闇に生きるもの7
フェーゴが馬の歩を緩め馬車に近づくと白いローブに身を包んだ人がテントから出てくる。
白いローブの人が顔を上げる。
「ルーナ!」
「フェーゴ!討伐は無事終わったのね!」
ルーナと呼ばれた人がフードを取る。顔の部分しかわからないが肌は白く、フードからこぼれ出た銀髪は腰までの長さがある。穏やかな微笑みは彼女が優しいであろう性格が滲みでている。
ただ一点気になる事があった。彼女の眼は白く濁ったガラス玉のように光沢がある。誰からみても普通の眼ではないことがわかる。
「それで、そちらのお嬢さんはだれかしら」
もしかすると見えていないのかもしれない眼でこちらを向いているが、その眼はまっすぐと……まるで心の中まで見られているような感覚を覚えさせられる。
「あぁ、彼女は森の中で保護したんだ。そういえば……まだ名前を聞いていなかったな」
二人がこちらを向き首をかしげているが……本名は男性の名前であり、名乗ってもこちらの世界の名前とはかけ離れている。
「俺の名前はハジメといいます」
それだけ伝えると黙ってしまう。
「変わった名前ね。魔族の知り合いにも似たような名前の方はいないわ」
「少なくても闇の大陸よりさらに外側の大陸か、あるいは……」
やはりと言うべきか……実際は言っても信じてもらえない可能性の方が高く、言うにいいだせなかったが、まさか異世界から来たなどとは言えなかった。
「王都に連れていくのでしょ?」
「そうだな。隊長にもそう言われてるし連れていかないわけにはいかんだろ。嬢ちゃん自体ここがどこだか分かってないみたいだし、明日からどうすればいいかすらも分からんだろ。王都で保護するのが一番だ」
「まぁ、そうね。それじゃ戻りましょう。フェーゴは馬車の先頭を行って魔物を警戒してちょうだい」
ルーナはそういうと他のテントに近づいていった。ここからでは他のテントの中を窺がうことはできないが、ルーナが近づいたのが見えたのだろう。ぞろぞろとテントから白いローブに身を包んだ人たちが出てくる。
総勢20名ほどの者たちが集まる。
「私を含め第一部隊は王都に帰還!他の第二、第三部隊はここで待機し討伐隊が戻り次第撤収せよ!」
ルーナが先ほどとは変わり威圧感を含んだ声で白いローブの者たちに伝える。皆頭を下げたままじっと聞いている。
「さ、私たちは馬車に乗って行くわよ」
そういうとハジメの手をとり馬車に近づいて行く。
「大丈夫よ。取って食べたりしないから……異世界のかわいいお嬢さん」
二コリとほほ笑むが、その言葉に心臓がどくりと音をたてる。