表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

幸せな人生の墓場と言うのなら

 前回のあらすじ

 ハンマーと彼女、ときどき腕力


 あれから何日か過ぎた。何時の間にか結婚はまだにしても嫁が出来てしまっていて俺は勝ち組ですわ、大勝利まったなし。

 首都から荷物を引き上げてこっちの宿屋に泊まり始めたんだけど昼間モンス狩りで夕方帰ってくると勤務明けのロリドワーフ、いわゆるカティさんと一緒に夕食をとってから部屋でイチャイチャしてます。

 ただハグはオッケーでもおっぱいを触ろうとしたら指が折れる勢いでフィンガーロックが極まるのは勘弁してください、リアルでは剣士タイプのはずなのにパワー負けするって見事なナイトだ素晴らしい。

 非童貞ならではの心のゆゆうを持つことが出来ている見事な経験者だと関心はするがどこもおかしくはない。

『この先はお父さんに報告してからです』だってさ。まさかの娘さんを下さいイベントを体験することになろうとは。ただもうやっちゃってるんじゃなかろうかという疑問もあるのだがこれは噂に聞く乙女心という奴らしいな、まさか実在しているとは思いもしなかったよ。

 ひとしきりキャッキャウフフを楽しんで日が暮れるとギルドの宿舎へ送っていく、この辺りの紳士さでナイトはみんなの人気者。ただナイトなのはカティさんであって俺はまだ剣士なわけだが気にしない気にしない。


 おおむね人生が素晴らしいライフになっている系、幸せがエブリディでリア充なのは確定的に明らか。世のバカップルに石を投げつけろと常日頃から思っていた過去の俺を諭してあげたいぐらいの心の広さが持てる様になったよ、やったねジズァーちゃん。


 そんなわけで日銭を稼ぎながら過ごしているある日のこと、剣士ギルドの受付に溜まっていた見習い達を引き連れて蜂の巣に遠征することになった。

 金のない新米を補助するツアーらしいが担当が怪我して中止になるところで俺に白羽の矢が立ったようだ。

 めんどくさそうだが嫁予定の彼女に頼まれたら嫌とは言えないな、どの道行こうと思っていた場所だしちょうどいいかも分からんね。一応怪我人が出ても知らんぞーと言っておいたらその辺りは自己責任らしい、セーフティネットが存在しない件について。

 加えてPT数に制限がなくなったのか20人ぐらいいるんですが大丈夫ですかねぇ? しかも全員剣士でバランスとはいったいなんだったのか、数の暴力でなんとかする! あるとおもいます。

 フレに呼ばれたので抜けますね^^ と行きたい所だがフレがいない系の不具合があります。

 まあ蟻なら踏み潰せば倒せるだろう、どうとでもなりそうだな。


 街を出て2時間ほど歩いただろうか、草原から砂礫が目立つ場所へと変わってきた。記憶にある地図ではもう岩場になるのはもう少し南側だったような気がするのだが温暖化の影響かも知らんね、排ガス規制とかない世界なのにそういうのもあるのか。

 道中狼や熊なんかが出てきたがすごいさんキックをお見舞いしておいた、相手は死ぬ。俺は割と最近からいる剣士なんだがやはりすごいさんの打撃力は格が違った、あわれにも敵はそのまま骨も残さず爆発四散。ドロップ品は残してくれてもいいんじゃよ?

 連れの貧弱一般剣士が尊敬と羨みの目で見てくるので謙虚にもそれほどでもないと言っておく(この辺の心配りが人気の秘訣)。


 そういえばすごいさんはすごいんだけどそれは攻撃力がすごいのであって腕力が上がっているわけではないんだよな、英語で言うとATK=攻撃力にボーナスが入っている感じ。

 大岩を持ち上げたりカティさんの腕力に打ち勝つことは出来ないが小石を投げると超パワーになるのもそのあたりの理屈のようだ。単体連続攻撃ができればさいつよになれると思ったら剣士スキルに連続ダメ技がないオワタ。しかしリアルでは好きなモーションで攻撃できるから一番効率がいい小パン連打で行こう。まあ雑魚モンスは今のところ一撃だからあまり関係が無い話ではあるが。


 試しに剣士スキルの『強打』を試してみたらすごいさんが光って叩きつけると相手は死ぬ。結果的に爆発して変化がなかったね、しょうがないね。読んで字のごとく武器で激しく攻撃するという技なのだが地味すぎるのが悪いのかはたまた雑魚モンスのせいなのか検証できません本当にありがとうございました。

