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第1話 翡翠の瞳

 カレンはある日を境に瞳の色が翡翠(ヒスイ)の色に変わった。

 勿論騒ぎになったし医師にも相談した。

 結果、原因は不明でやがて騒ぎは収束していった。

 瞳の色が変わった以外に別段何も変わった事もなくカレンはその後も普通に過ごしていく。


 しかし本当は些細は変化はあった。

 でもそれは誰にも言わなった。

 言ってもきっと誰も信じないから。


 カレンは不思議な声が聞こえるようになったのだ。

 こんな事言ったら専門の医者から専門の薬を処方される。

 カレンにとってそれは屈辱以外の何物でもなかった。


 で、どんな声が聞こえているかと言うと彼女自身は精霊のささやきと呼んでいる。

 暑いとか寒いとか痛いとかその聞こえる内容は他愛もないもの。

 未来を予言したりとか奇跡を起こしたりみたいな大げさなものは今のところ全く縁がない。

 声の主は霊的なものでも動物でもなく、鉱物…つまり石からではないかと彼女は推測している。


 それに声が聞こえたから何がどうと言う事もなく、その声をラジオか何かのような暇潰しのノイズのように捉える事でカレンは平常心を保っていた。

 だからその声を彼女はただ聞くだけ。どんなにその声が話しかけても彼女自身が反応する事はない。


 その気になって耳を澄ませば彼女はどんな石の声を聞く事も出来た。

 それはつまり巨大な石の大親分でもあるこの地球の声も聞く事が出来ると言う事。

 けれど、一度試そうとしたらあまりにも巨大な意志を感じて断念せざるを得なかった。

 やはり一介の女子高生が聞いて対処出来るのはそこらに転がる石が精一杯のよう。


「ふぅ、暑いな」


 カレンは流れる汗をタオルで拭う。

 合宿でやって来たその場所は深い山の中で自然は豊かなのだが不便で仕方のない場所だった。

 部員が数人の写真部にそこまでの合宿が必要なのかどうかはこの際問題にしなくていいだろう。

 それはこの物語にそれほど影響する話ではないからだ。


「それじゃあここから自由行動!みんなこの自然の中で素晴らしい写真を撮ろう!」


 最近のカメラはデジカメで昔に比べたらアホみたいに便利になった。

 メモリーがあるかぎり何枚も写真が撮れるし撮った写真をすぐに確認出来る。

 写真部とは言ってもただ写真好きが集まっただけのような集団で技術の向上を目指そうなんてのは一人もいない。

 一人くらいマニアックなのがいてもいいものだけど…そう言うのは顧問の先生くらいのものだった。


 その顧問の先生は自由行動と言った途端すぐに部員達の前から姿を消していた。

 聞けばいい鉄道写真の撮れる穴場がこの森の近くにあるらしい。

 この顧問、生粋の撮り鉄だからなぁ…(遠い目)。

 合宿の場所をここに決めたのも100%顧問の趣味だった。

 カレンは個人的にはこんな不便な場所は願い下げだったのだが部活は好きだったのでそのまま流れで参加してしまった。

 部員7名で不参加2名の5人の合宿。あ、顧問入れて6人か。


「ま、適当に写真を撮ってお茶を濁すかねぇ」


 合宿に参加した写真部の5人は結構個人主義でみんなバラバラ。

 カレンと仲がいい部員がいない事もなかったけどその子は今回見事に不参加決めちゃってたので今回彼女は一人で森の中を散策する事になってしまっていた。


 森の中はまたたくさんの石に囲まれているとも言える。

 河原なんて行ってしまうと暇潰しのノイズもかなりの大きな雑音に変わっていた。


(これだから…自然なんて嫌いなんだ…)


 嫌だ嫌だと言いながらカレンの足は何故かそのノイズの元凶である石がゴロゴロしてる場所ばかり歩いていた。

 それはまるで何かに導かれるように。


 そして気が付くとカレンの目の前に巨大な石が迫っていた。

 ぼうっとしていたカレンはその石を目にした時、急に意識を失ってしまった。

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