガタリ  作者: 今田信義
8/9

夢の中のふたり

年が明けて暫らくすると僕の容態が急変した。

救急車で病院へ運ばれた僕は、朦朧とした意識のなかでランのことを考えていた。


「ラン…ラン…」


僕は、病室で高熱にうなされながらランの名前を呼び続けた。


「あきらちゃん、ランちゃんは家で、あきらちゃんの帰りを待っているのよ。早く元気にならないとね」


耳もとでお母さんが優しく囁いてくれた。




毎日毎日、点滴をされた。

針を刺した腕が痛くてたまらなかった。点滴をする度に針を刺す場所が違っていたので、僕の腕は穴だらけにならないかと、心配になったほどだ。


ポタポタ


ポタポタ


点滴がたれる。


ノロノロ


ノロノロ


ランが歩く。


(なんだか似ているな、点滴がたれるペースと、ランが歩くペース…)


いつもいつも、ランのことを考えていた。

毎晩、夢にランが出てきた。


僕とランは、いつも夢の中で走り回っている。

夢の中の世界は、現実の世界とは正反対なんだ。夢の中ではいつもランと二人きり。だけど、現実の世界は、お母さんとお父さんもいる。


僕は、夢の中でらんと二人きりで生活したかった。


夢の中では熱も出ないし、追いかけっこもできるしね。



体調は、徐々に良くなっていった。

だけど、薬を飲むと、気分が悪くなりご飯も喉を通らなかった。

お医者さんにそのことを話すと、


「あきら君、お薬は、病気をやっつけるために飲むものだよ。病気に勝つためにも、頑張って飲んでいこうね」


と、言っていた。


それから暫くして、退院の許可が出た。


家に着くと、すぐにリビングに向かった。


ランはベッドの中で丸くなって目を閉じている。


「ランっ、ただいまっ!」


と、ランに抱きつく僕。


「らん、会いたかったよぉ。ランも会いたかったよねっ」


ランは、チラッっと僕を見てまたすぐに目を閉じて眠ってしまった。


僕も、ランのベッドに頭を載せ、ランの体に顔を埋めて目を閉じた。


「あきらちゃん、風邪ひくわよっ」


と、台所から母の声が微かに聞こえた。


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