 あとMPの減りがどんな物かも分からないのは不便すぎるでしょう、頭の上にでもゲージをつけてくださいますか? それだと自分で見れない罠。


 蜂の巣に到着だ、昔と変わらず岩場の洞窟で向かって右側に倒れた石柱が転がっている。設定上の兄はあの辺りでログアウトしたはずなんだが何か残っていないだろうか? ここからではよくわからないな。


「ちょっと休憩したら中に入ります、皆さん危険もありますから無理しないように。相手にするのは蟻と幼虫と卵だけで蜂が出たらすぐ逃げてください」


 一応注意しておこう、流石に1Fなら危険はないと思うがリアルでどうなっているか分からないし。

 見習い達が荷物を降ろしたのを確認してから石柱を見回ってみる、リアルになったというか現実の風景そのものだが目立つのは腰掛けるのにちょうどいい岩くらいだ。こんなのあったっけか?

 仕方が無いので切り上げて蜂の巣に突入だ。階段状になっている入り口を降りていく。


 下にたどり着くとそれなりの大きさの広間だ。壁がぼんやり光っているのとところどころ蛍光灯のように強い光を発している部分があって光量は十分だ。どういう設定だったか思い出せないがダンジョンは大体明るいよな。松明が無いと死ぬ仕様じゃなくて本当に良かったよ。

 早速卵がそこかしこにうごめいている、大きさは鶏卵ぐらいだがグラフィック的にはこんな物だったかな? リアルで見るとドロっとした粘液まみれで気持ち悪い。

 ゲームのときから思っていたのだがお前ら巣の構造的にもうちょっと考えろよと言いたい。まあ奥にはもっと群れている所もあるからそっちが本命なのかも分からんね。

 早速見習い達が卵を壊し始めたので見守っていると1つ壊すのに10回近く剣を振るっていますね、これは攻撃力不足ですわ。

 まず強化武器かレベルに合った店売り最強武器を持つぐらいしろよと、せめてバフ貰うとか属性ポーションもって来るとかそういうのすらないんですね。

 効率狩りという理念が存在していないですねぇ……こいつらだけなのかこの世界全体がそうなのかいよいよ不安になってきたな、上級職に転職できる奴が少ないのもそれが理由なのか?


 そりゃ画面の中のキャラクターなら死んだり死にかけても効率狩りの繰り返しでわりと簡単にレベルが上げられるというのもあるがそれにしたってこいつらリアル生活舐めてんのか?

 いやリアル生活だから慎重になっているのか。それにしても情報は力と言うのがよく分かったよ、>>見習い感謝。


 しばらくすると入り口付近の卵は全滅したようだ。が、はて? 特殊ルートモンスの働き蟻が出てこないですね。アイテムは結構ドロップしているのだが1匹もいないと言うのはどういうことなんだろう。

 この働き蟻は通常のルートモンスの特徴に加えて卵にリンクして襲ってくると言う特徴を持っている、調子に乗っていると痛い目にあうですね分かります。そんなことを考えるていると奥からガサガサという音が聞こ……え……て


 群れでやってきました、コワイ! 大きさが全長1メートルはあるだろうか、どうみてもエイリアンです。リアルではちょとsYレならんしょこれは、進化しすぎィ。

 なるほど、卵があのサイズなら孵化して成長すればこの大きさになるんですねわかります。

 そんなこと言ってる場合じゃない、思わず腰に下げていた袋から取り出した物を投げつける。


 新必殺技、散弾だ つまり小石というか砂利をたくさん持って投げつける技。超パワーでやはり相手は死ぬ。すごいさんは本当に偉大やでぇ……


 的が大きなせいか多段ヒットしたらしく群れがまとめて爆発した、超エキサイティン。これ下手な魔法より強いんじゃね? 少なくとも転職したての魔法使いでは出せない範囲火力だ。弾数に限りは有るけどMP0で使えるとか強すぎワラタ。


