Who loves you?
同性愛、異性愛に関する話
個人的な見解なので、科学的な根拠とかはない
それじゃあまあ、話をしようか。
ん?ああ、これかい?犯罪予防がどうとかで対話内容は記録を取らなきゃならなくなってね…まあ、僕が話した内容はともかく、君の発言は権限を持つ人しか確認できない事になってるからまあ、安心してくれ。どうせ君が犯罪を起こしでもしなければ態々確認しないよ。
それで、ええと…君は何故此処に居るんだったかな?
…うん、うん、学校のいじめか。君にとっては深刻な問題だろうね。
ん?そうでもない?
…ふむ。成程、成程…君の両親は、その治療を僕に求めている、と。ははあ、典型的な多数主義者なんだね、君の母親は。
いや、多数主義者ってのは僕が勝手に言ってる言葉でね、多数派が必ず正しいと思ってる輩の事さ。保守的で、己の価値観から外れた者を嫌悪し、排除しようとする事もある。
数の暴力という奴だよ。多数派が必ずしも正しいってわけじゃない。ただ、数が多い方に合わせた方が不満を訴えにくい、というだけだ。勿論、だからといって少数派が正しいわけでもない。
結論から言おうか。僕は君を治療する事は出来ない。アドバイスくらいはできるけどね。
何故って、簡単な事だよ。君は別に病気ってわけじゃない。病気じゃないから治療する事はできない。簡単な論理だろう?
そう、同性愛ってのは病気じゃない。個人の嗜好だ。ちなみに、君は異性を好きになる事についてどう思う?有り得ない?有り得る?わからない?
…そう、少なくとも嫌悪感はないんだね。だったら、君は同性も異性も愛せるのかもしれない。両性愛者ってやつだね。選択肢が広いってのは悪い事じゃない。
そうだね、魅力的に思える同性には出会えても、異性には出会えないかもしれない。それもまあ、巡り合いって奴だ。君は偶々異性より先に同性に見つけてしまったと、それだけの話だ。
純粋に異性しか愛せない人もいるが、大体の人間は潜在的には両性愛だって話もある。深く気に病む必要はない。だがまあ、一般的には異性愛が普通とされていて、推奨されているからな。自分が同性愛だと公開して暮らすというのは少々厳しい。環境がね。現に君は学校ではいじめられ、母親に病気扱いされる事になった。
解決法?簡単な事だよ。異性も愛せる振りをすればいい。或いは、さっぱり"そちら側"には興味がない振りをすればいい。そうすれば、周りの人間は少なくともその話題で君を異常扱いする事はないだろう。
そう、振りだ。誰も心の中までは覗けない。表に出さなきゃ何も言われやしないよ。
君は子供だ。まだ両親の庇護下にあり、己の責任で生活の基盤を変える事はできない。だから、大人になるまで…自分の権限で何もかも決める事を許されるようになるまで、与えられる環境に適応して生きるしかない。
勿論、適応しないで意地を張って己の意思を貫くのも自由だ。僕は推奨しないけどね。そっちは茨の道だ。君も、君の両親も、沢山傷つきながら進む事になるだろう。…まあ、後から公開しても問題の先延ばしになるだけかもしれないがね。
大人になってそれから再び素敵な恋人が出来て、それが偶々同性だったとして、その時はその時だ。君は両親の元を離れ、愛する人と共に新天地へ向かう事も出来る。異性だったとしても、別の理由で反対される可能性もあるからね。必ずしも安泰じゃない。
異性愛と同性愛の違いなんて、究極的には結ばれた先で子供が出来る可能性が欠片でもあるかどうか、ってだけだよ。異性愛でも出来ない時は出来ないがね。
僕かい?僕は異性愛でも同性愛でも両性愛でもない。無性愛者だ。他人に性的な興味はないし人を好きになった事がない。…否、Z軸がない相手なら…いや、何でも無い。
ああ。僕には君の気持ちは理解できない。だが、君も僕の気持ちは理解できないだろう。だからお相子だ。
君の両親も、君も、僕も、誰が間違っているというわけでもない。どんな相手を好み、愛すかはその人の嗜好であり、正しいかどうかという問題ではないし、勿論善悪もない。それで迷惑をかけてはいけないけどね。
君は目玉焼きには何をかける?ケチャップ?マヨネーズ?醤油?ソース?
…塩胡椒か。悪くない選択だ。
僕?僕は目玉焼きの黄身がパサパサなのも溶けてるのも嫌いでね。基本的には食べないんだが、まあ、しいて言えば君と同じく塩胡椒かな。気が向けばその場にある適当な調味料をかける事もあるけど。
そう、純然たる好みの話だ。極論の類ではあるが、好きになる相手の性別も、目玉焼きの好みも、同じようなものだ。押しつけて無理強いすれば嫌がられるし、個人が他の人間に迷惑をかけない範囲で楽しんでいる限りとやかく言われる筋合いはない。
ああ、君が同性である誰かを好きになった、というのはけして悪い事じゃない。相手が何であれ、好意を持つのは良い事だ。双方に不都合をもたらさない限りはね。
ああ、そろそろ時間だ。今回はこれ位にしておこうか。気が向いたらまた話をしにおいで。