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ボクとランのモノガタリ  作者: 今田信義
3/9

ボーッとしている小犬

また熱を出した。40度からの高熱で、1週間くらい夢と現実をさ迷っていた。

いつも同じ夢を見た。夢の中の僕たちは、綺麗な野菊の咲く公園を笑いながら走っている。いつしか夢は、底なし沼にはまり、もがき苦しむランに変わる。そのランを助けようとして、溺れている僕を、僕がどこからか見ている夢だ。


「ラン!」


夢から現実に戻った時、僕はいつもランを探した。ランは、僕の枕元の自分専用のベッドで静かに目を閉じて眠っている。生きてるランを見ると、僕はいつもほっとした。


その繰り返しだった。


(僕は、夢なんかに負けない。現実の僕たちは違うんだ!)


と、意識が朦朧とするなかで必死に自分に言い聞かせた。


確かにそうだった。

現実の僕は走ることができない。ランも、高齢のせいか高齢に近いせいなのかは分からないが、走るどころかあまり歩きもしない。

ランが家にきた当初、体調のいい日はよくランとお散歩に行った。

もちろんお母さんも一緒にだ。

ランは変わっているというか、前の飼い主がしつけたのか、絶対にトイレは外でした。絶対に家の中ではしない。だから、お母さんは毎朝起きた時と夕方の食事の支度の前に、必ずランを散歩に連れて行かなければならなかった。


「変わったワンちゃんね。絶対に外でないとしないもの」


お母さんは不思議そうにランを見つめた。


「まあ、いいわ。お母さんもダイエットになるし」


しかし、ランはあまり歩かなかった。歩くどころか、用を足すといつも花壇の花や雑草の匂いをかいでる。


クンクン


クンクン


「ラン、少しは歩きなさい」


クンクン


クンクン


お母さんはランとのウォーキングを期待していたのだが、期待はずれに終わってしまった。

だけど、足が弱い僕にはランとののんびりしたお散歩が向いていた。


ランのお散歩と同じ時間帯に、よく吠える大きな犬も散歩に出てた。僕はいつもその黒い犬に吠えられていた。


わんわん!


うっー!


わんわん!


と。


僕はその度に震えあがっていたが、ランは吠えられようが唸られようが、いつもボーッとした顔でその大きな犬を見ていた。


ランはいつもボーッとしていた。


吠えもしなければ、何をされても怒らない。


よく、ランとお散歩に行くと、近所の子供たちが近寄ってきて、


「らんちゃんだ!かわいい!」


と、ワイワイ騒ぎながら、顔や体を撫で回した。

ランはいつもされるがままになっていた。


ボーッとしていない時は、いつもベッドの上で目を閉じていた。それが眠っているのか、ただ目を閉じているだけなのかは僕には分からなかった。



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