 見習い達が唖然としているがお前ら普通に戦って勝てるの? それなら舐めてたのは俺の方だわサーセン。


「皆何匹までなら相手に出来るかな? あと普段はどんな風に戦っているの?」


 最初に聴いておけば良かったな。リーダーなのかイケメンAが答える。


「5人で1匹ずつなら倒せます」


 ほう、それは強いのか? 基準がわからない。

 ところで効率どころか蟻一匹の経験値を5人で割るとかちょっと少なすぎやしませんかねぇ。いつまでも剣士というかレベルが上がらない理由もよく分かったよ。


「入り口で卵を壊してから出てきた蟻を倒しています、たくさん出てきたらごみを遠くに投げるとそっちに寄って行くんでその間に逃げますけど」


 うん、それでいいんじゃないかな。俺には関係ないことだし地道にレベル上げしてください。ルートモンスの習性を利用した見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはないしな。

 俺なら魔法使いに切り替えて範囲魔法ばら撒きでレベル上げするけどな。


 1Fマップを思い出しながら脇道を進む、見下ろし型画面からリアルFPSになっているので大分勝手が違うが段々慣れてきた。小部屋をいくつか回って中央の広場にたどり着く、ここは入り口が2ヶ所しかないので見張りを立てて卵狩りをさせておこう。


「ではしばらくこの部屋で卵を割り続ける作業をします。こっちは俺が見張るのでもう片方は5人組作って交代しつつ見張りをしてね」

「先生一ついいですか?」

「何か用かな?」

「戦闘の指導をお願いしたいんですけど」


 イケメンBの発言だが心を広く持つことが出来る俺は無碍に断ることをしなかった、ナイトは心が広くて彼女が出来る ほらこんなもん。

 ただそんなこと言われてもリアルでは事務員なんでちょっと……適当に教えればいいか。クリックして殴ればいいんじゃないかな? まあネトゲ論でね。


「よろしい、では卵の割り方を教えよう。実に簡単だ」


 そういって近くの卵へ近づく、すごいさんで突き刺すとやっぱり爆発だよ。


「このように慣れると実に簡単に割れる。数をこなすか慣れるまでは高級な武器を使うと楽だよ!」

「先生の武器は短刀に見えるんですが高級品なんですか?」

「それほどでもない、君達からすれば高級品かもしれないが弛まぬ努力の結果と言っても過言ではない」


 ナイトは武器を選ばないという名言を知らないのかよ。まあ何百匹も狩ってようやくレベルが1上がると考えれば数をこなしているはずだからどこもおかしくはないな。

 というか虫なら火属性武器で殴りまくればそのうち死ぬだろ常識。あのエイリアンみたいな昆虫に近づくのはちょっと遠慮したいが。

 若者達は納得してくれたのか分からないが何組かに分かれて散っていく、ぼっちのやつはいなくてよかった。


 さて俺もちょっと狩ってみるか。警戒しつつ近くを観察していると黒い塊が蠢いているところがあった。よく見るとこれは……蜜蟻さん、大蜜蟻さんじゃないですか。

 ノンアクティブノンルートノーリンクという狩られるために存在するようにしか見えない設定がここでも生きているのか近くによっても無反応だ、遠慮なくすごいさんを装備しないキックで踏み潰しておく。こいつらは巨大化してもメートル単位じゃないんだな、せいぜい20センチぐらいだがちょっと進化の具合が分からないですねぇ。アイテムが落ちる。

 ともあれ早速蜂蜜を手に入れたぞ! いや最初から瓶に入ってドロップしているんですがそれは……便利だからいいか。あとキラキラしたのが落ちたので魂かと思ったらこれはカプセル?

 こんなのあったか? 仕様が分からない系の不具合があります。とりあえずリュックから袋を取り出していれておく。


 それから何時間か狩った、何度か大量に働き蟻が入って来そうになったが小石を投げると逆方向に向かっていく。習性には逆らえないんやな、悲劇やな。

 なるほどなという顔になったがこれなら見習いでも大丈夫な理由が分かったよ、>>見習い感謝。それなら監督役いらないんじゃないかと思ったが……エイリアンめいたアトモスフィアが有ったな、備えよう。

 巨大昆虫は実際強い(確信)、あわれにもバラバラに引き裂かれてエサになるのは勘弁してください。


 見習い達に確認してみたところ卵狩りに夢中になっていてアンブッシュからの噛み付きでお亡くなりになる人も多いとか何とか、ちょっとブラックどころかブラッドな生活を強いられているんじゃないですかねぇ……

 レベル差の防御力がどこまで通じるのか自分で試してみたいとは思わないのでここはスルーで、巨大昆虫コワイ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