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転生者、闇に潜む  作者: つぶれあんぱん
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闇に生きるもの4

ハジメは途方に暮れていた。

幾ら歩いていても森に終わりは見えず時折聞こえる鳥の鳴き声に紛れ、明らかに聞いたことのない鳴き声まで聞こえてくる。


「やばいなぁ。死なないにしても、ずっと森の中じゃ気分が休まらない……」


時折、切り株が見えるということは、定期的に人が森に入り木を切り倒しているということだろう。

体感的には3時間くらい歩いている気がする。そろそろ集落か、小さな村でも出てきてもいい気がするのだが……。

溜息をつき切り株に腰掛けポケットから紙を取り出す。


ポケットに紙が入っているのに気がついたのは一人置いてかれ途方に暮れ、今のように切り株に座ったときだった。

紙にはこう書かれていた


ーーお前さんについて追加の情報じゃが、その身体は魔族ということもあって人の何十倍も体力がある。しばらく食べるということをせんでも死にはせん。まぁ何もかもが人と比べては比較にならんと言うことじゃ。あと、その靴はお前さんが今いる世界の黒竜の革で出来ておる。いくら歩いても疲れんから心配ないな!服は闇夜の番犬という魔物の毛と黒竜の革で出来ておるから、よっぽどの事がない限り破れたり壊れたりはせんから大丈夫じゃ!もう会うことはないが達者でな!ーー


初め見たときから破り捨てようかと考えたが、やめて四つ折りにしてポケットに入れる。

改めて自分が着ている物を見る。

靴は一見エナメルパンプスのようであるが光沢はさほど無く、服に至ってはジャケットの様で首回りと袖の部分にモフモフの毛が巻いてある。ジャケットの下は黒いロングワンピースになっていた。


「はぁ……」


 今日何度目かのため息をつく。

 その時、目の前の茂みがガサガサと音を立て揺れる。

 中から出てきたのは大型犬くらいはあるだろうか、毛並み全体が赤みがかった犬がいた。

 だがその犬は息が荒く口から出される息には白い湯気が立っており、身体には無数の切られた傷があった。

 

「ぐっ!おのれ人間共め……ここにも隠れておったか!その命をもって我が生命の糧になるがよいわ!」


 いきなりのことで何がなんだか分からないが突如として現れた犬は、事もあろうか人の声を発し襲いかかろうと喉を鳴らしている。


(たしか俺は魔族で魔力も高く影と闇の魔法?が使えるんだったよな……ものは試しだな。このままだと食べられそうだし……)


 目を細め目の前の犬を見据える。

 影……闇……思い描くは影より出でる闇の触手……対象を絡めとり闇に引きずり込むイメージ。


「なんだ!貴様魔族か!なぜ……なぜ同じ魔族である我らを……!」


 犬は驚き目を大きく見開くが地面に現れた闇の水たまりのようなものから出てきた黒い触手に絡めとられ沈んでいく。


「やっぱり俺も魔族なのね……」


 もしこれから人に会うことがあっても自分を見て魔族だと、奇異な目で見られるかもしれない。

 もしかすると、魔族だからという理由で殺されるのかもしれない。

 もしかすると、ただそれだけで自分の居場所はなくなるのかもしれない。

 ただそれだけで……

 橋本ハジメだったころと今の生まれ変わった自分が重なる。

 ここにも自分の居場所はないのかもしれない……。


 「いたか!探せ!あの傷ではそう遠くには行けないはずだ!」


 犬が出てきた茂みの少し向こうから金属の擦れ合う音と男たちの声が聞こえてくる。

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