闇に生きるもの5
先ほどと同じように茂みから出てきたのは背が高くスラリとした優男だった。
碧眼の目に金髪を短く刈り上げ、どこか幼さが残る顔立ちの男だ。
手には抜き身の剣が握られ刃から血が滴り落ちている。
「な!大丈夫か!?こっちにレッドハウンドが来たはずだが……」
先ほどの犬はどうやらレッドハウンドと言うらしいが、自分が攻撃されないか内心不安になり身構える。
あのレッドハウンドと同じ……。
「そう警戒しなくてもいいぞ。レッドハウンドの群は殲滅済みだ。まぁ取りこぼしたのが一匹いたが……あの傷では生き延びることは無理だろう……それよりも血の匂いで他の魔物が近づいてくる前に引き上げたい。君もこんなとこに居たら危険だ。とりあえず一緒に行こう」
そう言うと男は手を掴み森の中を進んでいく。
しばらくすると少し開けた場所に何人かの男たちと馬がいた。
男たちの中央にはレッドハウンドの屍が十数匹程度積まれている。
「おい!フェーゴ!引き上げるぞ!」
手を引きながら優男は男たちに叫ぶ。
その中でも一際目立つフェーゴと呼ばれたであろう赤い髪の大男がこちらを向き、駆けてくる。
「隊長!見つかりましたか?こっちはまだ見つけていません。あの傷ではそう遠くには行ってないと思うのですが……ん?そちらの嬢ちゃんはだれです?」
フェーゴと思しき男がこちらを見てくる。
「あぁ、向こうの茂みで居合わせてな……今は危険なため保護したんだ。すまないがフェーゴ。彼女を連れて後方の第一魔術部隊と帰還してくれ。」
「了解。さ、嬢ちゃん行こうか」
そういうとフェーゴは近くの木に繋いである馬に乗ると手を出してくる。
その手に捕まると見かけ通りの力で引っ張り上げ馬に乗せてもらう。ちょうどフェーゴに後ろから抱きつく形になってしまうが仕方ない。現代、もとい前の世界で馬になんて乗ったことないのは当然である。
しばらく走りフェーゴは呟く。
「さて、魔族の嬢ちゃん。事情を聞こうか……」